第64話『窮地からの脱出』
「ちっ…。とんだ拍子抜けだぜ…」
息絶え絶えといった様子のケィとレィに、ボス·グレムリンは退屈そうであった。
「クソッ…バケモンかよこいつ」
「流石はレベル40越えってか…」
ケィとレィも、確かな実力の持ち主のはずだ。
だが、ボス·グレムリンの実力とは、大きな差があった。
「元からあの小娘のバリアーを維持させるのにMPを消費させ続けてんのに、満足に戦えるわけねえだろぉ?」
「そこにも気付いてたのか…」
ヤツの言う通り、ケィとレィはソータのバリアーを補強させながら戦っていた。
図星をついて、ボスはニィーっと口角をあげるのだった。
「うぅ…」
それに対してソータは、自分が二人の足を引っ張っていることに気付き、胸を痛めていた。
「だが、もう補強の心配はない…これだけ硬く厚いバリアーなら、お前でも壊すには骨を折るだろうな…」
「…みたいだな。流石は2人がかりで補強したバリアーだ…、へっ…小賢しい連中だぜ…──ふんッ!!」
青筋を浮かばせるボスは、さらに力を解放した。
体中の筋肉が膨れ上がり、ただならぬ意気を解き放った。
「今までが本気じゃなかったってのか…!?」
驚愕したレィに、ボスは傲慢な笑みを浮かべてみせた。
すると、ヤツはレィに襲いかかる。
「ヒャヒャヒャッ!!おぅラッ!!」
レィはお得意の防御魔法で攻撃を食い止めるが、その攻撃は重く激しくのしかかる。
「どうしたっ!守ってばかりじゃ勝てないぜぇー!」
「ぐっ!」
攻撃を繰り返すボスに、レィは苦悶の表情を漏らしていた。
「ストーンボール!」
ケィは援護に、石をミサイルのように銃弾のように飛ばすスキルを使ったが、ボスはけろりとして石を跳ね返していく。
「つまんねえぞ!?おい」
まるでゲームのように戦うボスとは対照的に、二人はまさに防戦一方であった。
ソータはその戦況に、希望よりも絶望が勝ってしまっていた。
「おねがい…!はやく来てください…!」
ソータは強く祈った。彼が来てくれるようにと…。
彼には、この状況を打開する力があると…。
「そぅらそら…!」
ケィとレィが、もう苦しい状態だったその時、その状況が突然にして一変した。
「じゃあ、俺とやるか…!!」
「何…!?」
驚いたボスに、強力なパンチがめり込んだ。
「Cスマッシュゥー!!」
「ぐぼぁあっ…!」
三回の衝撃波に吹き飛ばされたボスは、洞窟の固い壁に激突し、なお体勢を建て直した。
「…お前は!」
ボスは、はじめて受けたダメージと、その人物の顔ぶれに驚いたらしかった。
「…ったく、遅せえんだよ!」
息絶え絶えとしたケィとレィは、そこにやって来た男に不敵に笑った。
だが、ソータはそれが涙を流すほどに嬉しかった。
「来てくれた…」
ボス·グレムリンは、以前会ったときとは違うオーラに驚きを隠せなかった。
ソータは、喜びに震えた声で叫んだ。
「…托生さん!」
「待たせちまったな。…ソータ!!」
托生は、ソータに微笑み返した。
その笑顔に、ソータは思わず涙を流し、嬉しさと安堵に笑みがこぼれた。




