第35話 地母神の力
今回から敵の四天王をどんどん倒していくターンになります!
★ハイドラ、ボードリーの場合
ハイドラのボードリーが通った先は畑も建造物もすべてが平らにされていた。
その規模は巨大な城がそのまま移動しているようなものである。
ちょうど通路の途中に村があったため、一つの村が壊滅したぐらいである。
ただ、不幸中の幸いだったのはボードリーが村人を殺し尽くすほど暇ではなかったことだ。
ボードリーはオルドアの森を目指している。ほかのことはどうでもいい。
合計11の蛇の頭をボードリーは持っているが、その意見も見事に一致していた。
途中、合計15人からなる勇者部隊が討伐を試みたが、尻尾だけで叩きつぶした。
こちらは村の人間と違って、徹底して殺戮した。
理由は単純で、向こうもこちらを殺そうとしていたからだ。
目には目をというのがボードリーの価値観なのである。
予定通り、ポードリーは森の入口に着いた。
四天王は東西南北から森に進撃し、マルファ一行を滅ぼすつもりだった。
しかし、ボードリーは森の入口で一人の少女が立っているのを見かけた。
年の頃は12、3歳。
ようやく大人っぽさが見えはじめたという年だ。
ただ、その年の割にはやけに胸が大きい。
垂れ下がりそうになる大きな胸を布で縛りつけるような服を着ている。
緑の髪は地面に届きそうなほどに長い。
表情は憂鬱そうだが、それがボードリーの出現を知っているように見えた。
ボードリーはその様子からただの人間ではないと見抜いた。
「お前はこの森の精霊か何かだな。発している空気が人間と違って臭くない」
ボードリーはいくつもあるハイドラの首のうち、一つが代表してしゃべる。
「それに近い存在です。私の名はクシティ。あなたがこの森を破壊しようとしているのがわかるので、悲しんでいるのです」
「どけ、女。俺たちが欲している首はお前ではない」
「大地を荒らすような方を通すわけにはいきません。お引き取りください」
交渉は案の定決裂した。
「精霊とはいえ、止められはせんぞ」
「戦うというなら、消えていただかないといけません」
「ならば、このまま消し去るのみよ!」
ボードリーは11ある顔から一斉に炎を吐いた。
一気にこの精霊のような女を焼き払ってしまえ。
しかし、そうはいかなかった。
炎はどこからか出てきた土壁にさえぎられる。
なんと少女の前の地面が隆起して、炎を止めていたのだ。
「さようなら」
ぼそりと幸薄そうな顔で少女は囁いた。
ボードリーは異常に気づく。
自分の体を取りこもうとするかのように土がへばりつき、飲みこんでくる。
「なっ! どんな魔法だ! 俺はそこいらのモンスターではないぞ!」
自分の体が飲みこまれるなど想像もつかなかった。
だが、ボードリーの巨体は結局、地面の中に沈んで見えなくなってしまった。
「終わりましたね。仏道を守護する地竜にでもなってください」
少女は静かに手を合わせる。
四天王の一人、ボードリー敗北。
◇ ◇ ◇
★その少し前。
俺がマントラを唱えると、目の前に女の子が出現した。
「はじめまして、地蔵菩薩クシティです」
丁寧におじぎをされて、俺も慌てておじぎをする。
神格だから100パーセント、向こうのほうが偉い。
「でも、正直意外だったな。お地蔵さんって男のイメージが強いから」
「私のインドでの名前は正式にはクシティ・ガルバ。クシティは大地、ガルバは子供を意味します」
「つまり、地母神ガイアみたいな存在ってわけよ。大地の神は女性のイメージが強いでしょ」
別に本人に聞くからいいのにシュリが言った。
こいつ、基本的に教えたがりなんだよな。
「そ、そうか、たしかに女性的というか……」
ついつい、目が胸のほうに行ってしまった。
ぎりぎり中学生ぐらいの身長なのに、胸だけが超巨乳だった。
いわゆるロリ巨乳というやつだろうか。
「あっ、見ないでください……!」
恥ずかしそうにクシティが胸のあたりを手で隠した。
悪いことをしたが、意識するなというのが無理なぐらいの胸なのだ。
「その見た目でその胸とはどういうことじゃ! 卑怯じゃぞ!」
さらに子供、というか幼女といったほうがいい見た目のマルファがキレていた。
「布で押しつけて大きさを誤魔化そうとしておるが、実際はどれぐらいの大きさなのじゃ? 見せてみよ!」
マルファが突っこんでいく。
「ダメですう! 触らないでくださいー!」
神格の胸を触りにいく魔王って、すごい絵だな……。
「まあ、ちょっと頼りなく見えるけれど地蔵のクシティは大地を扱う神格だから、ハイドラを任せようと思う」
本人に言っても聞く余裕なさそうなので、シュリのほうに言った。
「うん、それでいいんじゃない?」




