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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第27話 嫁も俺も働く気がない

今回から新章です!

「おい、こすり方がきつい。もう少しやさしくやるのじゃ」

「へいへい……」


 俺は風呂場で嫁(になった魔王マルファ)の背中を洗っている。

 石鹸はこの世界でもある。何かの植物性の脂だと思うが、一応泡立ちはする。


「ちんたらやっておるのう。早く湯船に入らんと風邪をひいてしまうぞ」


「お前がやさしくやれって言ったんだろ……。あと、まだ頭も洗ってないからな」


「えっ、やっぱり頭も泡を立てるのか……?」


「お前、本当に泡嫌いだな」


 マルファは泡が目に入るのが嫌らしく、自分の城ではお湯だけで洗っていたらしい。


 まあ、シャンプーなくても手のマッサージとお湯だけで頭皮の汚れって7割はとれるらしいから、しっかり手で洗えばいいんだけどね。


 俺は風呂場の隅から秘密兵器を取り出す。

 金属製の円盤だ。ちょうど頭にはまるサイズになっている。

 つまりシャンプーハットである。


「ほら、これをかぶれ。これで、目に何も入らんだろ」

「おお! さすが我が夫じゃ! 智恵がまわるな!」

「智恵って次元じゃないけどな。毎回、頭洗うのに嫌な思いをさせるのもアレだし」


 石鹸を上手く泡立ててから、マルファの頭に移す。

「ふふ~ん、ふ~ん、国家安泰~♪ 世界平和~♪」


 マルファは頭を洗われること自体は好きらしく、変な歌を歌っている。

 この歌も昔は国家滅亡、世界征服だったらしいが、例のナムアミダブツのせいでかなり優しい歌詞に変更された。


 頭にお湯をかける。

「お~! 目に泡が入らんぞ! すごい!」


「どうして魔王が泡怖がるのか謎だけど」

「怖いものは怖いのじゃ! あと、泳げぬので水も怖い」

「けっこういろいろ怖いんだな……」


 体も頭も洗い終わったら、マルファが湯船に飛びこんだ。

「お前、静かに入れよ」

「魔王は豪快に入るものなのじゃ」

 一理あるかもしれん。


 さて、俺がこうやってマルファと一緒に風呂に入って十日になる。

 断っておくが、別にロリコンではない。


 マルファは魔王なので一人で体も洗わない。これまでお付きの者に洗わせていたのだ。

 だが、これからは夫が洗えと言ってきた。

 なので、なかば子守り感覚で一緒に入浴しているというわけだ。


 ちなみにお風呂のお湯はヘルフレイムの魔法でためた水を沸かしている。

 これまでもそうしてきた。


 俺も体を洗ったら、湯船につかる。

 林業の業者は仕事柄、土で汚れることも多いからか、風呂は広くてなかなか快適だ。


「うむ、今日もいい湯であるな!」

「そうだな。いろんなものに感謝だ」


 俺とマルファはどちらも湯船の前を向きながら入っている。


 いくら扱いとして夫になってるとはいえ、ロリコンではないとはいえ、幼女の裸を見るのは多分マナー違反だろう。とくに湯気で隠れるとかもないだろうし。


「のう、ゴーウェンよ、こういうのんびりした暮らしもよいものであるな。魔王としてばりばり働いていた時代も悪くはなかったが、これはこれでよい」


 マルファはとことんリラックスした顔をしている。魔王らしさはどこにもない。


「そうだな。俺もこっちの世界に来ていろいろあったから、ほっとしてる」


◇ ◇ ◇


 ――のんびりしすぎよ、と言われた。

 風呂上がり、そう言ってきたのはシュリだった。

「別に平和なんだからいいじゃん」


「あのね、ゴーウェン、今、何をして暮らしてる?」

「のんびり」

「つまり、働いてないってことよね」

 まあ、そうなることになるな。


「次、奥さんのマルファ、あなたも今、魔王としての職務をしてないように見えるんだけど。まあ、魔王みたいに人間を殺戮されても困るけどさ」


「現在、休業中じゃ。魔王っぽくなくなってしもうたし、要検討中じゃ」

「はい、つまり、夫婦揃って無職! 収入手段もなし! ちょっと、これは問題なんじゃない!?」


 なるほど。そういうことか。


「お金の運用だったら、わたくしがやりますから心配いりませんわよ」

「ほら、ヴィナーヤカもああ言ってるし」

「ダメ! 少しは労働しなさい! ぐうたらするのはダメ!」


「ゴーウェンよ、あの使用人、うるさいぞ」

 マルファがむすっとした顔でシュリを指差す。

「私は使用人じゃないから! ほら、ちゃんと働きなさい! 二人で労働計画を立てること!」


 しょうがないので俺とマルファは夫婦の部屋で今後の計画を立てることになった。

 とりあえず、ベッドに並んで腰かける。


「シュリとしては別に働いてほしいわけじゃないんだ。これまでだって労働らしい労働はしてなかったし、何かモチベーションのある生き方をしろってことだ」


「まあ、心配せんでもどうせひと波乱起こるじゃろ。魔王であるわらわがここにおるんじゃからの」


 まあ、そうだよな。

 魔王軍に対しては各自で待機するよう命令が下っているらしいが、そんな素直にみんな待っているとも思えない。


「でも、トラブルが起こるのを待つのもなんだし、一回マルファの城にでも行ってみるか。そこで結婚したことを報告したら、反乱分子はチャンスと思って飛び出てくるだろ」


 にやにやとマルファが笑った。

 やっぱり、まだ血の気は多いな。


「それは悪くないのう。わらわも暴れたいと思うておったのじゃ。あと――」

 マルファが俺のほうに抱きついてきた。


「新婚旅行という言葉が胸が躍るぞ!」

「ものは言いようだな……。ある意味、帰省するだけな気が……」

「いいや、新婚旅行じゃ!」


 ぎゅうっと抱きついてくるマルファの頭を撫でてやる。

 今のところ、最大限の夫婦のスキンシップだ。


「もっと、もっと、ゴーウェンよ、撫でるのじゃ」

 言われたように撫でると、マルファが幸せな猫のような声を漏らした。

「はう~、気持ちいいのじゃ~♪」


 その夜もマルファに抱きつかれながら眠った。

 明日になったら、魔物の世界に旅立つ準備をしはじめるかな。

 まあ、マントラがあれば殺されることもないだろ。

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