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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第9話 ガネーシャの娘

 西に移動すること一週間、オルドアという森を拠点にすることにした。


 理由は森の中に状態のいい廃屋を見つけたからだ。


 廃屋といっても、ガラスが一箇所割れているぐらいで、ほかは壊れているところもない。人の手をちょっと加えれば、今日からでも充分に住める。


 部屋も調理スペースやトイレを別にしても、3部屋はある。あと、大事な点だが、井戸もちゃんとある。トイレも井戸水を貯めておけば、ちゃんと水洗で使える仕様だ。


 次の町にも近く、おそらく林業の業者が使っていたものだろう。許可を業者から得ていないけど、まあ、問題があったら、手放せばいい。


 お金もモンスターを倒した際に魔石を手にしているので、ある程度たまっているはずだ。適当に土地を買い取って何か建ててもいい。


「寝る場所があっても、夜にモンスターに襲われたりしたら、ばからしくない?」


 シュリにそう言われた。それもそうか。


 じゃあ、掃除しとくか。


 俺は最強の剣士、アチャラ・ナータを召喚した。


 ところで、このアチャラ・ナータのステータスってどうなってんだろ。


 サーチ・アビリティを使ってみた。


=====

アチャラ・ナータ

Lv??

職 業:神

体 力:10753

魔 力: 5364

攻撃力:12532

防御力: 8269

素早さ: 5611

知 力: 3860

技 能:なし

=====


 体力と攻撃力、一万オーバーってチートすぎるだろ……。


 もう、こいつ、主人公でいいんじゃね? でこぴんで魔王に勝てるよ。


「ええと……このへんの森のモンスターを掃討してくれ」


 アチャラ・ナータはこくりとうなずいて、また森の中に入っていった。


 途中、数回Lvが上昇した反応があったが、最終的にはこうなった。


=====

ゴーウェン

Lv52

職 業:召喚士・治癒士・調理師

体 力:1064

魔 力:1169

攻撃力: 791

防御力: 767

素早さ: 914

知 力:1058

技 能:サーチ・アビリティ サーチ・アンデッド センス・エヴィル ヘルフレイム ライトニング・ボルト メテオ・レイン サーチ・イーヴル レヴィテーション テレポーテーション ディナイアル・マジック リーディング・マインド

=====


 ひとまず、順当に強くはなっているらしい。


 できれば自分でモンスターを倒した際に一回ぐらい成長したかったが、そこはご愛嬌だ。


 ここまで来ると、相当な数のモンスターを倒さないと成長もしないだろうしな。アチャラ・ナータの殲滅戦略みたいなのが必要だ。


 あと、アチャラ・ナータが魔石に加え、モンスターの牙や歯、毛皮といったものを持ってきてくれた。


 どうやら、魔石が高価なものであるということを学習しくれたらしい。

 牙とか歯もその延長線上だろう。たしかにアチャラ・ナータの故地であるインドでも象牙とか高く流通してただろうし、金になると踏んだのだろう。


「ありがとう。今後ともよろしくお願いします」


 アチャラ・ナータは一礼すると消えていった。


 さすが仏教世界で(たぶん)最強の剣士であるだけのことはある。少なくとも明王の中ではトップではないだろうか。


「さて、この魔石やら部品?やらをどうしようか。まあ、加工する技術なんてないし、売るしかないんだけど」


 まだこの世界の物価に慣れてはないが、おそらく魔石だけでひと財産築けるぐらいの額はあるのではないだろうか。


 ビヒモス級の大きな魔石はないが、その分、数が尋常じゃない。


 仮に一つ平均1万ルピス(日本円で10万円ほど)としても、300個ぐらいあるから、300万ルピスか……。


「言うまでもないけど、これを一気に売りにいったら、目立つわよ。おすすめはしない」


 シュリが顔をしかめていた。


 突如、森の中に住みついた謎の金持ち剣士か(職業は召喚士とか治癒士だが、剣士を名のるほうがまだ一般的だろう。鎧も剣も持ってるし)。しかも冒険者ギルドにも無所属。


 怪しいにもほどがあるな。


「こんな時、役に立つのがマントラだな」


 お金儲けに関する神格というのは実は意外と多い。


 前回、虚空蔵菩薩の力で、記憶力もチート状態になっているので、過去に一度でも見聞きしたマントラなら確実に詠唱できる。


 しかし、唱える前にシュリがストップをかけてきた。


「待ちなさい。あなた、もしかして歓喜天かんぎてん……ヴィナーヤカのマントラを使おうとしてない?」


「なんか問題あるのか? たしかにダキニ天のダキーニーとかヴィナーヤカはうかつに扱うと危ないってよく言われるけど、魔王を倒すための延長線上にあるわけだし、使い方としてはまっとうだろ?」


 歓喜天とかダキニ天とか、いわゆる天部と呼ばれる神格は多くが古代インドの邪悪だったり凶暴だったりする神を原型にしている。大黒天マハーカーラがまさにそうだ。


 そのため、呪法などでの威力が強烈な分、下手に扱うと自分や子孫が破滅したりとか恐ろしいケースもあるのだという。


 しかし、たいていの場合、そういうのは私利私欲で使ってるからだ。


 今回はモンスターとか悪い奴らを倒して平和をもたらしてはいるわけだし、ろくでもない結果にはなるまい。


 なお、歓喜天ヴィナーヤカの原型はゾウの神様ガネーシャだ。ただ、仏教的にはヴィナーヤカのほうの名を使おう。


「弁財天のサラスヴァティーにするって手もあるけど、どちらかというと財宝の神になったのは日本に来てからだしな。むしろ芸術の神格だし。毘沙門天のヴァイシュラヴァナも財産神でもあるけど、これも戦闘がメインだし」


「そうね。破滅するってことはないだろうから、好きにしなさい」


 好きにしろと言われたのだから、言われたとおりにする。


 智恵の神格の眷属からの言葉だ。疑う必要などないだろう。


「オン・キリ・ギャク・ウン・ソワカ」


 無事にマントラは成功した。


 出てきたのは十六、七歳の姿をした美少女だ。


 亜麻色の少しウェーブした髪が艶かしい。


 服装はどことなくエキゾチックで、シュリと比べるとやけに露出が多い。隠すところは隠れてはいるが、胸元などが強調されていて、じっくり見るのは憚られるな……。


 全体的にシュリを子供の、生意気な妹っぽいキャラとすると、こちらは妖艶な先輩キャラってところか。


「ヴィナーヤカですわ」


 丁重にヴィナーヤカは礼をした。


 なんだ、見た感じ、危険な要素なんてないじゃな――


 一歩、二歩、やけにヴィナーヤカが俺に接近してくる。


 心地よい距離感というのは人によって違うだろうが、それにしても接近しすぎだ。


 まさか、凶暴な神格だけあって、いきなりこっちを食い殺すだなんてことはないよな……?


 本能的な恐怖を覚えたが、正直なところ、どうしようもない。


 これまで見てきたように、神格のステータスはシュリみたいな眷属クラスでも人間の常識を凌駕している。


 どのみち勝ち目などないのだ。


 ――すっ。


 俺の頬にヴィナーヤカの手が伸びた。


 あれ、もしかしてここで殺されるの……?

神格解説


★歓喜天ヴィナーヤカ


もともとインドのガネーシャが由来の神格。

インドでは暴虐の神として恐れられていたが、やがて仏教内の神格の一つとなった。ただ、本来の性格から非常に荒っぽい神とされ、祈祷などで高い効果をもたらすものの同時に、祈祷者に失礼があると、その者を破滅させると言われる。


また、二体のゾウが抱き合っている姿で現されることが多く、性的な意味合いで見る者も多いが、ヴィナーヤカ自体はほかの神仏以上に徹底して清浄を尊ぶきれい好きな神格である。


加護を得た者は非常な力を発揮するが、丁重に祀り続けることが必要。もう呼び出してしまった場合は、どうにか機嫌を損ねないようにするしかない!


次回はちょっと変則的ですが、朝10時頃を予定しています。

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