第23話『托生とオークの戦い』
「ジャマモノ…!シネェッ!!」
オークは、その棍棒を托生目がけて叩き下ろす。
隙だらけの攻撃で簡単に避けられたが、棍棒が叩きこまれた地面は、悲鳴をあげてひび割れた。
「(あんな巨大な棍棒を振り回すとは…。隙だらけだが、パワーは半端じゃない…)」
だが、托生はすぐさま反撃に入る。
棍棒を伝ってオークの顔面に飛び上がると、托生はスマッシュを叩き込む。
「スマッシュッ!」
「バウォッ!?」
叩き込まれたスマッシュに、ヤツは倒れることはなかった。
「ヨワイッ!」
「くそっ、スマッシュじゃダメか…なら──」
托生はオークから引くと、ヤツは走ってこちらに向かってくる。
「ォオァアーッ!!」
──ドンッ!ドンッ!
オークが地面を踏むと、地面が震えてくる。
スピードは大したことはないが、その威圧感は半端ではない。
「オウッ…!」
オークはスタイルを変え、その棍棒を片手で横に振り回す。
「危ないッ!?」
托生は飛び上がってそれを避ける。
風が一度吹いて、托生は、バランスを崩したオークに攻撃を与える。
「そんな武器…捨てやがれッ!」
托生が攻撃したのは、オークの棍棒を握る手だ。
「ウォらッ!」
腕に直撃した攻撃は、衝撃とともにオークの腕を震わすが、ダメージは与えない。
棍棒を飛ばす目的も達成できないと思われたが、それだけでは終わらなかった。
「まだだ!」
「!?」
その腕に、衝撃が再びやってくる。
1回,2回と強くなる衝撃に、オークの腕からその棍棒が飛んでいく。
ブンブンと空気抵抗を受けて回りながら、150kgの棍棒は後ろに吹き飛ばされた。
「…ッ!」
オークは驚いたように托生を睨むと、武器を失ったヤツは、咆哮をあげて托生に殴りにかかる。
「ブィイイイッ!?」
托生に何度もパンチを叩き込むが、托生はそれを避けていく。
普通のモンスターと違い、その攻撃にはしっかりと狙いがついていた。
「(レベル42は伊達じゃない…──間違いない、ランナーリザードはコイツから逃げるために走っていたんだ)」
オークは托生の動きを読みつつ、その動きに適応しはじめる。
──ドガッ!
「うおっ!?」
ヤツの攻撃が托生に入る。
ただのずぼらな敵かと思っていたが、どうやらなかなかやるらしい。
托生は避けようとしたが、攻撃は右脇腹に攻撃を受け、吹き飛ばされる。
だが何とか体制を立て直すと、応急処置に回復魔法をかける。
「ニンゲンノクセニ…ツヨイ!ナマイキ!ブチコロス!」
「さっきから殺す殺すってうるさいんだよ!」
托生はガードとスピードを上げるスキルをかけ、オークに攻撃をしかける。
「おラッ!」
オークには付いてこれないであろうスピードで、托生は目の前に回り込む。
そしてスマッシュを2回、腹にめり込ませた。
「ガゥッ!ゴァッ!」
だが、オークほどにタフなヤツとなると、これで倒れるとは思えまい。
托生は腕にさらなる力を込める。
「Cスマッシュ!!」
「ウガァアアッ!?」
オークの鳩尾にめり込んだパンチは、さらなる衝撃を伴う。
──バンッ!ドスッ!ゴスッ!!
「ガッ…バウォアッ!!」
これでようやく吹き飛ばされ、オークはついにそこに倒れた。
「ふぅッ…何てタフなヤツだ」
オークは、托生のCスマッシュを受けてもなお、まだ生きていた。
このタフさは、グレムリンすらも思い出す。
托生は、このオークは話が通じるかもしれないと思い、質問する。
「おい、お前たちはなぜチェヴィルを狙う?」
「…」
オークは、それを聞き入れたように間を置いてから、立ち上がって言う。
「ヒメ…モトメシ…アルジヘ!」
「主…それは何だ!」
だが、オークはそれに答えない。
「シルヒツヨウナイ!オマエ…ココデシネッ!ブァアアアッ!」
オークは、今までにないスピードで襲いかかって来る。
だが、托生はそれに溜め息を漏らす。
「話は通じないか…」
托生は腕を構える。さらなる攻撃を仕掛けるために。
確実に仕留めるには、3回連続では足りない。
ここに、確実な一撃を決めよう。
「Cスマッシュ!」
オークを殴ると、先程同様に、衝撃は1,2,3と続き、オークの体が大きく仰け反った。
だが、それにさらなる追い打ちをかけるように、4回目がやってくる。
「ガアッ!?」
その衝撃は、オークの腹を潰すように放たれた。
3回目の衝撃どころではない。
だが、そこからついにやって来る。最後の一撃が。
「これで最後だ…あばよ!」
──ズギュゥンッ!
オークを貫くように、5回目の衝撃が伴われる。
「ブィイ…ッ」
それにオークはずっと遠くに吹き飛ばされ、息絶えるのであった。
「ハアっ…はあッ!」
久々の激戦だ。
托生は、反動で震える腕の痛みを堪えながら、そこに座り込むのだった。