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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第41話 剣士瞬殺

今回あたりから微妙に新章ですかね。

「真剣でか。要望には応えてもよいが、死の危険もあることは心得ておられような」


 よし、乗ってきたとメントは思う。


「それはもちろん。とはいえ、殺し合いが目的ではありません。あくまでも本物の剣でないと感覚がつかめないがゆえ」


「ならば、かまわんぞ。みんな、少し場所を空けてくれ」


 よし、適当に手合わせして、こけて、負けを認めでもすればいいだろう。


 そのあと、心臓を一突きにしてやる。


「では、参るぞ!」


 インドラが剣を振り下ろした。


「はぁっ!!!!!!!!」


 メントが剣で防ごうとするが――


 その剣が折れて吹き飛んだ。


 もっとも、その時点で勝負はついていた。


 インドラに斬りかかられた時点で、とてつもない恐怖を感じたメントは失神していたのだ。


 真剣と言われた手前、インドラもあまり手加減するのも失礼と思い、一撃で殺さない程度に勝負をつけにいったのだ。


 気を失う瞬間、メントは悪魔にでも咽元のどもとを食いちぎられたような錯覚を体験した。


 正確には悪魔ではなく、神格であったが。


 メントは頭から倒れて、そのまま失禁した。

 顔は半笑いだったという。


 すぐに周囲の塾生から「インドラ様すごい!」と声が上がる。

 もはや、勝負としてすら成立しないほどの実力差である。


「ううむ、気絶させてしまったな……。誰か拭くものを持ってきてくれ。あと、名を名乗られなかったが、どこかに身元のわかるものはないか」


 結果、関所の通行許可証が出てきて、思いきりメントの名前も知れてしまった。


 娯楽の少ない町なので、夜には我が町の剣の先生が王都最強と言われた剣士を一撃で倒したという噂が広まっていた。


 こういう噂はだいたい脚色がされるものだが、今回はありのままの事実だった。


 メントは王都に戻るのも恥ずかしく、そのままどこかに逃亡した。

 剣士の地位を守れても、死ぬまで失禁剣士と言われるはずなので、やむをえないことだった。


◇ ◇ ◇


「あのメントが一撃で敗れたと……」


 連絡を受けた王や周囲の警護兵たちは唖然とした。


「それはその男が卑怯なことでもやったのではないのか……?」


 報告する側も困惑した。


「いえ、それが道場には目撃者も複数おりまして……いきなり手合わせを願ったメント殿が一撃を受けて、即座に失神したということです……。メント殿が事前にその剣士と手筈を整える理由もありませんので事実かと……」


 総合的なステータスではより強力な勇者などもいたが、王国出身の人間としてはメントは最強の剣士のはずだった。


 それが大恥をかいて敗北させられたので、王城はお通夜ムードである。


「ま、まあ……ここはよいように考えようではないか……。メントを一撃で倒すような剣士ならば間違いなく魔王軍相手に活躍できるだろう。その剣士を含むパーティーに王都に来るよう命じよう」


 その招集の命令は森の屋敷にまで伝えられた。


◇ ◇ ◇


「やっぱり、来たか……」


 俺はその赤紙を見て、すごく嫌そうな顔をした。


 インドラの話はもちろん聞いている。

 で、王都の有名人が完敗したなら、まあ、こういうことになるだろう。


「軽率な行動であった。面目ない」


 インドラが頭を下げている。

 いや、インドラの責任はまったくないからいいんだけど。


「行かないという選択肢はあるわよ。だって、王都最強でそんなザコなんでしょ。じゃあ、強制的に連れていける奴なんていないわけだし」


 シュリはいつものように言いたいことをはっきりと言う。


「まあ、そうなんだけどな。全然いい思い出もない場所だし、けど、一方でそろそろ顔を出しておこうかって気もしてたんだ」


「犠牲者の多い勇者召喚をやめさせるんですわね?」


 ヴィナーヤカはすべてわかっているらしい。


「うん。今のシステムって犠牲者が出すぎるだろ。しかも本人の同意もなしに連れてきてるわけで、人さらいそのものだし」


「しかし、そのまま突っこんでもそんなことを聞いてもらえるとも思えんがの。下手をすれば侵略者だと思われる気もするぞ」


 マルファの言葉も一理ある。


「だいたい王城にいくらでも罠だって用意できるじゃろうが。わらわの住んでおった魔王城は少なくとも罠だらけであったぞ。招いて殺すというのも基本的な戦術なのじゃ」


 たしかに得体の知れない奴だから消そうとされるリスクもある。


 それに俺自体が死んでるはずの存在なのだ。口封じを狙ってくるかもしれない。

 一対一ではそうそう負けないLvのはずだが、事前に城にいくつも結界のようなものが仕掛けてないとも限らない。


「じゃあさ、すぐには出向かなくてさ、王都で信頼を受けてる人間にメッセンジャー役をさせたらいいんじゃないの?」


 ぽんとシュリが手を叩く。


「その人が言ったらみんな従う、そんな人はいないの? そこを懐柔するだけならなんとでもなるでしょ」


「言いたいことはわかるんだけど、王都にいい人脈なんて――あ、そうか」


 いい人脈でなくてもいいんだ。


「顔の名前の一致する大物ならいる」


 俺は王都に向けて手紙を書いた。


 筆頭魔導士アライルがこの森に来い。

 そしたら交渉に応じてやる。

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