人為
校門を出てから、俺は上条さんに、聞きたかったことを聞く。
「そういえば上条さんってさ、家どっちの方角にあるんだい?」
上条さんが答える、と同時に、彼女の茶髪がかった長髪が風にゆらりと煽られる。
「あなたの家と同じ方角よ」
「俺んちとも近所なんだぜ!」
戸上が得意げに言う。が、
「小学校が同じなんだから当たり前でしょ」
と、彼女は一蹴した。
彼女は一体どうして俺らのことをこんなに知っているんだ?
古い木造の家の横を通りながら思ったその瞬間、
パリン!
何かが割れる音。
それから間もなく、
「危ない!上よ!」
と、上条さんのガラスのような鋭い声が聞こえる。
よくも分からずその場を離れる。すると――
俺らがいた場所には、ガラスの破片が散らばっていた。
「すみませーん」
と、男子の声がする。
見ると、野球帽をかぶった2人の少年。手にはグローブを持っている。
「僕たち、キャッチボールをしていたんですけど……そしたら、
すっぽ抜けて、それで……」
そういって二人は黙ってしまった。
「いいのよ。私たち、怪我も何にもしてないから」
上条さんがやさしく二人に話しかける。
家に誰もいなかったのが幸いだっただろう。
俺らは急いでその場を離れる。
少し後ろを歩いていた同級生たちも怯えていた。
いつの間にか俺らが集団の先頭を歩いていた。
「どうやら町の人も俺たちの敵みたいだね」
戸上が言うと、
「でも直接的に『殺す』という行為はしないようね」
上条さんが付け足す。それに対して俺も言う。
「そりゃそうだろ、町の人がチェーンソー持って襲い掛かってきたらひとたまりもないしさ」
「あなたゲームのやりすぎよ」
上条さん、ひどいや。
しかし俺は考える。
もしかしたら、これも誰かが仕組んだゲームなのではないかと。
そうだとしたら必ずクリアできる道筋があるはずだ。
しばらく歩いていると、少し高めの商業ビルの並ぶ大通りに出た。
「車とかに轢かれたらどうしよう」
「ビルのガラスが割れて落ちてくるとかはどうかしら?」
「いや、電柱や木が倒れてくるとかあったりして」
三人で色々な可能性について考える。
しかし立ち止まっていたらずっと帰れない。
俺らは再び、歩みを進めた。
どうも、むつみです。
1回に投稿する字数が少ないですが、
それでも読んでくださると嬉しいです。