第43話 王国の悪巧み
思ったよりも話が早く終わったので拍子抜けした。
仕事終えた感もない。
「これで平和になるかのう」
マルファは元魔王らしくないことを言った。
今は念仏の力で平和主義者になっている。
「それが一番うれしいんだけど、あの雰囲気だと難しいんじゃないかな」
俺は基本的に悲観的だ。
ポジティブに考えてあとで裏切られるのが嫌だというのもある。
「じゃが、我が愚弟の魔王軍は正直なところ、どうとでもなるぞ。四天王が全滅してから、あいつは不都合なことに目をふさいでおる。あれから何のちょっかいもかけてきておらんのがその証拠じゃ」
たしかに魔王軍側はとくに問題はない。
でも、王国のほうはそうはいかないだろう。
「どんなに力を見せつけてもな、状況を認められない奴らはいるんだよ」
「わらわは早く平和になって、ゴーウェンと楽しくいちゃいちゃ暮らしたいぞ」
またマルファが抱きついてきた。
俺はやさしくマルファの頭を撫でる。
◇ ◇ ◇
★王城にて
筆頭魔導士アライルは王のマリウス5世と秘密の談義を行った。
とても他人の耳に入れられる内容のことではなかったのだ。
「にわかには信じられんが、筆頭魔導士のおぬしが洗脳の魔法にかかったとも思えんな……」
「私は見聞きしたことを、そのままお伝えしただけです。価値判断も意見もまだ加えておりません」
「うむ……それでアライルよ、お前はどう考える……?」
「連中に勝つことははっきり言って不可能です。お話ししましたとおり、奴らの中には魔王マルファと我らを苦しめた将軍ナリアルまでいました」
その時点で地獄に地獄を重ねたような状態である。
「ほかの者の能力は確認していませんが、メントが一撃でやられたのも故のないことではないかと……。ゴーウェンという男からして、メントよりも能力的に上でした……」
「だが、元魔王を含む連中に頭を下げるのはあまりにも屈辱じゃ……。後世の歴史書に魔王に屈服した王と書かれるに決まっておる……」
相手はただの冒険者ではない。
魔王軍の主力が含まれている者たちなのだ。
「そもそも、魔王軍と和平を結んだとしてじゃ、元魔王に将軍までおるのだ、向こうに都合のいい条件をつけられるであろう……。そもそもそのゴーウェンとやらも中立の立場かすら怪しい」
アライルとしても、王国が始末しそこなったのがゴーウェンなので、とても信用などする気はなかった。まあ、自業自得なのだが。
「それで、まだ私の意見を言っていませんでしたね」
アライルが口を開く。
「消すべきかと思います。でなければ王国が滅ぶ恐れすらありえます」
「うむ。じゃが、お前ですらかなわぬステータスだとしたら、どうやって倒す?」
「たしかに奴らは強大です。我が国のどんな兵士や魔導士を集めても万に一つも勝ち目はありません」
アライルは断言した。
「では、勝つことなど不可能ではないか……。ああ、こんなことなら勇者になる気のない者もとことん優遇しておくのじゃったわ……。まさか始末できなかった者の中にこんな化け物がおるとは思えんかった……」
「いえ、まだ策はございます」
アライルはにやりと笑う。
「たしかに我が国の人間では勝てません。しかし、我が国にはまだ素晴らしき力がございます」
「それは、なんじゃ?」
王も身を乗り出す。
「それは王国の守護神です」
まさに最後の手段。
「この城の地下には建国以来信仰されてきた守護神ライセーンが眠ってございます。これはたんなる神話ではございません。私と弟子たちの魔法を重ねれば、復活は可能です!」
そのあと、アライルは復活の儀式を逐一説明していた。
だが、それを盗み聞きしていた者がいたのだ。
王女カタリナだった。
いくら城の奥まったところで人払いをして話をしたとしても、王族となればどこにでも入っていける。
それに王も自分の娘がそんなことをしているとは夢にも思っていない。
王国の暗部についてカタリナは何も聞かされずに育ってきた。
それでも城で暮らしていれば、疑問に思うこともどうしても出てくる。
一年前、カタリナは個人的に密偵を雇って調査を行い、勇者制度の闇などを知ることになった。
「これでは、どちらが魔王軍かわかりません……」
カタリナは密談中の扉の前で嘆息した。
元はといえば、召喚した不要な人間を始末しようとしたのがすべての種だ。つまり、これは王国側の報いなのだ。そうカタリナは考えた。
正義ですらない王国は必ず滅びる。
王族として、これは糾さなければならない。
いや、それ以前にこれで冒険者たちを殺そうとするなら、それはモンスターの所業ではないか。
カタリナは城を脱出する計画を立てることにした。
「冒険者の方たちに知らせなければなりません……」




