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第33話『ドーラの脅迫』

 そもそも、クルトが金庫の鍵を持っていたのには事情があった。

 ベレントからの命令を受け、金庫への32000ポイントの入金を頼まれたのである。

「やはりそうですか…」

 ドーラは、クルトの返答に眉根を下げる。

「それは残念です」

 こちらの誠意は伝えたので、クルトは一刻も早くこの場を去ろうとした。

「失礼しま──」

 だが、クルトの腕が掴まれた。



「お前は、そこで脅されたってことか」

「…はい」

 ただでさえの高身長、威圧感はただならない。

 托生とソータですら初対面では、それを受けてろくに声も出せなかったのだ。

 クルトの罪がいくら重いとはいえ、やはりどうしても同情が勝る。

「よし、よくわかった…自分を責める必要はない」

「そうですよ、あの脅しに逆らえば、命も危なかったのですよ」

「…」

 だが、クルトはかぶりを振る。

「ですが、私が今回の事態に関与したというのは事実です。その責任だけは、取らせていただきます」

「「責任…?」」

 クルトはそこからさらに付け加える。


「ベレントさんが抜けたチームに、私が入ります…そして、ベレントさんについて知っていることがあれば、全てお教えします」

「おぉー」「頼もしい限りですよ、是非ともお願いします!」

 2人が歓迎してくれる。

「これは、すごい情報経路として期待できそうだ…」

「これからお願いします!クルトさん」

「ええ…──あと、加えて1つ、情報を」

「「…?」」

「ベレントさんがドーラさんと関わっているという噂は、事実なのです」

「「やっぱり!」」

 2人は一斉に頷いた。


「ですが、私はまだ、希望を捨てたくないのです」

「希望…」「それはどういうことでしょう」

 クルトは真摯な目で向き直る。

「ベレントさんは、正義の心に満ちた方です。現在、彼はきっと何か考えがあるのです」

「…ええ、それは私たちもそう思っていますが、何の証拠のないまま信用するのもいけません」

「それを1つの可能性として受け止め、俺達は今回の事態を切り抜く方法を見つけ出すんだ…」

「はい!どうかお願いします」

「ああ、それはベレントへの恩返しにもなるからな」

「ええ!最善を尽くします!」

 クルトは真っ直ぐに托生たちを見て、頷くのだった。


※チェヴィルの部屋


「むー…」

「ど…どうしました」「不機嫌そうですが…」

 チェヴィルは勉強のペンを机に叩きおいて、呻きながら貧乏ゆすりをするのだった。

「ほんっと…つまんないわ」

「「えっ?」」

「つまんないって言ったの!」

 きっぱり言い切ったチェヴィルだが、姉妹はもはや釈然としない。


 そこでチェヴィルは、一気に立ち上がる。

「よし、決めた!」

「…?」

「私、明日レベル上げに行くわ!」

「!?」

 チェヴィルの我儘に付き合うのがこんなに億劫だと思った1日は、今までに1日たりともなかったろう。

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