表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/112

第11話『托生におこる変化』

「えっ!しんじてくれんの!?」

「さっきからそう言っているじゃないですかぁ!」

「ありがとうソータぁーっ!」

「わわわ!えへへ…」

 托生はソータに『自分が日本から来た異世界人であること』と、『正義の神に会い死からの帰還きかんの前に、ソータとともに戦える力と、元の世界に帰るための知恵(ちえ)もらったということ』を信じてもらおうとした。

 意外にもソータは、苦悶(くもん)ひとつらさずに、すんなりと信じてくれた。

 それがうれしくて、托生はソータに子供のように飛びついてしまった。


「托生さん…変わりましたね」

 ソータはしみじみとした様子ようすだった。

「おう、お前には感謝かんしゃしなきゃな。恩を返さねえと」

「恩返しですか…そんなことされたこともありませんね」

 ソータの口から漏れたその言葉に、ソータのかたった昔話むかしばなしを思い出した。

 彼女の表情は、どこかむなしげであった。

 托生はそう思い、ソータにやさしく語りかけた。

「なあ、何かしてほしい事とかあるか?何でもいいぞ?」

「え?…えっ!?私が…托生()()んにですか!?」

「いや、どこにそんなおどろ要素ようそが…」

 托生にとって、テンパるソータはますますかわいく見えた。

「本当に…何でもいいんですか?」

 ソータは落ち着いてかえす。

「お、おう…約束やくそくは守るって」

「じゃ…じゃあ」

 ソータはもじもじしだして、ほおを赤らめながらこちらを見つめた。


「托生さん、私、お願い決めました」

「お、おお」

 決めたらしいソータのねがいに耳をかたむける。

「托生さん。私と……──」

 ゴクンとつばむ托生。

「私とっ…冒険者をやりましょう!!托生さん、この世界で知らないことも多いみたいですし。私も…一人だとさびしいですから…」

「…!大歓迎だいかんげいだよ!これからもよろしくな!ソータ!」

「本当ですか!ありがとうございます!」



 オカマ店員によって夕食が持ってこられた。

「大丈夫だった?」

「ええ」

「すんません…心配かけてしまって…」

 オカマ店員は、托生の顔をじっと見つめてこう言った。

「あれ?おきゃくさん、結構変わりました?」

「え?そうですか?」

「ええ!以前より(たくま)しくなってますよ!」

 オカマ店員の言うとおり、托生には外見にも大きな変化が(あらわ)れていた。

 目の下のひどいクマははらわれ、彼の表情ひょうじょうさわやかになっていた。

 ソータが托生に大きくうなずいてくれたとき、彼は大きな自信がついた気がした。


 ──夕食を済ませた托生は、浴槽よくそうかっていた。

 温かいお湯に浸かって、心身ともにリラックス。

「あぁ~、マジ最高だぜ…」

 背筋せすじばすと、重りを外したように体が軽くなった。

 自分が自分でないようだ。

 何もかも全て、ソータがいてくれたおかげで戻ってきた。

 あの時出会ってなかったらどうなっていたか。

 ソータの優しさは、何物なにものにも代えられない。

「ソータには、まだ恩を返しきれてねえからな」

 忘れはしない。ソータが話しているとき、彼女がながしていたなみだを。

 彼女が自分をすくったように、今度は俺が、彼女を救う番だ──托生はいさんで顔にお湯をかけた。


「お着替きがえここに置いておきますね」

 ソータが風呂のドア越しから声をかけてきた。

「おう、ありがとう!」

 ソータは優しくて、勇気があって…──良いところをげるとキリがない。

「まったく、ソータってすげえや」

 つぶやいてから、ドア越しに耳をかたむけてみた。

 スルルルッ…

「(何だ…この音)」

 その時、ドアはひらかれ、ソータが入ってきた。


「えっ…えええーっ!?」

 その時、ドアは開かれ、ソータが入ってきた。

 托生が声をあげて驚いた理由は、自分が今全裸だから──だけではないのである。

 ソータすらも、今一糸まとわぬ姿なのである。

 色白のシルクのような肌に、托生のこころられた。

 視点はそこから動かなくなってしまった。

「はにゃ…そんな…じろじろ…やぁ…」

「ごっ…ごめん」

 ソータがずかしがってその場にくずれ落ちる。一気におさなさがした気がした。

 托生のソレは、まるで(たけ)ドラゴンのように、ソータを威嚇(いかく)していた。


「ご…ごめん!そろそろ上がるから──」

 托生は焦って立ち上がると、ソータの前にソレを付き出してしまった。

「ふにゃあ~っ!にゃあ~っ!」

 ソータの体に15cmにまで膨張(ぼうちょう)したソレを見て、ソータは悲鳴ひめいをあげた。

 目をかくそうとするも、ゆびのすき間から瞳孔どうこう丸見まるみえだった。


 …しばらくしてソータが落ち着いてくれた。

「と、ところで…ナニをしに来たんだ?」

「…えーと」

 托生はヘン期待きたいをしてしまうが、この状況だから大目おおめに見てほしい。

 ソータはもじもじと足をこすらせあいながら、タオルを手に取った。

「托生さんの…お背中をお流ししようと…」

「え…?あ…そう…」

 期待は大きくはずれたらしい。

「け…決して、そんなイヤらしい意味はないですよ!」

「わかってるってのっ…!」

 托生は椅子いすに座って、背中をソータに広げた。

「じゃあ…」

「は…はい!」

 ソータ自身、あまりれていないんだろう──と、托生はあまり実力では期待してはいなかった。

 ──ゴシッ。

「ほぉぉおおーっ!」


 ──托生の異世界生活の一日目は、これで幕を閉じることとなる…。

 さて、この二人はこれからどうなるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ