第40話 王国最強剣士の派遣
昨日は別の連載作品を間違ってアップしてご迷惑おかけしました……。
いい評判というのは高まっていくもので――
ゴーウェン一行は近くの町からもそれなりに歓迎されていた。
力を見せつける気がなくても、神格のスペックは破格なので、すごい人たちの集まりだということはわかってしまう。
そして、それが多少の問題を起こしてしまうこともあった。
「サリアラントの町に勇者が現れただと?」
ドルディアナ王国の王、マリウス5世の耳にもその情報は届いた。
本来なら戦略的拠点でもない小さな町の情勢など、どうでもいいことで、王都まで伝えられるようなことではなかった。
しかし、その時の王都は吉報に飢えていたのだ。
一度はネイトレット砦から魔王軍が撤退し、情勢もいい方向に進んだかと思われたのだが――
結局、そのあと、魔王軍は軍隊を繰り出してきた。
しかも以前よりもさらに攻勢を強めてきたぐらいである。
実は魔王が代替わりしたせいなのだが、王国側はまだその情報をつかんでいない。
そんなわけで王国は砦を死守するのがやっとで、毎日のようにそれなりに名のある勇者が戦死した報が届くような有様だったのだ。
そのため、王の機嫌をとるためにも重要度の低い町の話までもが伝えられたというわけだ。
「なんでも、10人ほどのパーティで森に住み、時折町に顔を出すそうですが、剣技を教えている者などLv50はあるのではないかというほどの技量だとか」
インドラのことが話題になっていた。
「田舎者が針小棒大に言い立てておるだけではないのか? Lv50に達している者など王都にすら一人もおらんぞ」
王都の最強の騎士でもLv43である。
なお、そのステータスは、
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メント
Lv43
職 業:剣士
体 力: 805
魔 力: 309
攻撃力: 587
防御力: 567
素早さ: 603
知 力: 276
技 能:鎧斬り・鎧破り・速度倍加
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というもので、ゴーウェンの近いLvだった頃と比べても大きく劣っていた。
「その可能性も高いですが、仮にLv30前後としましても、魔王軍と立ち向かう戦力にはなるかと」
「ふむ、それもそうじゃの」
王はナマズのように伸びているヒゲをしごきながら言った。
「わかった。王都最強の剣士メントを派遣しよう」
そして、数日後、剣士メントはサリアラントの町に到着した。
はっきり言って王都筆頭クラスの剣士がやる仕事ではないのだが、いい人材があれば猫でもほしいような状況だったので、彼が来るしかなかったのだ。
ちょうどネイトレット砦に詰める期間が終わったところで王都で休息していたのだ。
「まあ、これも休暇旅行とでも考えるか」
メントが酒場で話を聞くと、インドラという剣士が名を馳せているということがすぐにわかった。
「そのインドラという男と手合わせをすれば、すべて明らかになるな」
言うまでもなくメントに負ける気持ちなどない。
鷹揚な態度で道場のほうに寄ったのだが――
メントは道場に入る前から寒気がした。
彼とて人間としては立派な剣士である。
それゆえにサーチ・アビリティがなくても相手の技量というものは漠然と察知できる。
化け物のような者がいる。
その直感は道場に入ると、より確かなものになった。
そのインドラという教師役の男、確実にLv50以上、いや、下手をするとLv60はあるかもしれない。
本当はLv60などという次元なわけがないのだが――
メントは神格の領域などわからない。
メントは本格的な危機感を抱いた。
もし、こんな奴が王都に迎えられたら、自分の地位は確実に下落する。
それは名声を失うことと等しいし、技量というのは相手と比較されるものである。
つまり口さがない連中からバカにされる恐れすらありうるのだ。
なんとしても、この男を亡き者にしなければならない。
しかし、正面から戦っても勝てないのはわかる。
隙を突くしかあるまい。
「インドラ殿、そなたとお手合わせがしたい!」
メントが道場の中で叫ぶ。練習している生徒たちの手が止まる。
「私は旅の剣士だ。ぜひ一度対戦相手になっていただきたい。できれば模造の剣ではなく、真剣でお願いしたい」
名前は明かさない。絶対に明かせるわけがない。
これからまず手合わせをする。
ほどよいところで降参をする。
そこで相手が後ろを向いたところを背後から刺殺する。
あとはすぐに馬で逃げ帰ればいい。
追手が来るかもしれないが、こんな恐ろしい次元の追手はいないだろうから、返り討ちにすれば問題ない。
とにかく、この男を亡き者にすればいいのだ。
メントは内心で、にやりとほくそ笑んだ。
王国最強の剣士は自分だ。
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