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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第23話 魔王との戦い1

すみません! 更新遅れました! 明日も出かけるかもしれないので、少し前後する可能性がありますが、必ず更新します。

「なんで、幼女なの?」


 シンプルにして、なかなか核心に迫ったことを聞いたつもりだった。


「なんじゃ? わらわが子供だといかんのか?」


「いや、もっと、こう、威厳のある奴を想像してたから。一言で言うとイメージと違う」


 王国って幼女に苦戦してたのか。

 もともと低い王国の株がさらにストップ安だぞ。


「そうですわね。こんな世間知らずな貴族令嬢みたいのが来るとは思ってませんでしたわ」


 ヴィナーヤカもどちらかというとイケメンを期待してたらしく、がっかりしていた。


「ふざけるな! 勝手に期待して勝手にがっかりするな! なんか、わらわまで罪悪感を覚えてしまいそうになるではないか!」


 思ったよりいい人っぽいぞ。


「さてと、わらわがなんでここまで来たかは、みなまで言わんでもわかるな?」


「お菓子食べに来た」


「それはなりゆきじゃ!」


 わかっているが、ちゃんとツッコミ入るので、ついついこっちも悪ふざけがしたくなってくる。


「お前がナリアルを倒したというゴーウェンであるな」


 幼女が俺を指差す。


「うん、そうだけど」


「そして、その巨乳が要塞を壊滅させたヴィナーヤカじゃな」


 たしかにヴィナーヤカは巨乳なので間違ったことは言ってない。

 ゾウの神格でもあったことと関係性はあるんだろうか。


「はい、そうですわよ。壁ドンをいたしましたわ」


 まだ壁ドンという表現で押し通すらしい。


「そこの獣人は……まあ、獣人じゃな」


「シュリよ! ちゃんと名前あるんだから!」


 扱いが雑なのでシュリがキレた。


「その三人の力、なんとも途方もないことはわらわもナリアルから話を聞いて理解しておる。それと同時にお前らが何者かもわかったぞ」


 ドヤ顔で腕組みする幼女。


 え、本当に俺たちの正体がわかるのか?


「そのゴーウェンという男は腕は立つそうじゃが、まだ人間が到達しうる範囲の力じゃ。一方で、ヴィナーヤカのやったことは人間を超えておる。ここから導きだせる答えは一つ!」


 魔王マルファの声が大きくなる。


「ずばり、ゴーウェンはヴィナーヤカ、あとシュリという神を召喚したのじゃ! ゴーウェン、お前は凄腕の召喚士じゃ!」


「せ、正解だ……」


 まさか、ずばり当てられるとは思わなかった。


 推理だけでこの答えに至るって無茶苦茶賢くないか、こいつ。


「やはりな。神を召喚したのだから、それは強いはずじゃ。ナリアルが恐れるのも無理からぬことであるな」


 魔王マルファはくっくっくと楽しそうに笑っている。

 でも――


「わかったから何だって言うんだ? お前は神に勝てるだけの力があるのかよ」


 タネがわかったら、ヴィナーヤカとシュリの力が衰えるわけでもなんでもない。

 むしろ、圧倒的な力の差を再認識するだけだ。


「ふふん。無論、その方法はあるわ。さあ、あの槍を持ってまいれ」


 配下の一人が巨大な槍をマルファに渡す。


 持ち手の部分に骨があしらわれた、全体的におどろおどろしい槍だ。

 その槍を見ているだけで、周囲の空気が不吉なものに変わった気がするほど。


「これは我々の祖先が呼び出した邪神たちが、ドルディアナ王国側の神を倒すために作り出した槍よ。つまり、神を殺すために存在する槍じゃ」


 そうか。この世界の神は実在すらあいまいなものでも何でもなく、確かに実在するのだ。


 だとしたら、そのための対策だってないことはないわけか。


 せめて、サーチ・アビリティでマルファのデータを確認しておくか。

 だが――反応はない。

 そんなもの無駄だとばかりにマルファがにやりと笑う。


「魔法を封じるアイテムをわらわは常に身につけておる。わらわを狙う者は魔族の中にもたくさんおるからのう。王位継承戦争を争った身よ。すべての魔族がわらわに忠誠を誓っておるとまでは思っておらんよ」


 マルファが左手にはまった指輪を見せつけてくる。

 もしかすると世界一恐ろしい幼女かもしれない。


「さあ、お前たちに呪いをかけてやるぞ!」


 ぶつぶつとマルファはまったく意味のわからない呪文としか言いようのない何かをつぶやきはじめる。


「おそらく魔族の古代語ですわね……。しかも神を呪詛するためだけに特化したものだと思いますわ」


 ヴィナーヤカが仮説を述べる。

 おおかた、それで正解なんだろう。


「さあ、まずはお前たちの体を押し留めておこうかの。逃げられてしもうては追うのが面倒じゃからなっ!」


 マルファは槍を地面に突き立てた。

 まるで、それが依り代であるかというように。


 その槍から煙のようなものが広がっていき、やがて、大気と混ざって消えた。


「この空間におる神は金縛りに遭ったように動けぬようになる。それだけではないぞ。あらゆる力を一時的に失ってしまうのじゃ!」


 シュリの表情も固い。

 これまでと空気が明らかに違う。

 おい、これはマジなやつじゃないのか……?


 そして槍をシュリに向ける魔王。

「まずはお前からじゃ。ヴィナーヤカよりはお前のほうが弱いらしいから、先に消しておく」


「直接信仰される立場じゃないけど、侮辱されるのは少し腹が立つわね……」

 身じろぎしないまま、顔をゆがめるシュリ。


 おい、俺が召喚した神格が死んだらどうなるんだ?

 たんなる魔法の一つだったというみたいに何度でも呼び出せるのか?

 それとも、もう存在自体が消えてしまうのか?


 後者の可能性が否定できない以上、このままにしておけない。


「さあ、死ぬがよ――あっ、なんじゃ、お前は?」


 シュリの前に俺は飛んで入る。

 丸腰ってわけじゃない。武器はちゃんとある。

 大量生産の安い剣でも、折れない限りはステータス補正でどうにかなるだろ。


「ちょっと、ゴーウェン! 危ないわよ!」

 危ないのはお前のほうだろ、シュリ!


「お前は俺が呼び出した存在だ。だったら、このまま見殺しになんてできないだろ!」

 あと、ステータスが違うといったって、俺も男だ。

 自分が呼んできた女が殺されそうになってるのを黙ってるっていうのはありえない。

 そういうのは仏教がどうとか以前に人間として終わっている。


「ゴーウェンさん、本当に死にますわよ!」

 ヴィナーヤカからも声がかかる。

 これ、本気で怒られてる声だ。


「神格のことはちゃんと神格でどうにかしますわ。ゴーウェンさんは、ここは無理をせずに待っていてくださいませ! はっきり言ってその魔王さんはまだあなたには荷が重すぎます!」


「気持ちはうれしいですけど、たまには俺もかっこいいことやらせてくださいよ」

 顔だけをヴィナーヤカのほうに向けて微笑む。

「これでも、俺も勇者として呼び出されたんですよ。王国からは認められてないみたいですけど」


「ほう、なかなか気概のある男ではないか」

 品定めするように、マルファが舐めるように見つめてくる。


「ナリアルの命を助けたともいうし、一度ぐらいは見逃してやってもよいぞ。むしろ、ゴーウェンとやら、わらわの幕下に加わらんか? お前ならば将軍の地位を約束してやろう」


「権勢なんて求めてねえよ! そんな気持ちがあったら、とっとと王都に戻って俺を勇者に加えろって言ってる!」

 俺はこの森でほどよくのんびりに暮らすのが性に合ってる。


「そうか、ではお前から殺すとしようか!」

 マルファが槍をかまえて突っこんできた。


 その背中には悪魔のような羽。

 そりゃ、魔族の、しかも魔王だからな。

 向こうも本気を出してきたってわけだ。


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