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第26話『王城への帰還』

「やっと…戻ってきたぁっ」

 5人はついに城へ戻り、中でもチェヴィルは最も早く城へ飛び込みたいらしい。

「おかえりなさいませ…」「かなりお疲れのようですが…」

 ラトカとカトラが出迎えてくれ、チェヴィルはすぐに抱きついた。

 二人はその様子にわからない様子。

 托生とソータは中に入るが、操縦士二人とはここでお別れだ。

「それでは、私どもはここで」「お疲れ様です!」

「ああ、ありがとう!」「お世話になりました!」

 托生とソータがそう挨拶をすると、ラトカらも彼らに、「「ありがとうございました」」と言う。


 離れてゆく彼らを見送った托生とソータは、ラトカとカトラに今回の成果を伝える。

「今回のチェヴィルさんのレベル上げ、文句無しの成果です」

「これ以上なく完璧だったよ」

 ラトカとカトラも、それには自分のことのように喜んでいた。

 だが、とうの本人のチェヴィルは、ラトカとカトラに顔をうずめるばかりであった。

「何か…ありましたか?」

「ああ…いろいろとな」



「チェヴィル姫は、割と遠くにあったアングワーナから、強い恐怖感を感じたらしいのです」

「アングワーナから…──そうなのですか?」

「…うん…」

 チェヴィルも少し落ち着いたらしく、カトラに小さい声でそう返す。

 ラトカが水を与え、ついにチェヴィル本人から語られる。

「レベル上げが終わって馬車で帰ろうとしたとき…“オーク”に襲われたの…」

「オーク…──その状況をどうやって切り抜けたのです?」

「托生が倒してくれたの…」

 カトラとラトカの視線が托生に向く。


「アイツ、なかなか強かったぞ…3連続のCスマッシュでは応えなかった」

「そんなに強かったのですか…」

「久々の5連続で仕留めたが、ヤツのタフさは、こうもしないと崩せなかったろう」

 そして、托生はオークの特異点を忘れてはいなかった。

「アイツは、『姫を寄越せ』と言っていた…」

「!?言葉を喋ったのですか」

「ああ…」

 托生にはグレムリンの前例があるため驚くことはなかったが、二人はそうはいかぬようだ。

 喋るモンスターを聞いたこともないのか、托生の言うことに目を見開いていた。


「──詳しく話を聞いてもよろしいでしょうか」

「「「…?」」」

 突如隣から話しかけられ、一同はそこを見る。

 すると、中でもチェヴィルが最も表情を明るくしていた。

「セイン!」

「?」

 チェヴィルの呼びかけに、セインは微笑んだ。


※一同は、チェヴィルの部屋へ


「なるほど…そんなことが…」

「そうなの!」

 チェヴィルはセインに、今回のことについて語った。

 セインはかなり早くそれを理解したらしく、托生とソータは不思議だった。

「托生さん、ソータさん…姫様を救ってくださり、ありがとうございます!」

「え!いや、俺達の使命ですから!」

「頭を上げてください!」

 だが、セインが顔を上げると、そこにはもうにこやかな表情はなかった。

「レベル42のオーク…ですか」

「…え?」

「…ここであなたに伝えるには、とても難しいと思われますが、どんな答えでもでもお聞きしますか…?」

「…ぉ…おう」

 それを聞いて、セインは語りだす。


「オークは、群れで生息します」

「「「ッ!?」」」

 一同が目を見開く。

 驚きのあまり声を失ってしまった。

「それは…本当なんですか…」

 ソータがそう問うと、セインは間髪入れずに答えを返す。

「ええ」

 オークと実際に戦った托生には、最も強い驚きがあった。

「まさに20体ほどのオークが束ねる軍があるということも、囁かれていますよ?」

「アレが…20体も」

 托生は、ますます自分の無力さを知る。

 アレを何体もの数相手にするとなると、托生に勝機がないのは明らかである。


「姫を寄越せとオークが言うのなら、チェヴィル姫を護る警備をさらに上げなければなりませんね…」

 チェヴィルがさらに震える。

 ラトカとカトラが彼女を抱きしめることでマシにはなっていたが、彼女の幼い心に、恐怖は重たくのしかかっていた。

「托生さん…他に何か情報はございませんか?」

 それに、托生は心当たりがあった。

「俺はオークに聞いたんだ…なぜチェヴィルを狙うのかと…──するとヤツはこう答えたんだ…『ヒメモトメシアルジヘ』と」

 托生は、その言葉の『アルジ』という言葉が引っかかって仕方なかった。


「アルジですか…大体のことは察せましたよ」

「なに…!」

 セインは、自分の推測を語りだす。

「オークには、忠誠を誓っている者がいるのです…それも、オークではなく、人間の」

「人間のだって?」

 一同は、その見解に理解ができない様子であったが、セインはすぐに詳しい説明に入る。

「何の冗談でもありませんよ。オークがヒトの言葉を喋るなんて、前代未聞です。誰かがオークにヒトの言葉を教えたのでは?」

「だが、あれだけ強いオークを屈服させるってのは…」

「…私にもわかりかねます」

 一同は、再び暗黙に戻る。


 そして、その暗黙もセインが断つ。

「──…あと、姫様はアングワーナから気配を感じたそうですね?ですよね?姫様」

「うん…」

 チェヴィルは小さく頷く。

「…なら、もしかするとそれは…」

「…?」

 托生とソータは、セインの表情を見る。

「「…!」」

 顔の幼さが嘘のように、刃の切っ先のような剣幕をしていた。

「ラトカさん…カトラさん、本日が何の日か、ご存知ですか?」

「えっと…本日は…──!?」

 カトラとラトカの表情が、同時に硬直する。

「「ドーラさんが、城から出る日…」」

 チェヴィルは、その時ハッとする。

「私は…あの時…まさか」

 チェヴィルがセインを見ると、彼は頷いていた。

「見られていたの…!?」

「…はい」

 一同の空気は、凍りついた。

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