「第一話 誕生日パーティー」
「れいちゃん、とってもかわいいわ」
「似合ってるよ、麗香」
お父様とお母様がにこにこ笑いながら私を褒めてくれる。
「ありがとうございます、お父様、お母様」
早く、時間になってほしい。
だって、今日は私が主役だもの。
可愛いドレスを着て、少しお化粧もした。
ずっと前から楽しみだった、私の7歳の誕生日。
皆お祝いしてくれるの。
プレゼントもたくさん貰って、みんな、みんな、おめでとうって言ってくれるの。
はやく、はやく――…。
「麗香、麗香!?」
「どうしたの、れいちゃん!?」
ぼーっとした頭にお父様とお母様の声が響く。
あれ、なんであたしが倒れてるの?
あたしは…、あたし?
あたしは、誰?
「麗香?目覚めたかい?」
「れいちゃん!私よ、わかる?」
「…はい、わかりますわ」
そう、私は麗香。
あたしも麗香。
「よかったわ、いきなりれいちゃんが倒れたのよ?びっくりしたわ。もう、目が覚めないかと…」
涙ながらにお母様は言う。
私は愛されてるんだ。
心が温かくなるような感覚になる。
「麗香はきっと疲れたんだろう。ここのところ、習い事ばかりで寝る間も惜しんで頑張っていたからな」
お父様が私の頭を撫でる。
「ゆっくりお休み」
「はい、お母様、お父様」
2人が部屋から出た後、周りを見回す。
私の部屋…。
でも、なにか変な感じがする。
だって、もっと狭くて暗くて――っ!!
頭が割れるように痛い。
思い出しちゃいけない。
思い出さなきゃいけない。
私は、あたしは…。
夢を見た。
ぼんやりと霧がかかったようなものだけど。
1人の少女が両親を亡くして、親戚に引き取られたところから始まる。
でも、本当に断片的であまり思い出せない。
心に残っている景色が少し思い出せるくらい。
あたしは、誰なんだろう?
知りたい。
だって、気になる。
7歳の誕生日パーティーはできなかったけど。
もっと、大事な何かがわかるような気がする。
絶対に答えを見つけるんだ。