第50話 新しい魔王
「なんか、最近ずっと眠そうね」
シュリに言われて、ぎくりとした。
ぶっちゃけ嫁との夜の営みのせいだ。
ヴィナーヤカが「ごちそうさまですわ」とくすくす笑っている。全部ばれているらしい。
「まあ、とくにやることもないから問題ないだろ」
「あなたも魔王の夫なんだから、少しは政務ぐらいしなさいよ」
「やっぱり、お前は働かせようとするな」
もっと、俺はだらだらするぞ。
なにせ王国と魔族の戦争も止めたわけだし、人間としてやるべきことはだいたいやったはずだ。
そんなことを思っていたら、大きな仕事がやってきた。
「ゴーウェンよ、お前も魔王になれ」
マルファに言われた。
「なれと言われても、俺、人間であって魔族じゃないし」
「魔族になれとは言っておらん。魔王の夫なのじゃから共同統治にするのじゃ」
正直、仕事増えそうで大半だなと思った。
「でも、なんで今になってそんなことをするんだ?」
「簡単なことじゃ」
そしてマルファはなかなか遠大な計画を語ってくれた。
翌日、いきなり俺は魔族の前で魔王ということにするとマルファに言われた。
やっぱり魔族じゃないのに魔王やるのかよって目が注がれたが、マルファも魔王だということもあって、そう強い風当たりはなさそうだった。
あと、目的を直後にマルファが説明してくれたからな。
◇ ◇ ◇
★王国の側では
新国王カタリナは新しい国家作りのために邁進している。
ただ、幸いだったのは、魔族との戦争が止まったことである。
このおかげで戦争にかかる費用の一切がなくなった。
そのため、内政に力を注ぐこともできたし、結果的に彼女の治世も評価されることになった。
とはいえ、まだ魔族と和平交渉を結んだわけでもなんでもないので、まだ辺境地帯などでは防備を行っている。
そんな中、カタリナの元に魔族側からの書状が届いた。
その内容にカタリナはすぐに好意的な返事をした。
ただし、王国側の調整はしばらく必要なようだが。
◇ ◇ ◇
その日、俺は久しぶりに王都のほうに戻ってきた。
ただし、一冒険者としてではなく、魔王という扱いで。
町を歩いてトラブルが起きてもまずいので、そのまま城に直行した。
ちなみに同じ理由でマルファも同行はしていない。
やはり角が生えているのはインパクトがありすぎるからな。
会議の部屋ではカタリナが待っていた。
「お久しぶりです、まさか魔王になられるだなんて」
「というか、この交渉のために魔王にされたようなものなんですがね」
そして、俺たちはドルディアナ王国側と魔族側の休戦協定を正式に結んだ。
長らくこういう協定が結べなかったのはやはり種族の違いによるところが大きい。
だが、俺は人間だ。だったら応じてもいいかという気になりやすい。
そのためにマルファは俺を魔王にしたようなものだ。
これでこの世界は完全に平和になったな。
――とはいえ、そんな簡単にはいかないことは俺も地球の世界史で学んでいる。
「魔族の守旧派が邪神を召喚しようとしてるみたい。邪神を倒しに行くわよ」
シュリに言われた。こいつ、魔族の側でバリバリに政治をやってるんだよな。神格の眷属としてそれでいいのか……?
「もう、お前だけでやってくれよ」
「ダメ。あなた、どうせ政務もちゃんとやってないから監督役として来なさい」
「うむ。我の名代として行ってくるのじゃ」
妻にもこんなことを言われてしまった。
しかも妙ににやにやしている。
「数日かかるかもしれんから、シュリとどこかに泊まるがいい」
「いや、ほかの神格の力を借りればまたすぐに――」
「あと、シュリとやらも夫の側室に任命しておく」
「「えっ?」」
シュリと俺が声を合わせた。
「ど、どうして私が人間の妻にな、な、な、なんか……」
「この国ではわらわの命令は絶対じゃ。とはいえ、別に旅先で黙殺してもらってもよいのじゃぞ。そこはお前と夫の自由じゃ」
「あらあら、よかったですわね」
ヴィナーヤカがシュリのほうを見て、こちらもにやにや笑っている。
「べ、別によくないです! こ、こんなの関係ないんだから!」
「おぬしは神格ではないのだから、そう潔癖になる必要もなかろう。まあ、そこはおぬしが考えることじゃ。大人になったわらわは気が大きいのじゃ。あと、夫の独占も悪いからのう」
そして、やっぱり俺の意見は聞かれもしないのである。
まあ、シュリと行って間違いが起こることもないだろう。
でもどうして、シュリの顔がこんなに赤いんだろう。
「た、旅の支度してくるわ……」
そう言ってシュリは走って自分の部屋に行ってしまった。
明日から気まずくならなければいいけどな……。
「異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった」はこれにて完結です! ご愛読ありがとうございました! 引き続き連載している小説もありますので、そちらもよろしくお願いいたします!




