第54話『結婚記念パーティー』
「おいっ、動くなって!」
「粘液のせいで滑るんですよ!」
粘液まみれの全裸のソータを背負って帰る托生は、どこからどう見ても不審者…いや犯罪者であった。
一応二人は、ギルドの裏口に誰にも見つからず到着した。
「はっ…恥ずかしくて死にそうです…っ!」
「待ってろ。リェルかドルフィンに話をつけてくる」
托生がそこを放れようとすると、彼の足をソータが掴んだ。
「私を置いていくんですか!!ギルドの裏に、私を…全裸で…っ!!」
「それはこの状況だとどうしようもないだろ!?」
「いやです…っ!」
「…うおっ──」
その時、ソータが腕に力をこめると、托生はバランスを崩し、ソータに覆い被さった。
「きゃっ…!」
「ごっ…ごめん!すぐにどく!」
だがどこうとした時、ギルドの裏口が開いた。
リェルを含む5人ほどの女性店員である。
「「あっ…」」
「「「あっ…」」」
女性店員らとソータの悲鳴は、托生の未来をズタズタに引き裂いた。
※
ギルドにはたくさんの人が集まっていた。
エデルガルトとエルフォレストの結婚記念パーティーが行われるのである。
托生とソータとゲバブルドとフェイルは、その人たちの中に混じり、祝杯を掲げていた。
その場の主役であるエデルガルトとエルフォレストは、結婚式に似合わない冒険者服を身に纏い、向かい合っている。
色とりどりの花束を手に持ち、真剣な表情のエデルガルトに、柔らかく微笑むエルフォレスト。
ドルフィンの言葉で、式は始まろうとしていた。
「それでは、エデルガルトさん!エルフォレストさん!ご結婚おめでとうございます!」
「「「乾杯ーッ!!」」」
ジョッキとジョッキをぶつけ合う音が響くと、ギルド内は冒険者らにより騒がしくなった。
酒をあおり、オードブルをがっついている。
「こいつはご馳走だな…」
「すげえよお前ら。クラーケンを倒すだなんて」
「ええ!とっても」
ゲバブルドとフェイルの称賛に、二人は苦笑することしかできなかった。
「まあ代償は大きかったけどな───…イダダッ!」
ソータは笑顔で托生の耳を引っ張った。
それを見て、エデルガルトとエルフォレストは愉快そうにやって来た。
「本当に、助けてくれてありがとう」
「ああ。お前らが幸せなら、托生もお前らを助けた甲斐があるってもんだ。幸せになれよな」
「…ありがとう」
エデルガルトのお礼を受け取って、托生は骨付き肉に何気なくかぶりついた。
すると、ソータが托生の腕に絡み付く。
「…えいっ」
「わっ。どうしたよお前」
「ほーら見てください。これが私たちのイチャイチャですよエルフォレストさん」
ソータは見せびらかしているような態度だ。
だがエルフォレストは、ままごとをみるようにして、エデルガルトの頬にキスをしてあしらった。
「…!?そっ…それは…!?」
目を丸くするソータに、エルフォレストは妖艶な表情だったが、エデルガルトは気恥ずかしそうな様子だった。
「こっ…こうしてはいられません!私たちもっ…ちゅーっ──」
「やめてくれみっともない」
蚊帳の外のゲバブルドとフェイルは、どこか恥ずかしそうに頬を赤らめていた。




