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異世界魔王の耳に念仏唱えたら俺の嫁になった  作者: 森田季節


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第11話 将軍の側近全滅

更新遅くなってすみません! 今回から新展開です。

★魔王軍の陣営


 魔王軍では各方面ごとに将軍が任命されていた。


 その中でもドルディアナ王国の国土を主に侵略しているのは、ナリアルという女オーガの将軍である。


 彼女はドルディアナ王国の中でも最も深く暗い森と言われているサイナ樹海というところに自分の拠点を置いていた。

 ここから多方面に兵を展開し、侵略を続けていたのだ。


 すでに人間の住む都市を除けば、大陸の多くの土地にモンスターは土着しつつあった。かつては人間にとっての森の危険と言えば、せいぜいオオカミやクマ程度のものだったのが、今ではモンスターが第一に考えられている。


 しかし、そこにありえないような報告がナリアルのもとにやってくる。

 西部に位置するオルドアの森でモンスターの軍団が全滅したというのだ。


 大きな被害が出たというならわかる。人間側にだって軍事力はあるから掃討戦もできる。

 しかし、全滅などということが現実的に起こりうるだろうか?


「それは何かの間違いではないのか?」


 ナリアルは部下にすぐにそう尋ねた。


「超高位の破壊魔法で吹き飛ばすことは原理上はできる。しかし、それをこんなくだらない土地で使うわけがない」


 彼女は当然ながら、魔王軍と勇者とがどの土地で激戦になっているかということも知っている。


 地域によっては、ナリアル側が優勢で、勇者を名乗る冒険者たちを何人も葬っているという報告も受けている。無論、戦況は一進一退だから、勇者たちが盛り返すこともある。これは非常に長期的な争いなのだ。


 しかし、オルドアの森なんてところは、ほとんど無風状態に近い地域だった。


 王国側にとっても、そこを維持しなければならない理由などとくになさそうだ。


「まさか、派遣されている連中が反抗したか? しかし、それも考えづらいな」


 報告してきた部下も見当がつかないらしく、「わかりません……」と答えるよりなかった。


 ナリアルとしてはオルドアの森など二の次にしたいのだが、わからないままというのも気味が悪い。


「よし、私の腹心である者たちを派遣しよう」


 それで、ひとまず状況はわかるだろうし、同時に問題も解決するだろう。


◇ ◇ ◇


=====

ゴーウェン

Lv54

職 業:召喚士・治癒士・調理師

体 力:1084

魔 力:1191

攻撃力: 810

防御力: 782

素早さ: 931

知 力:1086

技 能:サーチ・アビリティ サーチ・アンデッド センス・エヴィル ヘルフレイム ライトニング・ボルト メテオ・レイン サーチ・イーヴル レヴィテーション テレポーテーション ディナイアル・マジック リーディング・マインド

=====


 朝、起きたらLvがなぜか2ほど上昇していた。


 ちなみにその夜もヴィナーヤカに抱きつかれていた。


 もう、これは必須のことらしい。ヴィナーヤカがいる限り、俺は抱き枕決定なんだな。


「なあ、ヴィナーヤカ。寝ている間に何かしたか?」


「えっちいことはしていませんわよ」


「いや、それも極めて重要な点なんだけど……そういうことじゃない」


 モンスターを倒さないとLvなんて上がりようがないんだけどな。


「なんか、経験値増えるようなことしたかな……」

「あら、わたくしといろんな経験積んでみます?」

 それ、絶対に性的な意味でだろ。

「遠慮しときます……」


 体を清浄に保つのもこの世界で生き残る秘訣だ。もし、穢れてマントラが使えなくなるとかなり絶望的な状況になる。


 ひとまず起きて、井戸水で顔を洗ったりしていると、シュリが帰ってきた。


 ちょっと服に返り血がついていて、怖い。


「お前、何をしてたんだよ……。人間襲ったりするなよ……」


「するわけないでしょ。私は由緒正しきマンジュシュリー様の眷属なのよ」


「いや、人さらいとか盗賊を見つけたら、処罰しそうだなって……」


 異世界で甘いことを言ってるかもしれないが、殺さないでいい人間を殺すのは何かが違うと思う。正当防衛で殺さないとこっちが危ないって場面なら、やむをえないが。

 これでも仏教徒なので。

 というかどんな宗教でも積極的に殺せなどとは教義に書かないだろう。


「明らかにモンスターだったから安心して。グリフォンと、巨大な一つ目の奴と、あと、沼に生息してるレイスみたいな奴」


「あれ、このへんのモンスターって全滅したんじゃないのか?」


「早朝の散歩してたら、魔王軍のナリアル将軍の使いだとかいう奴が三人ほどいて、いきなり襲いかかってきたから、返り討ちにしたの」


 ナリアルか。初めて聞く名前だ。そりゃ、魔王軍がわざわざ広報活動はしてないか。

 でも、この話には重要なポイントがある。


「魔王軍もしゃべれるような知能のある奴いるんだな。モンスターって聞くと、言葉なんて通じない奴の群れってイメージだったんだけど」


「低級の連中ならね。低級モンスターは上級モンスターが作ったりするものよ。もちろん自然繁殖の場合もあるけど。上級モンスターはある種の零落した神格に近いみたい」


 しかし、たったの三体で2つもLvが上昇するって、けっこうな強敵だったのかな。


「ちなみに、どうやって倒したんだ?」


 こいつは智恵のマンジュシュリーの眷属なわけだから、すごい結界みたいなので倒したんじゃないか。ちょっと興味がある。


「物理で殴ったわ」


 シュリはぶんぶんパンチをする仕草をした。


「聞いて損した」


 まあ、王国最強の戦士より攻撃力高いだろうってことは知ってるけどな。


 さて、これからどうしようかな。


 安定した生活は実現したので、何をするか決めていかないといけない。


「う~んとね、しばらくはこのままでもいいんじゃない?」


 何かを考えながら、シュリが言った。


「どうしてそう思う?」


 俺よりはるかに知力は高いはずなので、多分信じて問題はないんだろうけど、納得するためにも理由は知っておきたい。


「だって、この森のモンスターが全滅したのよ。魔王軍も気づくと思うわ」

「まあ、支店の社員とアルバイトが全員消滅したようなもんか」

「そのうち調査とかでいろんなのが来るよ」


「じゃあ、ひとまずは待っておくことにするか」


 その間に対魔王軍のことも考えておこう。


◇ ◇ ◇


「なっ……。あいつらが一人も帰ってこんだと……?」


 ナリアルは絶句した。


 自分は相当な実力者を派遣したはずだ。

 ――グリフォンのヨコブカー。

 ――サイクロプスのニソーズ。

 ――レイスのキルケアードス。

 魔王軍の中でも名家の出で、実績もある者たちだった。


 その連絡が途絶えたということは、間違いなくオルドアの森で何かが起きているのだ。


 魔王の元に報告するべきだろうか。しかし、はっきり言ってナリアル自身がどういう脅威が来ているか、まったく把握していないのだ。


 よくわからないけど気をつけたほうがいいですと報告するわけにもいくまい。魔王に対して無礼極まりないし、ナリアル自身にとっても恥辱である。


「わかった……。こうなったら、私が直接出向くしかあるまい……」


 ナリアルは王国侵攻の計画を大幅に変更して、オルドアの森に少数で乗りこむことにした。


 彼女はとにかく決断が早い。さらに実行力もある。だからこそ、ドルディアナ王国侵攻の先鋒をつとめているのだ。


 オルドアの森に入るまで、魔王軍の支配下にある山岳地帯、原野、森林地帯――ようは都市となってない地域を移動していったが、とくに何の問題も見つからない。オルドアの森以外で大きな被害が出たという話もない。


 やはり、オルドアの森だけで何かが起きているようだ。


 ナリアルは手勢を率いてオルドアの森に入った。


◇ ◇ ◇


 俺は空き時間、ヴィナーヤカとシュリに情報収集をお願いした。


 実体化はしているものの、彼女たちは瞬間移動も可能なので、どこにでも話を聞きに行ける。

 神格にとって肉体というのは仮のものに過ぎない。究極的には肉体のない空性くうせいなのだ。

 逆に言えば、固有の肉体を持つ存在は、それがどれだけ恐ろしいドラゴンであろうと神格としての格は知れていることになる。


 俺もテレポーテーションの魔法は使えるので、たまに王都の酒場に入って、話を聞いたりした。


「調べてきたけど、やっぱり『勇者』の死亡率は高いわね。この一年以内だけで四百人は勇者が生まれてるけど、半数以上はモンスターと戦って戦死してる」


 シュリも嫌な話だからか、俺に教えてくれる時に、顔をしかめた。


「とにかく即戦力を次々に投入して、そのうち生き残った少数の強者のみを本当の勇者に育てあげる、ほかは戦死したところで、ほかの世界から連れてきた傭兵みたいなものだから、痛くもかゆくもない――そんなところでしょうかね」


 ヴィナーヤカもあきれているようだった。

 俺も酒場でよそから来た勇者たちは不幸だなんて話を聞いたが、おおかた正しいらしい。


「でも、なんでこんなことを調べようとしてるの?」


「王国を守ろうだなんて気持ちはほとんどないけどさ、勇者は守ってやりたいんだよ。俺だって一歩間違えば、そいつらみたいになってたんだから」


 あと、国の動きをどうにかしないと、マクレクスやハンナが安心して暮らすこともできんだろう。


「俺が何もできないLv1の一般人ならこんなこと考えなかっただろうけどさ、運命のいたずらでLv54なんだ。問題解決能力があるのに何もしないのもどうかなって思ってさ」


「そういうところは筋を通すのね」


 シュリが見直したという顔で微笑む。


「あなたの数少ない美点よ。磨いておきなさい」


 数少ないって言葉が余計だけどな。


 よし、魔王軍のほうが落ち着いてきたら、王都のほうに乗りこんでもいいな。


 そう、その前にやっておかないといけないことがある。


 ――と、俺の体に反応があった。


 これはセンス・エヴィルの反応だ。


 モンスターが近くにやってきている。

次回は10日昼12時半の更新予定です。

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