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アパートの主

季節は4月。

入学だ入社だとめでたいことが続く季節だ。

今年も新入社員が入ってきた。

そんな季節のとある休日、俺は家でのんびりしていた。

今は座布団に顔をうずめるようにして寝ていた。

こうするとこいつは言葉を発しない、なぜだろうか。

「ん~、腹が冷える・・・」

俺は近くにあった薄手の布団を腹にかける。

すると眠くなってきた。

「・・・ねるか」

休日の昼、昼飯後の昼寝をすることにした。


「ん・・・今何時だ?」

携帯の時計を確認すると17時、結構寝てしまったようだ。

寝始めたのが1時だから4時間くらいか。

空が赤くなり始めていた。

うん、今日も夕日が綺麗だ。

「起きるか・・・ん?」

腹に重みがあった。

「ご主人様・・・むにゃむにゃ」

フートだった、いつの間にか人間化していたらしい。

ちなみに、俺の持っている布団は全てがフートだ。

違う姿になったり違う記憶を持っていたりもしない。

つまり同一人物ということだ、便利なやつめ。

ひとまず起こそう。

「おい、フート」

「はれ・・・?ご主人様・・・?」

目をこすりながらこちらを見上げるフート。

いつもは落ち着いたお姉さんタイプだが、寝起きはいつもこうだ。

布団でも寝るらしい。

いつもと違ったフートはとても可愛らしい、結構好きだ。

「おう、もう起きたよ。ありがとう」

「いえ、お役に立ててよかったです」

フートはにっこりと微笑んだ。

うん、健気でいい子だ。

「ふ~飯でも買いに行くかな・・・ん?」

立とうとして床に手を付いたつもりが、なにか柔らかいものがそこにあった。

ふむ、とりあえず揉んでみよう。

「あぁん・・・」

「・・・」

ふむ、なかなか良いものを持っている。

じゃなくて!

「ザァァァァァブゥゥゥゥゥ!!!」

「ひゃ、ひゃい!?」

俺が掴んだ柔らかいものは何故か人間化して、隣に寝転んで寝ていたザブの胸だった。

「い、いや何でもない。気にするな」

「へ?そうですか・・・あら?少々胸がはだけているのはなぜでしょう?」

「いや・・・」

「ご主人様?」

「えっと・・・結構なものをお持ちで」

「・・・」

あ、やべえ、めっちゃ顔赤い・・・

「あの、ザブ?」

「・・・いやあああああぁぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃああああああああ!」

「ご主人様のバカ!エッチ!勝手に触るのは反則ですわ!もっと心の準備が必要なのです!事前におっしゃってください!」

「それはそれでおかしいぞぉぉぉぉぉお!?」

おかしなことを言いながら俺を殴ってくるザブ。

なんか言ってること怖いし・・・


ぼふん


ぼふん


ぼふん


「「「ご主人様!」」」

「ぎゃああああああ!増えたああああああ!」

事態を見ていたほかのやつらが耐え切れなくなり出てきてしまったようだ。

これはまずい・・・あの人が来てしまう。

「お、おい!ちょっと待てお前ら!落ち着け!フート!止めてくれ!」

「ご主人様・・・私の胸は触ってくれないのに・・・」

「ちょっとフートさん!?そんなこといいから助けて!」

「そんなこと!?やはり大きいだけの私の胸など・・・」

おいおい・・・どうなってんだよ・・・

「いいから助けてえええええええええええ!!」

「私のことはもういいんですね!?」

「違うってえええ!助けろよおおおお!」

「「「「「「ひどいです!ご主人様!」」」」」」

「えええ!?もっとひどくなった!?」

フルボッコだ、俺死んじゃうよ?家具に殺されちゃうよ?

「やばいって!あの人が来るってば!」


どごーん!


玄関のドアを開ける大きな音がする。

「ああ・・・来ちゃったよ・・・」

「あんたらまたかあああああああああ!」

一人のポニーテールの女性が鬼の形相で部屋に入ってきた。

「ひ、ひええええええ!」

「今日という今日は許さああああん!」

「ぎゃあああああああああ!」

全力で殴られた、天国のばあちゃんが手を振ってたぜ・・・


俺たちは全員正座をさせられていた。

「で、殴り合いになったと」

「はい・・・そうです」

「神野さん、何回目です?確かに少しは大目に見るとは言いましたけど、度が過ぎますよ?」

「面目次第もございません」

俺たちは土下座をした。

「・・・もう」

この女性は桜木志保(さくらぎしほ)、今年から大学1年生の19歳だ。

若いながら祖母から受け継いだこのアパートの管理人をしているらしい。

年は若いがしっかりしていて、管理人業と学業の両立も出来ている。

この部屋の事情も知っていて、ザブたちの存在も知っている。

この部屋に関してのことは1番信頼できる存在だ。

「ほんとにすみません・・・」

「もぉ・・・しょうがないですね、今度買い物に付き合ってください」

「・・・はぁ」

「デートしましょう神野さん」

「・・・」

「してくれたら許してあげます」

「わかりました、荷物持ちですね」

「はい♪一人で持つのは大変なので♪」

俺は騒ぎが起こるたびに管理人さんの、買い物の荷物持ちをさせられる。

「みなさんもそれでいいですね?」

「「「「「「はい・・・すみませんでした」」」」」」

ザブたちも謝る。

「今後は気をつけてくださいね、それでは」

「「「「「「失礼します」」」」」」

俺たちは管理人さんを見送った。

「みんな、言ったよな?あの人が来るって」

「「「「「「えっと・・・はい」」」」」」

「頼むから、俺の荷物持ちの回数をこれ以上増やさないでくれ・・・」

「「「「「「すみませんご主人様」」」」」」

「はぁ・・・じゃあ、飯買いに行ってくる」

「「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」」

俺はコンビニへと向かった。


コンビニで適当に飯を買った俺は、足早に帰宅した。

「お~?神野さん、こんばんは」

「あ、千堂じいさん。こんばんわ」

「今日も大変じゃったの~」

「はい・・・いつも騒がしくしてすみません」

「いいんじゃよ、年寄りには賑やかな声が聞こえてきたほうがええ」

「そう言っていただけるとありがたいです・・・」

「大変じゃの~ふぉっふぉっふぉ」

このじいさんはとなりの103号室に住む北野千堂(きたのせんどう)さん、通称千堂じいさん。

ここにずっと住んでいる、そのためうちの部屋のことも知っていて、信頼の置ける人だ。

管理人さんを孫のように可愛がっている。

祖母祖父ともに亡くしている管理人さんも千堂じいさんのことを慕っているようだ。

「これからも騒がしくしてしまうかもしれませんが・・・」

「気にせんでも大丈夫じゃよ、わしから志保ちゃんにも言っておこう」

「すみませんいつも」

「ふぉっふぉっふぉ、気にせんでも良い」

いつも管理人さんが怒ったときは千堂じいさんがなだめてくれているらしい。

千堂じいさんには感謝してもしきれないくらいだ。

「それじゃ、失礼します」

「うむ、仲良くな」

「はい」

そういって俺は部屋へと戻った。


「ただいま」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「おう、何してんだ?ザブ」

帰宅するとザブが迎えてくれた。

迎えてくれたのはいいが、ザブの手には俺の靴下が握られている。

「えっと・・・その・・・」

ザブの顔がみるみる青くなっていく。

ああ、これはあれだな、いつものやつだ。

「ご主人様の靴下の香りを・・・」

「ハアアアアアリイイイイイ!!!」

「はいな!ほあちょー!」

「どぐべほぁ!」

ハリの右ストレートがザブに決まる。

「お前は毎度毎度何してんだ!」

「す、すみませぇん!悪気があったわけじゃ・・・」

「悪気しかないだろうがあああああああ!!」

「ひ、ひぇぇぇ!」

思いっきり殴りました。


「いたいですぅ・・・うう・・・」

「自業自得だ」

たんこぶのできた頭をさするザブ。

俺は弁当を食べ始めた。

「私だけではありませんのに・・・」

なに?ザブだけじゃない・・・?

「ハリだってご主人様のパンツの匂いを嗅いでましたのに」

「ぶはあああああ!!」

「きゃああああ!」

俺は盛大に弁当を吹いた。

思いっきりザブにかかってしまった。

いや!そんなの知らん!今は!

「ハアアアアアアリイイイイイ!出てこおおおい!」

「いやあああああ!」

「そこかあああああああああ!おらああああ!」

「きゃふん!」

俺はハリの頭に拳骨を落とした。

それを皮切りに芋づる形式に出るわ出るわ。

やれシャツだの、やれジャージだの・・・こいつら何なんだよ・・・

それから俺は次から次へと出てくる事案を聞くたびに、犯人にげんこつを落としていった。

そして、管理人さんが突入してくるまで時間はかからなかった。


続く

どうもりょうさんです!アパートの主をお送りしました!

今回は管理人さんと千堂じいさんが登場しました。

このふたりはちょくちょく出るのでふたりをよろしくお願いします。

これからもドタバタしていきたいと思います!

それではまた次回お会い致しましょう!


作者の別作品「農業高校は毎日が戦争だぜ」もよろしくお願いします!


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