第18話『ソータへの助け』
男に肩をぐいっと掴まれながら、ソータは顔をすぐそばまで近づかせる男のいう台詞を聞いていた。
「もう逃げられないぞ。俺たちビッグファングのメンバーにケンカ売ったことを後悔しやがれ」
「…っ!馬鹿!それを人に明かすんじゃない!」
「…あっ!」
もう一人の男の放ったビッグ·ファングという言葉に、男達は激しく動揺した。
「ビッグ·ファング…?何ですかそれは!」
「ちっ!」
その瞬間、ひとりの男の挑発的な態度は突如として豹変し、首筋にダガーを突き立てた。
「おい…!殺すのだけはまずいって!」
「何言ってんだ!この情報が漏れたら、うちのギルドは終わりなんだぞ!!ならせめて、口を開かないようにボコボコにしてやろう!…本来こんなことはしないつもりだったが、聞いてしまったからにはしゃあねえ!!お祈りしてろ!」
「くっ…」
その時ソータには、その場に頼るべき者は存在しない筈だった。だが、ほんの少しだけ助けを求める姿勢があった。
彼女は信じていた。彼はきっと来てくれると…。彼は信頼を裏切ることはしない男であると。
「だあっ!」
男はソータに鉄槌を振るう。
その攻撃に、ソータは身動きもとれず、ただ目を瞑って歯を食いしばっていた。
──ガシッ
不自然な音とともに、その攻撃は止まった。
ソータは恐る恐る目を開ける。
するとそこには──
「なっ!?何モンだテメエ!?」
ソータが待ち望んだ男が、男の鉄槌を受け止めていた。
「こっちのセリフだ。テメエよくも俺のソータを…」
托生は男の手を振りほどき、キッと男達を睥睨する。すると男達はのけぞって、逃げるように部屋の隅へと移動した。
「托生さん…」
「ソータ、無事だったか!よかった!」
托生は胸を撫で下ろすと、その表情はやわらかな微笑みと変わった。
ソータを抱き締めながら、托生はソータの安全を確認した。
「何もされてねえよな?」
「はい!」
「そうか」
そして托生の安心したような表情は、再び鬼のような険しい表情となり、3人を睨んだ。
「覚悟しろよ…!」