電撃
歩くこと数分。
俺らは大通りを西に抜け、脇道に入った。
とは言っても、まだ車の通りは多く、業務用スーパーなどが並んでいる。
歩道と車道の間に段差はなく白線で仕切られており、
30メートルほどの間隔で街頭や電柱が並んでいる。
「電柱が倒れてきたりとかはしないよな?」
「そんなことはないんじゃない?倒れてきたとしても避けるまでの時間はあるはずよ」
俺らは目に入る、凶器やら死因になりそうなものを見てはそれらに対する考察を行っていた。
すると、パシィッ!と何かがはじけるような音がして、
それから後ろを歩いていた集団から悲鳴が聞こえた。
振り返ってみると、地面に垂れ下がった電線と飛び散る火花が目に入り、
そのすぐそばで腹から上が焼け焦げた……女子と思われる生徒が横を向いて倒れていた。
その犠牲者の取り巻きは、泣いている女子と、唖然とした男子に完全に二分されていた。
「まさか電線が落ちてくるなんて……」
戸上が驚きとともにそんなことを漏らした。
「おそらく自然に切れたものね……ここは危ないわ。回り道していきましょう」
上条さんがそう言い、元来た道を戻り始めた。
感電死したこの横を通り過ぎる時、心が痛んだ。
だが、俺は構わず歩みを進める。このままでは自分が危ないからだ。
再び大通りに出る。
「なあ、大通りの方が危険が多いんじゃないか?」
俺は思ったことを上条さんに意見する。
「でももうあそこに留まっている理由なんてないわ。
大通りの方が道幅が広い分まだ逃げようがあるもの」
「確かに言われてみればそうだけど……」
少し釈然としないながらも、油断している魔の手が襲ってくるか分かったもんじゃない。
そう思い、俺は足で地面を蹴り進む。
すると、額に何か当たったような気がした。
上を見上げる。すると、雲から細いものが降ってくるのが見えた。
――雨だ。
あっという間にそれは勢いを増し、傘なしではずぶ濡れになってしまうような勢いになった。
「どこかに避難しようぜ」
戸上がそう言って走り出す。
幸い俺らの身には何もなく、広場のような場所にたどり着いた。
「あそこの木の下がいいよ」
戸上がそう言って走り出した。俺らも後についていく。
数分しても雨は鳴りやまない。それどころか雨脚がひどくなるばかり。
そして――
ゴロゴロゴロ……
雷までなり始めた。
おまけに風も強くなってきて、俺らは身動きが取れなくなった。
「ちょっと寒くなってきたわね」
「どうする?向こうの空が晴れてるから、夕立ちだとは思うけど……」
「このまま雨がやむのを待つしかないのかしら」
二人がそんなことを話していると、再び
ドガシャーン!
雷が落ちた。今度はずいぶん近くに落ちたようだ。
「これがニュースでやってた、ゲリラ豪雨ってやつね……本当にひどいわ」
ニュース……か。そういえば昨日は色々なニュースをやっていた。
旅館でもテレビは使えたため、暇なときはテレビを見てることが多かったな。
そういえば、テレビでも雷のニュースを……
あれ?
嫌な予感がする。
雷事故のニュース頭の中を駆け巡る。
60代かなんかの老人が亡くなったんだよな。
確か、雨宿りしている最中で……
――!!
「二人とも、急いでこの木から離れるんだ!」
「えー。何で?」
「何でも!お前ら死ぬぞ!!」
そういって、俺は二人を引きずり出す。
途中で上条さんは意図に気づき、雨の降る中を駆けだした。
6、7メートルも進んだころだろうか。
ドガアアアァン!
鼓膜をかき鳴らすような轟音、目のくらむようなまぶしい光。
目を瞑っても、耳を塞いでも、それは俺の体のありとあらゆる感覚にしみ込んでくる。
ああ、俺はどうなってしまうんだ――
どれくらい経ったか分からなかった。
俺はそっと目を開けた。そして目を見張った。
さっきまで俺らがいた木は、焼け焦げて、変わり果てた姿となっていた。