表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ 1

遅くなりましたが、連載開始します。

これで三本同時連載……!

よって不定期更新になります。

 ご意見感想や誤字脱字等、どんどん送ってください、お待ちしています。



 ーーそれは、ある日唐突に……


 最初に異変に気付いたのは、新調した弓を背に掛けたクイド。

「あんの、バカイル…どこいった。」

 感情を押し殺した、低い声。心なしか、微弱な殺気も漏れている。


 ここは、商業の街「スレイラ」。

 『帰らずの森』最寄りの村から、馬車でおよそ3日の範囲にある、この付近では最も商業の盛んな街だった。


 彼らは依頼ではなく、あくまでも観光と装備の新調のために訪れた。

 『帰らずの森』で探索した、僅か一週間足らずで、各々の使っていた獲物(ぶき)にガタが来てしまったのだ。


 この街に長居する予定もなく、やるべきことは粗方済ませた為、後は宿に帰るだけ。

 …そう、そのはずだった(・・・)


「…クイド、殺気を仕舞え。」

「あ?…あぁ、街中だったか。」


 ここは街の大通りで、たくさんの客で賑わっていたはずなのだが。

 先程のクイドの殺気で、周りの客は不穏な空気を感じたらしく、この一画のみが妙に静かになっていた。

 殺気を仕舞ったクイドを一瞥したヴェンは、静まり返った周囲を見て、ため息を吐いた。


 彼ら(きゃく)が静まり返った訳は、(当たり前だが)クイドの殺気にある。

 もちろん、彼らだってある程度の殺気には耐性があるだろうが、所詮はその程度だ。

 探求者(クェールシア)の殺気には、その程度の耐性は意味を成さない。



 探求者(クェールシア)は、少なくとも一定以上の戦闘能力を持つことを課せられている。

 それは何故か。

 あまり知られてはいないが、『未探査地域(ホワイト・エリア)』や『非生存域(デス・エリア)』である程度行動する為であると同時に、そしてそれ以上に、自らの身を守る為でもある。


 探求者(クェールシア)は、危険な反面、成功すれば実入りのいい仕事が中心だ。

 そうなれば、その利益を奪おうとする者も出てくる。


 …過去に、探求者(クェールシア)と組んで『非生存域(デス・エリア)』を探索していた、解析者(フィールドコンダクター)がいた。

 それ自体はそれほど珍しいことではない。

 が、その解析者(フィールドコンダクター)は、ある事件を起こした。


 『探求者(クェールシア)殺害(ただし未遂。)』


 なんと、その解析者(フィールドコンダクター)は、組んでいた探求者(クェールシア)に刃物を持って背後から襲いかかったのだ。

 結果、襲われた探求者(クェールシア)は一命をとりとめたが、片腕を二度と使うことができなくなってしまった。

 片腕でやっていけるほど、探求者(クェールシア)は甘くない。

 探求者(クェールシア)を引退することを余儀なくされた彼は、二度とこんな事が起こらないよう、探求者(クェールシア)に自衛手段を持つように呼び掛けた。

 莫大な富を持つこともある探求者(クェールシア)達は、過去何度も狙われた経験があった。

 その都度なんとか撃退していたものの、限界はある。

 対人には(うと)かった 探求者(クェールシア)達は、この事件を切っ掛けに、本格的に自衛手段を模索するようになった。

 対人戦闘は、『非生存域(デス・エリア)』や 『未探査地域(ホワイト・エリア)』に住む生物ーー狂獣(べリオ)とは勝手の違う戦い方だった。

 幾年も掛けて探求者(クェールシア)が辿り着いた護身術は、「殺気」だった。

 狂獣(ベリオ)との戦闘でも使われる、ある意味探求者(クェールシア)にとって身近な「殺気」が一番効率が良かったのだ。


 故に、探求者(クェールシア)の殺気というのは、一種の攻撃なのだ。

 探求者(クェールシア)であるクイドの殺気によって、圧倒的な力の差を感じ取ってしまった周囲の客達。

 彼らは、強者(クイド)の気を損ねないよう、無意識的に口を閉じたのだ。

 だからこそ、この奇妙なまでに静かな一画ができあがった。




「……ヴェン、カイルが何処に居るか探れるか?」

「…無理だな。他の場所ならともかく、ここ(スレイラ)は人が多すぎる。」

 クイドの問いに即答したヴェンは、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 同じような顔をしたクイドは、心底嫌そうに溜め息を吐いた。

 この時、二人が思ったことは、ただひとつ。

 即ちーー


 ーー絶対あのバカイルは何かしでかす。

     帰って来たらいっぺん(しめ)る。




ーー同時刻。


「はぁっくしゅん!

 …なんだ、今の。すっごい悪寒が…。風邪か?」

「……大丈夫か、坊主。」

「おう!平気だ!それより、おっちゃん。」

「わーってるよ。ほら、好きに使え。」

「お、サンキュー!」

「いいってことよ。まいどありー。」



  ーーそして運命は廻り始めるーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ