第51話『パーティへの資材調達』
1週間後──。
「「“エデルガルトとエルフォレストへの結婚記念パーティーにおける資材調達を求む”?」」
托生とソータは、クエスト要請の張り紙を見て、不思議そうに顔を見合わせた。
質問に答えるように、ドルフィンは返す。
「ええ。このギルドではペアの結婚があれば、いつもやってるのよ」
「なるほど…」
「でも、今日はエルフォレストさんが見えませんが」
いつもは接客しているエルフォレストの姿は今日はない。
「今日はサプライズのために、来なくていいと言っておいたわ。それに、エデルガルトちゃんと二人っきりの時間も必要でしょ?」
「なるほど…」
※
…──エデルガルトはというと、エルフォレストと街でショッピングをしていた。
エルフォレストは、ピンク色のワンピースと、紅いヒールをおめかししていた。
「エルフォレスト…似合ってるぞ」
「あっ…ありがとう…」
頬を赤く染めたエルフォレストに、エデルガルトは手を預ける。
エルフォレストはその手を握ると、2人で街をまわり出した。
※
「すげえ鴛鴦夫婦っぷりだよな」
「ええ。私だってあんなときめくような恋がしたいわぁ…」
「ははは…(苦)」
托生はドルフィンのその言葉には何も返せなかった。
「そうそう、実は今回は、ギルドのみんなと子供たちも交えた大きなパーティーにしたいと思ってるのよ」
「へぇー。ところで…資材って何だ?」
「ええ。資材といってもなかなか手に入りづらいのよね」
「え?それって──」
「聞きたい?」
托生はドルフィンの言うとおり、それを聞くことにした。
「あなたたちへの願いは、巨大イカの肉を取ってきてもらうこと」
「巨大イカ…?」
「森を抜けると、海の望める深い崖があって、そこには全長10mくらいの巨大イカが生息してるの。あれがギルドメンバーの大好物で、レベルは高いけど…──まあ、きっと大丈夫よね。あんたら二人だもの」
ドルフィンは二人に、安心したように言った。
「ええ。もちろんですよ!」
ソータはそれに元気よく答えた。
そして二人は、その森への地図を受け取って、冒険服に着替えてギルドを出発した。
※
「薄気味悪いな…」
そこは、いかにも何かが出そうな不気味な森だった。
地面はぬかるんでいてコケも生え、木漏れ日は少なく奥は暗い。野鳥や野獣の鳴き声が響き、恐怖心をじわじわと引き立ててくる。
だがソータはものともせず、奥へ奥へと進んでいく。
「ちょっ…何でそんな躊躇なく進むんだよ!」
ソータは安心そうに、「大丈夫ですよ」と言う。
「…まだここにはモンスターはいないってことか」
托生の質問に、ソータから予想だにしなかった答えが返ってきた。
「いますよ?」
淡々と返すソータに、托生は周囲を見回した。
周りには、こちらを虎視眈々と見据えるモンスターが何匹もいたが、そのモンスターらはこちらに襲ってくる予感はしなかった。
「このモンスターらも、私達のオーラを感じ取っているみたいですね。このモンスターらは、ほぼみんなlv5以下です。10くらいのレベル差を感じ取って、襲ってこれないんですよ」
「…そうなのか…」
モンスターはほとんど襲ってこなくて、順調に進んでいたその時──。
森が大きく震え、托生たちの目前に巨大な蜘蛛が立ちふさがった。
「ビゥーッ!!」
「何だ…!?こいつ」
「大きい…!」
恐らく体高4mはあろうその巨大な蜘蛛は、その前足を地面に叩きつけた。
ヤツの前足が、ぬかるんだ地面にめり込む。
「なんて威力だ!」
その蜘蛛は強いパワーを持つ強敵だった。
あの6本の足では、バランスを崩すことはまずないだろう。
──ガササッ…。
その時、木の陰に人影が現れる。
「ん…?」
托生はそれに気づいたが、気付けば人影は消えていた。
「どうしましたか托生さん!この戦いに集中しましょう!」
「あ…ああっ」
この戦いは、厳しいものになりそうだ。
だが、もう1つ巨大な影が現れる。
なんと、またもう一匹の蜘蛛が現れたのである。
『メガタランチュラ(lv19)』×2
「マジかよ!2体同時ってか!?」
「共闘は難しそうです。一人一匹ずつ相手しましょう」
「それが妥当だ!」
「はい!」




