第16話『デートの夕暮れ』
※日が暮れてきた頃…
「どうします?エイヂルさん待ってるんじゃないですかね?」
「そうだな。つい夢中になってた。でも、あいつもあいつで暇潰してるのかもな」
托生たちはつい、デ…ショッピングに夢中になってしまっていた。
「…俺、ちょっとトイレ行ってくる。15分くらいかかるかも…」
「はい。じゃあいってらっしゃいませ」
托生はトイレの方向に足早に歩いていった。
彼女は、離れていく彼の背中を見やるのだった。
──実は、托生の目的はトイレではない。
彼は今、アクセサリー屋に向かっているのである。
街をゆくカップルらが、アクセサリー店からウキウキしながら出てくるのを目にし、托生はついに決心した。
今ここで、ソータに告白するんだ──決意した托生は、裏路地を力強く歩いていった。
※托生がアクセサリー屋に向かう途中
ソータは賑やかさの減った公園のベンチに座って、ひとり口ずさんでいた。
「孤独で凍えた私に、温かい優しさをくれた、私のたった一人の恩人、愛しい人…」
彼女の脳裏には、一人の優しい青年の姿が浮かんでいた。
「彼だけは、きっと私の前からいなくなったりしない…ずっと一緒にいてくれる…きっと…」
ソータはそう信じていた。多くの裏切りを幾度となく受け、苦しんできた彼女がだ。
『ソータ、恩返しをさせてくれよ』
青年のその一言に、彼女はきっとこう答えたかったはずであった。
「…できれば永遠に、離れないでいてほしいです」
夕日は少しずつ山に隠れていくのに、淡く光る半月が現れはじめていた。
「托生さん…遅いですね…」
ソータは立ち上がると、托生が先程通っていた道を辿ろうとした。
「こんな暗いところを通ったんですか…」
ソータはそのひどく暗い裏路地を歩く。
──だが彼女は、その道をわたりきることは出来なかった。