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第54話『結婚記念パーティー』

「おいっ、動くなって!」

粘液ねんえきのせいで(すべ)るんですよ!」

 粘液まみれの全裸のソータを背負せおってかえる托生は、どこからどう見ても不審者ふしんしゃ…いや犯罪者はんざいしゃであった。

 一応二人は、ギルドの裏口に誰にも見つからず到着した。

「はっ…ずかしくて死にそうです…っ!」

「待ってろ。リェルかドルフィンに話をつけてくる」

 托生がそこをはなれようとすると、彼の足をソータが(つか)んだ。

「私を置いていくんですか!!ギルドの裏に、私を…全裸で…っ!!」

「それはこの状況だとどうしようもないだろ!?」

「いやです…っ!」

「…うおっ──」

 その時、ソータが腕に力をこめると、托生はバランスを崩し、ソータに(おお)(かぶ)さった。

「きゃっ…!」

「ごっ…ごめん!すぐにどく!」

 だがどこうとした時、ギルドの裏口(うらぐち)が開いた。

 リェルをふくむ5人ほどの女性店員である。

「「あっ…」」

「「「あっ…」」」

 女性店員らとソータの悲鳴ひめいは、托生の未来をズタズタに引きいた。



 ギルドにはたくさんの人が集まっていた。

 エデルガルトとエルフォレストの結婚記念パーティーが(おこな)われるのである。

 托生とソータとゲバブルドとフェイルは、その人たちの中に混じり、祝杯を(かか)げていた。

 その場の主役であるエデルガルトとエルフォレストは、結婚式に似合わない冒険者服を身に(まと)い、向かい合っている。

 色とりどりの花束を手に持ち、真剣な表情のエデルガルトに、(やわ)らかく微笑むエルフォレスト。

 ドルフィンの言葉で、式は始まろうとしていた。

「それでは、エデルガルトさん!エルフォレストさん!ご結婚おめでとうございます!」

「「「乾杯かんぱいーッ!!」」」

 ジョッキとジョッキをぶつけ合う音がひびくと、ギルド内は冒険者らにより(さわ)がしくなった。

 酒をあおり、オードブルをがっついている。

「こいつはご馳走(ちそう)だな…」

「すげえよお前ら。クラーケンをたおすだなんて」

「ええ!とっても」

 ゲバブルドとフェイルの称賛に、二人は苦笑することしかできなかった。

「まあ代償だいしょうは大きかったけどな───…イダダッ!」

 ソータは笑顔で托生の耳を引っ張った。


 それを見て、エデルガルトとエルフォレストは愉快(ゆかい)そうにやって来た。

「本当に、助けてくれてありがとう」

「ああ。お前らが幸せなら、托生もお前らを助けた甲斐(かい)があるってもんだ。幸せになれよな」

「…ありがとう」

 エデルガルトのお礼を受け取って、托生は骨付き肉に何気なくかぶりついた。

 すると、ソータが托生の腕に絡み付く。

「…えいっ」

「わっ。どうしたよお前」

「ほーら見てください。これが私たちのイチャイチャですよエルフォレストさん」

 ソータは見せびらかしているような態度だ。

 だがエルフォレストは、ままごとをみるようにして、エデルガルトの(ほお)にキスをしてあしらった。

「…!?そっ…それは…!?」

 目を丸くするソータに、エルフォレストは妖艶(ようえん)な表情だったが、エデルガルトは気恥ずかしそうな様子だった。

「こっ…こうしてはいられません!私たちもっ…ちゅーっ──」

「やめてくれみっともない」

 蚊帳(かや)そとのゲバブルドとフェイルは、どこか恥ずかしそうに頬を赤らめていた。

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