はじまり
ちーん。
死んだ。
死んだはずだ。
どうして死んだかは思い出せないが、それだけは確かだ。
それはいい。
いや、よくないけど。置いておく。
問題は目の前の光景だ。
鬱蒼とした森。前後左右全部、森。
何これ。
ちょっと目の前が真っ暗になったけど、落ち着こう私。
とりあえずは状況確認。
まず、私は死んだ。で、森。
考えられるのは、
①ここは死後の世界
②死んだという認識が間違い&夢遊病とかの病気で森にいる
③死んだという認識が間違い&誘拐とかの事件で森にいる
④死後転生して記憶喪失
⑤おいでませ異世界
・・・とりあえず、安全確保かな。
③の誘拐だった場合に備えて、太い木と、背の高い草の間にしゃがんで隠れてみた。
本当は、木の上に登りたかったのだけど、この辺の木は全部スギの木みたいにまっすぐで、登れる気がしない。
しゃがんだら、多少落ち着いてきた。
それぞれの説の確認とこれからどうするかを考えよう。
まず①の死後の世界説は確認のしようがない。
この場合、森から脱出・・・できるのか?森だけの世界だったらどうしよう。
と、ともかく周辺を調べていく。
②、③の死んだという認識が間違い説は万々歳。
体を軽く動かしても痛むところはなかったから、誘拐犯説の可能性は低くなったけど。
この場合は、誘拐犯に気をつけながら、森から脱出。
④の死後転生して、今までの記憶をなくしちゃった説は、服以外持ち物がないから身分証明書とかから転生したっていう確認はできない。なんで森にいるかが分からないから、②、③と同じ扱いでいいでしょ。
⑤のおいでませ異世界・・・。
いやいやいや。大丈夫か自分。
いくら活字中毒で児童書から経済新聞まで広く浅く読み漁ってたからって、この発想。
いい年こいて、大丈夫か自分。
アラサーじゃん。大丈夫か自分。
④の転生もなかなかだけど、うち仏教だったし。
輪廻転生は宗教だよね。
でも、⑤はごまかしようがない。ファンタジーじゃん。
痛い痛い痛い痛い。自分の発想が痛い。
でも知ってるー。
こういうとき、主人公ってだいたいこうやって確認するんだよねー。
「はぁい!ステータスオープン!」
あ、でちゃった。