第一話:遺跡探索 [前日]
ここは冒険者や探究者が多く集う街エントラ。
街の人は皆、動物の一部が体の見た目へと反映されている。
その理由は、およそ300年前12の星神による争いによって人間が滅び、新たに動物の耳や尻尾などが生えた"亜人"が誕生したためだ。
更に亜人だけでなく魔法という概念や魔物などもあらわれるようになり、『世界は改変された』などととある学者は述べており、この世界はイルシオンと名付けられた。
だが、その中で滅びた人間が残したとされる物も多く発見されており、それは遺跡と呼ばれている。
遺跡は未だ探索がされていないものも多く、特にこの街の周りは遺跡が多かった。
そして、その遺跡を探索し遺物を見つけ出す"探究者"と呼ばれるものが居る。
そんな街エントラを明日の遺跡探索に向けて買い物をする探究者の少女が居た。
「毎度あり!いつもありがとな、シオナちゃん!
これは、おまけの新作だ!持ってけ!!」
シオナと呼ばれた狐の耳と尻尾を持った白髪少女は遺跡探索の時にはこうしてこの店に回復のポーションを買いに来る。すると時折、店主はこのように新作やおまけをくれたりするのだ。
しかも、貰ったポーションの効能としては、大怪我でも全身の傷を瞬時に回復させるというものらしく、
今市場で出回っているものではここまでの効能のものはないのでおじさんの腕と人の良さが伝わってくるというものだ。
「いつもありがとう、おじさん!
明日遺跡探索だから、タイミングがあったら試してみるね!」
「ああ、万が一が無いことを祈っているが頑張ってな!」
そうして、ポーション屋を後にし次の目的のお店へと向かう。
次のお店はというと、スクロールと呼ばれる紙に魔法を付与したもので、魔力を必要としないためどんな人でも魔法を扱うことができるという代物だ。
本来魔法は、"火・水・風・闇・光・無"の6属性があり、魔法を扱える人は少ない。
使えても一般的には1属性が多い。一部では、2属性や3属性が扱える人がいるが4属性や5属性は未だに確認されていないのだ。
そこで、魔法が使えない人や属性のアドバンテージを増やしたい人の為に即時に魔法が使える消耗型のスクロールというものが開発されたのだ。
これは、遺跡から発掘された本によって開発がすすめられたもので値段としては多少値は張るが現在では研究がすすめられ各属性の初級魔法から中級魔法まで扱うことができる代物だ。
シオナは自分が使うと考えたスクロールを次々と手に取っていく。
値段は多少張るが、命には代えがたいという思考だ。
最終的には主3属性の火・水・風のスクロールを買うことに決めた。
シオナは風属性が扱えるが、あまり魔力量が多くないためこうして風属性のスクロールも買うのである。魔力量だけでなく、魔法を重ねることで威力が増すことからシオナは割とスクロールを愛用しており、大事な場面でもかなり役立っている。
「おばさん、火、水、風の中級攻撃スクロールをください!」
「毎度あり、頑張ってきなね。
また、元気な顔をおばさんに見せとくれ。」
「おばさん、ありがと!また来るね!」
シオナはスクロールが入った袋を受け取り笑顔で感謝の気持ちを伝えお店を後にした。
その後は、隊員の仲間の分の夕食も作らなければならないため食材を買って回った。
最早色々な店が常連の為、遺跡探索前となるとどこから情報を手に入れたのか、皆頑
張ってと言ってくれたりおまけをくれる。
おまけに関しては少しもうしわけない気持ちはあるが、応援される気持ちはかなり嬉しかった。
「期待に応えられるよう、明日は頑張らないと!!」
皆の期待を胸にしまいシオナは班員が待つ小さな家の帰路につくのであった。
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家に帰ると早速シオナは夕食の準備を始めた。
今晩のメニューとしては、シチューと肉の炒め物をする予定だ。
更におまけでもらったとっておきのものがあるので、料理を作るシオナ本人もかなり楽しみにしているものがある。
「おまたせー、できたよー!」
「「「待ってましたー!!」」」
隊員の皆はお腹をすかせており、今か今かとフォークを片手に持ち姿勢正しく椅子に座っていた。
できた食事を机に並べていく。今日の料理は、いっぱいまけてもらえたおかげでいつもより豪華だ。
主食のパンと、スープにシチュー、お皿いっぱいのお肉と野菜の炒め物だ。
更には、おまけしてもらえた猪のどでかいお肉を机の真ん中に置く。
「星神レグルス様に感謝を。」
「「「感謝を!!」」」
この世界を作ったとされる"獅子の星神レグルス"に感謝の気持ちを伝えた後はやっと食べれるとばかりに皆は食事にがっついていた。
自分の作った食事をこんなにガツガツ食べてもらえるというのは寧ろ気持ちがいい。
「シチューはおかわりあるから、ゆっくりね。」
「おかわり!」
「早っ!ゆっくり食べてね?」
あまりにも食べる速度が早いため苦笑いになりながらもおかわりをよそっていく。
おかわりをよそっている間に他の人もおかわりと元気よく言い、結局皆2杯以上食べていた。
夕食を食べた後は明日の作戦について話し合い、談笑に興じるもの、武器のメンテナンスをするもの、早めに寝るものに分かれた。シオナは武器のメンテナンスは済ませてあったので、既にベッドの中である。
「明日は良い遺物があるといいな・・・。」
1人そう呟くと、気が付かぬ間に眠りへと落ちていた。
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