第二話
「五歳の時…?何の話ですか…?」
狼男の突然の告白に戸惑うメイセ。一体この人は何を言っているのだろう。理解出来ずに戸惑っていると、狼男は尚もメイセの瞳をじっと見つめ、視線をずらそうとしない。
「今から十三年前、お前はこの手で俺を救った。死にかけていた狼を付きっ切りで手当てし、大人になったらまた会おうとキスをした。そして俺は人間の身体を手に入れ、やっとお前を迎えに行く事が出来た。でもまだダメだ、完全に呪いを解く為には、お前が傍に居ないと…!」
狼男はメイセの片腕を掴んで、じりじりと壁際へ追いやって行く。突然の事にメイセも逆らう事が出来ず、そのまま壁へ押し付けられてしまった。
「あの、手、離して下さい…!」
「嫌だ。お前が認めるまで、ここから動かない。」
「乱暴な事はしないって言ったじゃないですか!それに、いくら私がそういうお伽話が好きだからって、簡単に騙されると思わないで下さい!」
メイセは渾身の力を振り絞り、狼男の手を振りほどいた。
「あなたが一体どういうつもりで私を攫ったのか知りませんが、こんな事迷惑でしかありません!さっきは怖くて言いなりになってしまいましたけど、やっぱり私ここから出て行きます!」
狼男に背を向け、部屋から飛び出したメイセ。
「おいっ!どこ行くんだ!」
メイセはそのまま勢い良く飛び出し、暗い森の中へと駆け込んで行った。