第38話 ドラゴン失墜
ドラゴンのガルドレントは威勢よく、空を飛んでいる。
「そう広くもない森だ。すべて焼き払ってやろう」
久しぶりに力を行使できるので、ガルドレントは張り切っていた。
もともと、ガルドレントは人間世界の山に住んでいたが、そこをベルエールにスカウトされた。ベルエールの側近の一人である。
ベルエールはマルファの政権ではそう活躍をしなかったし、マルファからしても家臣(弟だが扱いは家臣となる)の家臣ということで、直接の戦闘命令もほとんど受けることがなく、くすぶっていたのだ。
今こそ、ドラゴンの力をおおいに見せつけてやる時だ。
四天王ということにはなっているが、所詮自分以外の連中は小物だ。
あくまで四天王を代表するのは自分だ。
そう信じてガルドレントは目的地を目指す。
そんなガルドレントに声がかかる。
「悪しき者よ。これ以上森に近づいてはならない」
ガルドレントはいぶかしんだ。
なにせ上空なのだ。
いったい、誰が声をかけている?
おそらく、マルファ側の魔法か何かで警告しているんだろう。
とはいえ、連中が自分を止めることなどできるわけもない。
一応脅しておくかという程度のことだろう。
そう判断してガルドレントはそのまま空を進んだ。
「雷を放つぞ」
再び、声がする。
その声にガルドレントは哄笑した。
「どうやって雷を落とすのだ? 俺は雲の上を飛んでおるのだぞ?」
落雷はたしかに巨体のドラゴンにとってもあまり楽しくないものだ。
だが、そんなことはドラゴンにとって常識。
だから雲の上を進むことでそのリスクをないものにしている。
「雷を落とすとは言っていない。放つと言っているのだ」
「くどい! 警告する相手を間違えたな!」
――直後。
巨大な雷が雲を突き破って下から現れた。
ガルドレントは雷に射抜かれて、即死した。
遺体は山の中腹に墜落した。
「あまり殺生もしたくないのだが、やむをえんな」
空に一人、騎士姿の若い男が立っている、いや、浮いている。
帝釈天インドラだった。
◇ ◇ ◇
★その少し前。
「ナウマク・サマンダボダナン・インダラヤ・ソワカ!」
帝釈天インドラが顔を出す。
細身の美形の剣士姿の男だ。
「いったい、我に何の用か?」
「インドラはもともと雷神だよな。ドラゴンを雷で撃ち落してほしいんだけど」
「承知」
すごくあっさりOKをもらえた。
「もう、四天王シフトは万全じゃないかな」
「うむ。問題ないと思うのじゃ。さすが我が夫じゃ!」
またマルファが抱きついてきたので、俺も抱えてやる。
これで妻の命を守れるんだから、俺もちょっと破目をはずすか。
頬に軽くキスをした。本当に軽くだ。
「はうっ!」
だが、マルファには軽くはなかったらしい。
俺から飛びのく。
その顔はイチゴみたいに赤くなっている。
「ゴーウェンよ、こういうことは人前でするな! わらわと二人きりの時だけにせよ!」
「悪い。デリカシーがなかったかな」
マルファはこんなところにはいられないと会議スペースから走って出ていこうとしたが、途中で首だけこちらに向けて――
「じゃが、あんなふうにキスはしてほしいのじゃ……」
なんだよ、けっこううれしいんじゃないか。
「わかった。また二人の時な」
そのままマルファは廊下を駆けていった。
「見せつけてくれるわね」
シュリが気難しい顔で言った。
「うん、ちょっとだけ反省してる」
「いっそ、シュリさんにも同じことをしてあげたらよいのではありません?」
ヴィナーヤカがまたふざける。
「そんなの必要ありません! 本当にそうですからね!」
シュリの猛抗議だ。実際、ふざけてキスしたら殺されかねん。
そういうステータスだからな、召喚されてきた存在は。
「それにしても……」
ナリアルは部屋に出てきた4人の神格を見ている。
地蔵菩薩クシティ。
弁才天サラスヴァティー。
水天ヴァルナ。
帝釈天インドラ。
「ゴーウェンよ、お前は召喚士として本当の一流だな……」
そりゃ、そういう感想も抱かれるか。
マントラが偶然チートな魔法だったおかげだ。
「召喚だけは得意なんだ。人間一つぐらいとりえがほしいだろ」
――それから後、四天王の襲来が近いということで4人の神格はそれぞれ移動していった。
そして、どうやら俺が召喚した扱いの神格が活躍したのか、またLvが上がった。
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ゴーウェン
Lv57
職 業:召喚士・治癒士・調理師
体 力:1134
魔 力:1251
攻撃力: 835
防御力: 808
素早さ: 961
知 力:1125
技 能:サーチ・アビリティ サーチ・アンデッド センス・エヴィル ヘルフレイム ライトニング・ボルト メテオ・レイン サーチ・イーヴル レヴィテーション テレポーテーション ディナイアル・マジック リーディング・マインド
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「ドラゴンと戦ったら勝てるかな、シュリ?」
「それって召喚とかナシでってことよね。う~ん、ドラゴンなら空飛ぶからどっちみちまともな一対一の対決にならないからね……」
それもそうか。
とにかく、強くなれてることはうれしい。
嫁が恥ずかしくない人間にまではならないとな。
ほとんど出オチ感があるのですが、新作として、「異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生し、お好み焼き布教!~」という話をはじめました。よろしければ読んでやってください。 http://ncode.syosetu.com/n1504de/




