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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第18話 女騎士救出作戦2

すいません、更新が少し遅れました!

 俺は目でシュリに合図を送る。


(その鎖を引きちぎってくれ)


OKの合図を右手ですると、シュリは鎖に手をかける。


 まず、手をつないでいる鎖が切れる。


「あれ、鎖が切れて……?」


 ナリアルが手の違和感に気づいたらしい。


 それからすぐに足のほうの鎖もはずれる。


 普通の剣士なら、金属を紙の輪みたいに引きちぎることはできないだろうが、シュリのステータスなら別だ。ただの猫耳少女じゃない。


「なっ! 拘束がはずれただと……?」


 ドレイクは困惑しているらしい。

 そうそう、その顔が見たかったんだ。自分が正しいと信じこむ奴の驚愕の表情っていうのはいい。こちらの溜飲も下がる。


 それに自分が正しいという思い込みは仏教的にも一種の事実誤認であって、いただけない。


 正しいという前提では違う価値観と話し合いの余地もない。

 思考停止と言ってもいい。


 なので、相手の知らない世界を教えてやったこの行為も善行である。

 ちょっと強引かもしれないが……そういうことにしておく。


 さて、そろそろ姿を見せておかないと、ただの超常現象になっちゃうからな。


 マリキのマントラの効果をリセットする。

 解除する時は元に戻れと念じればいいだけだから楽だ。


 俺とシュリ、ヴィナーヤカの三人が顔を出す。


「俺の作戦で不幸になりかかってる奴がいるから救援に来た」


 あいさつもなしにドレイクのバディアに話しかける。

 まあ、こっちが誰かはすぐわかるだろう。


「俺たちが来たらあの将軍は解放してくれるってことでいいんだよな?」


「ど、どうやって、ここに入ってきた!? 人間がずかずか入ってこれるほどの隙間などこの要塞には……」


 ああ、まず、そこから聞くのか。

 こいつも、どこから説明を求めてもいいのかわからん状態なんだろうな。


「隙間はいくらでもありましたわよ。もう少し兵の練度をあげたほうがよろしいのではなくて?」


 くすくすとヴィナーヤカが微笑む。


「まさか、ナリアル……お前、こいつらの手引きを……」


 理解できないことがあれば、自分の想像できる範囲で理由を見つけ出そうとする。

 これは魔族といっても、人間とまったく同じだな。


 一方、ナリアルも現状の理解ができてないらしくて、ぽかんとしている。

 敵が助けに来たら、そりゃ、そうなるか。ウルトラマンがゼットンに負けそうになってる時にバルタン星人やメフィラス星人が救援に来るようなものだ。


 でも、敵だと思ってた奴が助けに来るって胸アツの展開じゃないか?


「きっちり拘束してたのはあなたでしょう? これでどうやって要塞に引き入れる手引きができますの?」


 バディアはぐうの音も出ない。

 うん、こうやってやりこめるために、わざわざ遠路はるばる自分の足で走ってやってきたんだ。


「こっちとしては将軍に戦争停戦の交渉窓口になってもらいたかったんだ。その将軍が処刑されるのは本意じゃない。だから、身を守りに来た。身勝手とは思うが、無事に彼女を魔王の元まで届けるよう約束してくれ」


「ふざけるな! 侵入者としてお前たちも処刑してやる!」


 今のところ、すべて考えていたとおりの反応だ。

 なんていうか、種族が違えど、とる行動はすべて同じだな。


「ゴーウェンさん、交渉決裂ということでよろしくて?」


 にやりと笑みをたたえて、ヴィナーヤカが聞いてくる。

 これ、なんか悪巧みしてるな。

 まあ、いいや、困るのは敵だし。


「宣戦布告されちゃったわけだし、好きなようにやってくれ」


「そうですわねぇ。何がいいかしら」


 頬に手を当てて、ヴィナーヤカは思案している。


「それじゃ、ドレイクさん、サーチ・アビリティを使えますかしら?」


「あ、ああ、その程度ならわけもないが、それがどうかしたか……?」


「ためしに、わたくしのステータスを見てみてはいかがです?」


 そういえば、俺もまだヴィナーヤカのステータスを見たことないな。

 出会った時にそういう空気じゃなかったので、タイミングを逸したというのもあるし、怖いからあまり数値化したくないというのもある。


 不審に思いながらも、バディアはサーチ・アビリティを詠唱した。

 どのみち、相手の能力を知るのは必要だと判断したのだろう。

 こっちは海とも山ともつかん連中だしな。


 数字はわからなかったが、表情がすべてを物語っていた。


「うあ、あぁ……なんだ、これは……あぁ、あああああああああ! ありえん!!! こんな人間がいるわけがあああああああ!」


 バディアが絶叫した。

 そう、本当に恐ろしいものに出会うと、そうでもして、精神の均衡を保つしかないんだ。黙っていると耐えられなくなってくるからな。


 けど、「こんな人間がいるわけが」っていうのは正解だ。

 人間じゃないからな。神様だからな。


「桁が……桁がおかしい……。こんなものが歩いていたら、世界の均衡はどうなる……?」

「それでナリアル将軍のお気持ちも少しはわかったんじゃなくて? わたくしがあなたたちの国に攻めこんだら、それは大変なことになるでしょうね」


 わかりやすい脅しだ。俺も逆の立場なら、こんな感じであわてふためくだろう。


「そ、そうか……これがお前たちの魔法だな……! ありえないステータスを見せて、勝ち目がないと思い込ませるということか……」


 ああ、そう認識したい気持ちはわかるが、ここは素直に負けを認めて、穏便にすませたほうがいいぞ……。


「ふ~ん、そうですか。じゃあ、幻覚ではないということを見せるしかないですわねえ」


 ヴィナーヤカはバディアの体をつかんだ。


 向こうも不用意につかまれたりはしたくなかっただろうが、かわす暇もなかったのだろう。


「ちょっと、外に出て、お見せしてまいりますわ」


 そう言うと、ヴィナーヤカはバディアを引っ張ったままジャンプすると、地下牢を突き破って、出ていった。


 きっと、なんらかの一大スペクタクルを見せるんだろうな。

 バディアにとっては悪夢でしかないだろうけど。

次回は日曜昼12時半頃を予定していますが、前後するかもしれないです。

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