第11話『托生におこる変化』
「えっ!信じてくれんの!?」
「さっきからそう言っているじゃないですかぁ!」
「ありがとうソータぁーっ!」
「わわわ!えへへ…」
托生はソータに『自分が日本から来た異世界人であること』と、『正義の神に会い死からの帰還の前に、ソータとともに戦える力と、元の世界に帰るための知恵を貰ったということ』を信じてもらおうとした。
意外にもソータは、苦悶ひとつ漏らさずに、すんなりと信じてくれた。
それが嬉しくて、托生はソータに子供のように飛びついてしまった。
「托生さん…変わりましたね」
ソータはしみじみとした様子だった。
「おう、お前には感謝しなきゃな。恩を返さねえと」
「恩返しですか…そんなことされたこともありませんね」
ソータの口から漏れたその言葉に、ソータの語った昔話を思い出した。
彼女の表情は、どこか虚しげであった。
托生はそう思い、ソータに優しく語りかけた。
「なあ、何かしてほしい事とかあるか?何でもいいぞ?」
「え?…えっ!?私が…托生しゃんにですか!?」
「いや、どこにそんな驚く要素が…」
托生にとって、テンパるソータはますますかわいく見えた。
「本当に…何でもいいんですか?」
ソータは落ち着いて問い返す。
「お、おう…約束は守るって」
「じゃ…じゃあ」
ソータはもじもじしだして、頬を赤らめながらこちらを見つめた。
「托生さん、私、お願い決めました」
「お、おお」
決めたらしいソータの願いに耳を傾ける。
「托生さん。私と……──」
ゴクンと唾を飲み込む托生。
「私とっ…冒険者をやりましょう!!托生さん、この世界で知らないことも多いみたいですし。私も…一人だと寂しいですから…」
「…!大歓迎だよ!これからもよろしくな!ソータ!」
「本当ですか!ありがとうございます!」
※
オカマ店員によって夕食が持ってこられた。
「大丈夫だった?」
「ええ」
「すんません…心配かけてしまって…」
オカマ店員は、托生の顔をじっと見つめてこう言った。
「あれ?お客さん、結構変わりました?」
「え?そうですか?」
「ええ!以前より逞しくなってますよ!」
オカマ店員の言うとおり、托生には外見にも大きな変化が顕れていた。
目の下のひどいクマは取り払われ、彼の表情は爽やかになっていた。
ソータが托生に大きく頷いてくれたとき、彼は大きな自信がついた気がした。
──夕食を済ませた托生は、浴槽に浸かっていた。
温かいお湯に浸かって、心身ともにリラックス。
「あぁ~、マジ最高だぜ…」
背筋を伸ばすと、重りを外したように体が軽くなった。
自分が自分でないようだ。
何もかも全て、ソータがいてくれたお陰で戻ってきた。
あの時出会ってなかったらどうなっていたか。
ソータの優しさは、何物にも代えられない。
「ソータには、まだ恩を返しきれてねえからな」
忘れはしない。ソータが話しているとき、彼女が流していた涙を。
彼女が自分を救ったように、今度は俺が、彼女を救う番だ──托生は勇んで顔にお湯をかけた。
「お着替えここに置いておきますね」
ソータが風呂のドア越しから声をかけてきた。
「おう、ありがとう!」
ソータは優しくて、勇気があって…──良いところを挙げるとキリがない。
「まったく、ソータってすげえや」
呟いてから、ドア越しに耳を傾けてみた。
スルルルッ…
「(何だ…この音)」
その時、ドアは開かれ、ソータが入ってきた。
「えっ…えええーっ!?」
その時、ドアは開かれ、ソータが入ってきた。
托生が声をあげて驚いた理由は、自分が今全裸だから──だけではないのである。
ソータすらも、今一糸まとわぬ姿なのである。
色白のシルクのような肌に、托生の心は射られた。
視点はそこから動かなくなってしまった。
「はにゃ…そんな…じろじろ…やぁ…」
「ごっ…ごめん」
ソータが恥ずかしがってその場に崩れ落ちる。一気に幼さが増した気がした。
托生のソレは、まるで猛る龍のように、ソータを威嚇していた。
「ご…ごめん!そろそろ上がるから──」
托生は焦って立ち上がると、ソータの前にソレを付き出してしまった。
「ふにゃあ~っ!にゃあ~っ!」
ソータの体に15cmにまで膨張したソレを見て、ソータは悲鳴をあげた。
目を隠そうとするも、指のすき間から瞳孔が丸見えだった。
…しばらくしてソータが落ち着いてくれた。
「と、ところで…ナニをしに来たんだ?」
「…えーと」
托生は変な期待をしてしまうが、この状況だから大目に見てほしい。
ソータはもじもじと足を擦らせあいながら、タオルを手に取った。
「托生さんの…お背中をお流ししようと…」
「え…?あ…そう…」
期待は大きく外れたらしい。
「け…決して、そんなイヤらしい意味はないですよ!」
「わかってるってのっ…!」
托生は椅子に座って、背中をソータに広げた。
「じゃあ…」
「は…はい!」
ソータ自身、あまり慣れていないんだろう──と、托生はあまり実力では期待してはいなかった。
──ゴシッ。
「ほぉぉおおーっ!」
──托生の異世界生活の一日目は、これで幕を閉じることとなる…。
さて、この二人はこれからどうなるのだろうか。