俺の部屋
俺は神野誠(じんのまこと)。
なんの変哲もない、ただのサラリーマン。
彼女いない歴=年齢、取り柄もない普通の人間。
いや、クズかも知れない。
今日も俺は部屋へと帰宅する。
俺の部屋は3階建てアパートの1階、104号室で角部屋だ。
アパートは築40年くらいのボロアパート、隣にはじいさんが住んでいる。
「ただいま~っと・・・」
鍵を開け部屋へと入る。
ボロイがそれなりに広く設計されており、6畳でキッチン、トイレ、風呂完備。
これで1万円の家賃だ、安い。
6畳の部屋には、机、タンス、テレビ、座布団、布団などなど家具が無駄に置いてある。
俺は着替えを済ませ買ってきた弁当をレンジに入れ、座布団へと座った。
「あぁん・・・」
「・・・」
座布団に体重を思いっきりかける。
「ああ・・・ご主人様のお尻が・・・私をいじめる・・・あああ、あはぁぁん」
これは決して俺がしゃべっているわけではない。
かといって幻聴や妄想の類でもない。
「おい座布団・・・」
「はい、なんでしょう?ご主人様・・・は!今度は言葉攻めですか!?はぁ・・・はぁ・・・」
「いや違うから!このドM座布団!いつもいつも!気持ちわるいよ!」
「あぁ・・・やはり言葉攻めですね・・・あはぁああん!」
間違いなく座布団から発せられる声。
「ああ・・・もうめんどくさい、裁縫道具裁縫道具っと・・・」
「ご、ご主人様?何をする気ですの?」
「針で刺す」
「やめてえ!?死んでしまいますわ!」
「座布団に死ぬもなにもあるかああああ!!!せいぜいわたと布に分かれるくらいだろうが!!」
「あぁ・・・いい!ご主人様が私を言葉で・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「よぉし!覚悟は出来たな!できてなくてもサヨナラだあああ!」
「嘘です!ごめんなさい!洒落になりませんからぁぁぁ!」
ぼふん
煙が舞う。
そこに現れたのは金髪ドリルの髪型に、上品な顔立ち、豊満な胸をもった女性だった。
「ご主人様!許してくださいまし!」
「今日という今日はもうゆるさああああん!」
「いやああああ!死んでしまいますわ!この体だとほんとに血が出ます!わたじゃなくて血が出ます!!!」
「出してしまええええええ!」
「いやあああああああああああああ!!!」
ぼふん
また煙が上がった、今度は布団の方からだ。
「ご主人、許してあげなさいな。ドM体質はザブちゃんの性癖なのですから・・・」
さっきまで布団があった場所には、黒髪ロングの落ち着いた女性が立っていた、胸はさっきの金髪ドリルよりでかい。
「・・・はぁ、わかったよ・・・もうやめろよザブ」
「はい!分かっておりますわ!」
「本当にわかってんのかよ・・・それにしても暑いな・・・」
俺は扇風機をつけた。
「ふぅ・・・涼しい」
「ご主人様♪涼しい~?」
「ああ、涼しいよ」
扇風機から幼女のような幼い声がする。
ぼふん
扇風機から煙が上がる。
そこには、黒髪ショートで小学校3年生くらいの幼女がいた。
「ご主人様!ふーしてあげるね!」
幼女は俺の耳に息を吹きかける。
「おおう!!だから耳はダメって言ってるだろ!?」
俺はくすぐったくて体を震わせる。
「へへへ、もっとしてあげるよ~」
「いいって!お、おい!」
ふぅ~
「あ、あはぁ・・・じゃなくって!やめろっての!」
「ぶぅ・・・は~い」
幼女はしぶしぶ俺から離れた。
「ちょっと風(ふう)さん!?ご主人様に変なことするんじゃありません!」
「うるさいよ~金髪ドリルどMおばさん~」
「おば・・・私はまだ若いですわーーーー!!このマセガキ・・・!」
「おばさんおばさんおばさん!」
「さ、三回もいいましたわね!?もう許しませんわ!!」
「おばさ~ん!」
「きいいいいい!!!!」
金髪ドリルと幼女が喧嘩を始める。
「はぁ・・・」
チンッ!
ぼふん
「ごしゅじんさーま、おべんとうあったまった!」
俺の隣には先ほどの幼女よりもさらに幼い赤毛の女の子が、ほかほかにあったまった弁当を持っていた
「ああ、ありがとう。」
「えへへ♪」
俺が頭を撫でてやるとくすぐったそうに目を細める、うんかわいい。
「あ!また恋(れん)さんが抜け駆けしてますわ!」
「恋ちゃんずるいよ!」
ああ・・・標的が変わった・・・
「れんずるくないよー?ね?ごしゅじんさま?」
う、そんな目をされると弱い。
小動物のような目でこちらを見つめてくる幼女に何も言えない。
「あ、ああ。そうだな」
「「ずるいーーー!!!」」
金髪ドリルと幼女が騒ぎ始める。
ぼふん
ぼふん
ぼふん
「「「ずるいずるいーー!」」」
「増えやがったああああああああああ!」
机やタンスや冷蔵庫などが次々に人間化していく。
言っておく、こいつらは家具だ。
家具だ。
大事なことだ、2回言っておくぞ。
「だあああまああああれええええええ!!」
俺の声が部屋に鳴り響いた。
するとしんっと部屋は静まり返る。
「うむ、お前ら・・・この部屋で暴れるなと何回言ったらわかるんだ!」
「ですがご主人様・・・」
「ザブ、黙れ」
「ひゃい!」
精一杯のドスの利いた声を発すると静かになる金髪ドリル。
この金髪ドリルの名はザブ、座布団でどMだ。
「まったく・・・何回言えばいいんだお前らは・・・」
「でもね?ご主人様」
「だってもくそもない!」
「は、はい・・・」
小学三年生くらいの幼女は俯く。
この幼女の名前は風(ふう)、扇風機で何故かませている。
「まあまあ、落ち着いてくださいご主人様」
「フート・・・お前も少しは止めような?」
「す、すみません・・・」
この黒髪ロングの落ち着いた女性の名前はフート、布団だ。
この部屋のお母さんやお姉さん的存在だ。
「ごしゅじんさま?おこってる?」
「ちょっとな」
「うう、ごめんなさい」
「素直に謝ることはいいことだが、もうちょっと静かにしような?」
「はい」
この素直な赤毛の幼女の名前は恋(れん)。
電子レンジだ。
「あとのお前らもだ、もうちょっと静かにしなさい!」
「「「「「「はい・・・」」」」」」
机の築(つく)やタンスのスーやそのほかの子にも説教をしていく。
「はぁ・・・もう疲れた、俺は寝る」
「「「「「「おやすみなさいませご主人様」」」」」」
「ん、フート・・・」
「はい、それではおやすみなさいませご主人様」
ぼふん
布団へと戻るフート。
「電(でん)、電気」
「はい、ご主人様」
ぼふん
電気へと戻り明かりを消す電灯の電。
「すぅ・・・すぅ・・・」
俺は眠りへとついた。
ぼふん
ぼふん
その他の家具たちも本来の姿に戻っていった。
俺の家具はこんな奴らばっかだ、何故か人化してしまう。
感情があり、言葉も喋る。
もう一度いう、こいつらは家具だ。
続く
はじめましての方は初めまして!りょうさんと申します!
今回はこの小説を読んでいただきありがとうございます!
いまは擬人化ブーム!これに乗らない訳にはいきませんよね!
というわけで目をつけたのが家具でした。
おもしろく、笑って読んで頂ければ幸いです!
以前から作者が書いている、農業高校を舞台とした小説「農業高校は毎日が戦争だぜ」もよろしければ読んでください!
それでは、また次回お会いしましょう!
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