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第05話『街への到着』

「見えてきましたよ!」

「…あれか」

 二人はやっとがけから見た外壁がいへきの目の前に来た。

「圧倒されるな…」

「…ですね」

 外壁にはもんがあり、それをくぐってみると、活気のある街並まちなみが視界いっぱいに広がってきた。

 何よりも驚きなのは、その街の人口じんこうだ。


「すごく(にぎ)わってますね」

「…」

「…?どうかしました?」

「…人が多いのは…苦手だ」

「んー…」

 ヘタレだす托生に、ソータは苦笑する。

「じゃあそろそろ、ギルドに向かいましょう」

「(…酒場さかばみたいなところか)」



 くろ鉄製てつせいのギルドは、托生のイメージそのものの外見だった。

 中からは若い冒険者ぼうけんしゃの声が沢山たくさん聞こえてくる。

「じゃあ入りましょうか」

「…」

 ソータはドアをゆっくりと開ける。

 すると中では冒険者達が、さけやゲームでおおいにり上がっていた。

「平和なギルドみたいですね」

「…よかった」

 托生は安堵あんどした。


「このギルドの部屋を借りてよるかしますので、手続きをしに行きましょう。托生さん、お金ってもってます?」

一文無いちもんなしなんだけど」

「はい!?」

 托生の答えに驚くソータ。

 ソータは周囲を気遣きづかい小声でそう言って、彼に驚きの目を向けた。

「ほ…ほんとですか?」

「…ごめん」

「ウソ…ではないらしいですね…──お金は私が出してあげますけど…」

 ソータは次元の穴を開け、どうのタブレットを四枚取り出す。


「あのさ、お金って何なの?」

「ええ!?」

 ソータの間抜まぬけな声が、ギルドに(ひび)いた。

 冒険者達の視線しせんも当然集まってくる。

「托生さん!…まさかお金というものをご存じない!?」

「え?いや──」

「はっ!まさかあのときにあたまを…!」

「…俺の国では通貨が違っただけだ」

 ソータはほっと胸を()で下ろすと、この世界においてのお金の説明をしてくれた。

「──ご理解いただけましたか?」

「わかった」

「はあっ、よかったです!」



 ソータは托生と、カウンターで、(ひげ)を生やしたスタッフと手続きをしていた。

「2人1組の部屋を購入したいんです」

(うけたまわ)りました。では650ポイントと、ステータスカードのご提示を」

「はい」

 ソータが見せたステータスカードというものは、おそらく名刺(めいし)やライセンスのようなものだろう。


「あの、ステータスカードを…」

「…ん?」

 店員はそう言うが、托生はそんなものを持ち合わせていない。当然とうぜんといえば当然である。

 店員からすると、目の下にクマを持つ青年が、カードをろくに出さない状況だ。迷惑な客かと呆れる様子はないが、困惑気味であった。

 そこでソータは、托生の様子を(うかが)って質問する。

「…あの、まさかこれまで知らないなんて言いませんよね」

「…」

「…もう驚きませんよ──この人のカードの発行もお願いします。この人カードをくしたらしいので…部屋の購入はその後で」

「承りました」

 店員は納得したように微笑ほほえみ、魔方陣らしきものがしるされた一枚のプリントを、托生の前に差し出した。

「こちらに手をかざしてください」

「は、はい」

 托生が言う通りに手をかざすと、魔方陣まほうじんやさしく発光しだした。

「もう大丈夫ですよ」

 托生が手を離しても光は消えない。

 店員はプリントの上に無地のカードをのせると、そのカードには勝手に文字や数字がきざまれ始めた。

 どういう仕組みなのだろうか。

 手続きの終了を確認した店員は、托生にステータスカードをわたしてくれた。


「見せていただけますか?」

 托生はソータにステータスカードを渡すと、ソータはそれを見る。

「レベルが4まで上がっていますね。虎のモンスターからのものでしょうか…」

 正義の神から(もら)い受けた力も、このカードのステータスには適応されているらしい。

「で、どうなの?」

「…Lv4にして、今の私と同等ですね」

「ソータって…結構強い感じなのか?」

「今私はLv5ですが、同レベルの人には負ける気はしません。ボソッ…今Lv4の托生さんに追い付かれそうなので私のプライドにきずが付きましたが」

「んッ!?」

『──ソータ(Lv5):素質値パラメータ156』



 托生とソータは、ギルドの食事スペースに移動し、空いている2人席にすわっていた。

 ソータが料理のメニューをめくっている間、托生はステータスカードを見ていた。

『──タクセイ(Lv4):素質値141』

微妙(ビミョー)だな…」

 托生はめ息を交えてそうこぼす。

 目標は、ソータの30倍くらいは上のステータスをて、ソータの安全と自己満足欲の両方を確保かくほすることだったのだが。やはり、チート能力は無理むりがあったか。

「そのステータスを見てそんな言葉が出せる人はそうそういませんよ?」

 ソータはそう言って、笑顔で托生にしずかな圧力あつりょくをかける。

「わ、わかった…ごめん」

「わかればいいです。さあ、メニューから料理を選んでください」

 威圧的いあつてきな笑顔が、やさしい笑顔に戻ってくれた。

 托生は適当にクリームパスタを注文しておいた。


 托生にとっても、ソータはすごく人間ができた少女だった。

 ソータからのオーダーを受けた親切な女性店員が厨房(ちゅうぼう)に向かう。

 それを見送ってから、ソータは托生の視線に気付いたようだ。

「どうかしました?」

「いや、人間ができてるから、これからも(やしな)ってくれねえかなぁ…なんてな」

 はっきり言って気持ち悪いジョークをこぼす托生だったが、ソータの返答へんとうは予想の(なな)め上をいった。

「いいですよ?托生さんには借りたおんも多いですし!」

「…俺は別に…恩をした覚えは…──」


「──ちょっと、やめてください!」

 托生がそう言いかけたとき、となりの席でごとはじまった。

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