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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第44話 お姫様失踪

 翌日、王城は大混乱に陥った。


 なんと一人娘のカタリナが見当たらないというのだ。


 心労が重なって王は倒れそうになったが、どうにか我慢した。

 倒れている暇などないのだ。


「守護神ライセーンを呼び出す準備をしておけ……。娘よりも国を守ることが先決じゃ……」


 魔導士アライルとその門下たちは城の地下で守護神ライセーン召喚の儀式を秘密裏に執り行いはじめた。


◇ ◇ ◇


 目が覚めたらヴィナーヤカが上に乗っかっていた。


 しかも右腕にはぎゅっとマルファが抱きついているし、左腕もナリアルがつかんでいる。

 どんな態勢だ、これ……。


「やっぱり、たまにはゴーウェンさんに抱きつかないと落ち着きませんの」


「まあ、召喚した手前、責任はとりますよ……」


 ヴィナーヤカに関しては俺のほうに問題があるのでしょうがない。


 で、そういう意味では両腕のほうもしょうがないのだ。


「わらわは妻じゃからの。ずっと夫の近くにおらんとな」


「その……本日は夜伽役をやるようにと魔王様に言われたのだ……」


 うん、俺に責任があることはちゃんとどうにかするよ……。


 魔導士アライルが帰ってからは束の間の平穏な期間だった。


「王もすぐには決断ができんのじゃろう。わらわも同じ立場じゃったから、わかるぞ」


 マルファより俺は人の悪いことを考えている。


「きっと俺たちを倒す方法を練ってるんだよ。そうに決まってる」


 あまりうれしいことでもなかったが、俺の説が正解だったとわかった。


 また客人がやってきたのだ。


 応対役で出ていったシュリがすぐに戻ってきた。


「他、たたた、たたたたた、大変よ!」


「お前がそんなにあわてるって珍しいな……」


 大変なことだけはよく伝わった。


「王国のお姫様が、単身でお城抜け出してやってきたのよ!!!」


 割とガチでとんでもない事態だった。


「とにかく、お連れしてくれ。あんまり粗相のないようにな」


「なんじゃ、たかが姫ではないか。こっちは元魔王じゃぞ」


「わたくしも神様ですから、別に偉いとは思いませんわ」


 そうですね。

 皆さんのほうがお偉いですね。


「あの、言いたいことはわかるけど、自分のほうが偉いですもんねオーラ出して、向こうの気を害さないようにしてくれよ……。それで王国ともめても困るし……」


「問題ありませんわよ。ちょっとタメ口で話すだけですわ」


 問題あるじゃねえか。


 入ってきた姫は一目で姫とわかるぐらいにキラキラ輝いていた。

 年齢的には15歳ぐらいだろうか。


「ドルディアナ王国の第一王女カタリナと申します。突然押しかけてごめんなさい。どうしてもお伝えしないといけないことがありまして……」


 思った以上に姫は下手に出た。

 ひとまずこちらの態度でトラブルになることはなさそうだ。


「ゴーウェンと申します。それで、いったい何が?」


「皆様は狙われています!」


 ――そこから話をうかがった。


 ものすごく簡略化すると、王国では俺たちを討ち果たす神を呼び出そうとしているらしい。


「俺の説が当たっちゃったのか……」


 予想はしていたけど、わかるとそれはそれで寂しいな。


「今回の件、発端は我が国の人倫にもとる行為にあります。人間を召喚して道具のように使っていた報いなのです。これ以上、罪を重ねるわけにはいかないと感じ、ご連絡に出向いた次第です」


 すごくよくできた子だな。日本の中高生に手本として見せてやりたい。


 ただ、正義だけでは政治はできないからな。

 彼女の中の正義と現実が折り合いが合わなくて飛び出してきたんだろう。


 年齢的にも親とケンカして家出したりする時期だ。


「ええと、まず確認しておきたいんですが、確かに王国の仕打ちには恨みは抱いてますが、滅ぼそうだなんて思ってませんよ?」


 恨みに関しては言ってもいいだろう。

 殺されかけて、気にしてませんって言うほうがうさんくさいしな。


「魔王軍との戦争状態を停止させようというのも本気ですからね? 魔王軍のまわし者じゃありませんからね?」


「むしろ魔王から命を狙われておるのじゃ」


 マルファの言ったとおりだ。

 元魔王がいるからって魔王軍の手下と思われるのは風評被害である。


「そう言っていただけれ、うれしいです……」


 カタリナ姫は平民にあっさり頭を下げた。


「とにかく、皆さんは狙われています。そして、いくら皆さんのお力でも守護神にはかないようがありません。相手は神ですから……」


 そっか、そっか、神か。


 まあ、常識的に考えれば勝てるわけがないと思うよな。


「シュリ、ぶっちゃけて聞くぞ。勝てそうか?」


「うん」


 即答だった。


 一応、ヴィナーヤカや、あとインドラその他の神格を見たけど、異議はないらしい。


「ということで、姫様、ご心配にはおよびませんので」


「え、え、え……? 相手は神なんですよ?」


 すいません、理解できないかもしれませんが、こういうパーティーなんです。


「守護神ライセーンはかつて魔王を封印したこともあると言われているんですよ?」


「魔王ぐらい封印もするじゃろ」


「大雨を降らしたり、旱魃を起こしたりもしたという話も……」


「天気ぐらい操るであろうな」

 これは雷神インドラの言葉だ。


「大地に長い亀裂を作ったという話も……」


「大地を割ることもありますよね」

 これは地蔵クシティの言葉。


「お姫様、ご心配はいりませんわ、その理由を説明いたしましょう」


 よかった、ヴィナーヤカ、ちゃんと敬語を使ってくれてる。


「なぜなら彼らは悪しき理由でその神を召喚しようとしているからですわ。いくら偉大な神でも邪まな心を持つ者の前では十全の力を使えませんわ」


「ですが、動機が不純でも神は至聖の存在かもしれません!」


「もし邪まな心を持つ者に本心から協力したとしたら、そもそもつまらぬ邪神ということになりますわよ。邪神なら余裕で勝てますわ。そして至聖の存在ならわたくしたちを討ち果たすことなどいたしません。証明完了ですわ」


 本当に証明できてるのか謎だが、まあ、勝てるんだろう。

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