第46話 守護神消失
「うん、知ってた」
言うと思ってた。
想定の範囲内すぎる。
自分の国の卑怯さにがっかりしてるけど、国を守るためならこれぐらいやるだろう。
問題はそんな程度じゃ守れないってことだ。
「お前たち、どうして驚かない!? 殺されようとしとるんだぞ!?」
「もう、とっとと守護神呼べよ」
アライルはばれてることに気づいてパニックになりかけていたが、もう召喚するしかないと考えたらしい。
ぶつぶつとほかの魔導士たちと詠唱をはじめる。
「隙だらけですわね。今のうちに全員倒せますわよ」
「ヴィナーヤカ、そういうのはやめておこう。相手にも少しぐらい花は持たせる方向で」
と言っているのに、マルファが、
「卑怯者め! その報いを受けるのじゃ!」
王を見つけて、足を持って、ずるずる床を引き回していた。
「ひいぃ! やめろ! この悪魔!」
「黙れ、ウソつきめ! わらわが性根を入れ替えてやるのじゃ!」
王のピンチだが、アライルも詠唱をやめるわけにもいかないらしい。大変だな。
そして、ついに召喚が終わったらしい。
巨大な魔法陣から、明らかに人間のサイズ感じゃない巨人じみた男が現れる。
白いひげを伸ばしていて、いかにも神様っぽい。
「我は守護神ライセーンである。ドルディアナ王国を守るべく現れた。王国を害する者はどこだ?」
なかなかいかめしい声だ。
「守護神様、この者たちの排除を!」
アライルが叫んだ。
もう、今更弁明もできないだろうし、ヤケクソだな。
「わかった。国難を救うべく――」
「なあ、神様、聞きたいんだが」
まあ、ダメと言われても聞くけどな。
「守護神様はこの国を守る神なのか? ほら、ほかにも天地の創造神とか冥界の神とかいろいろあるじゃん」
「我はこの国の民族が古来信じていた神である。この国の民の始祖とも呼べるべき存在である」
「ああ、じゃあ、問題ないっぽいな」
スケールがこっちのほうが大きい。
不動明王アチャラ・ナータの本体は大日如来。
つまり、宇宙そのものみたいな存在だから。
「ノウマク・サンマンダバザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン!」
自信を持って、俺はマントラを唱える。
出てくるのは鉄仮面の剣士。
「あの守護神をどうにかしてくれ。あいつは悪じゃないかもしれないけど、あいつらが呼び出したものは悪だ」
アチャラ・ナータはこくりとうなずくと、そのまま守護神に突っ込んでいく。
「愚かなる者よ。我は神、どのような悪しき者もうああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
アチャラ・ナータの剣が敵の神様に触れた途端、巨大な光が起きた。
「浄化の光ですわね」
花火でも見物するようなノリでヴィナーヤカが言った。
「仏教はああやって神を降参させて自分の内側に取り込んでいくんですわ。天部の存在はだいたいそういう目に一度遭ってますからわかりますわ」
「そういえばそうかも……」
ヴィナーヤカももろにそういう存在だった。
「別に殺されたわけじゃないので安心ですわ」
そして光は消え、守護神もアチャラ・ナータもいなくなった。
「あまりにもそっけないわね」
シュリがあくびをしながら言った。
「俺、アチャラ・ナータのステータス知ってるからな」
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アチャラ・ナータ
Lv??
職 業:神
体 力:10753
魔 力: 5364
攻撃力:12532
防御力: 8269
素早さ: 5611
知 力: 3860
技 能:なし
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こんなの、絶対に勝てない。
そして、そうじゃないといけないのだ。
アチャラ・ナータは仏敵調伏という目的を持っている。
そんな存在が苦戦を強いられていたら、まったく示しがつかないことになる。
強敵だからだなんて言い訳は通じない。
アチャラ・ナータが戦うのは、とてつもなく恐ろしい敵ばかりのはずだから。
さてと。
「アライル、この落とし前はどうする?」
俺は魔導士たちのほうに向き直る。
ちなみに王はずっとマルファにひきずりまわされている。
それは置いておくとして、ひとまずアライルたちだ。
どこかで、こいつらにはしっかりと反省をさせないといけないからな。
勇者を召喚しては魔王軍にぶつけていくというシステムだけでもどうにかさせないと。
アライルは無言で後ずさる。
打つ手がなくて、どうしようもないんだろうけど、そんな理屈は通らない。
「こ、この国最高の勇者として、す、末永く顕彰し……」
「いらん」
こっちの要求はすでに言っている。
「お前も王も全員退位しろ。性根が腐りすぎてる」
アライルは立っていられなくなったのか、その場に崩れた。
まあ、とにかく今回のクエストはクリアだな。




