発端
~登場人物~
牧野伸哉
この物語の主人公。
平均的な男子中学生。
上条詩織
不思議な雰囲気を放つミステリアスガール。
戸上潤平
牧野の小学校時代からの親友。
中3の夏。
俺――牧野伸哉は受験前の最後の学校行事、3泊4日の修学旅行を終えた。
バスを降りて、その姿を見る。
白塗りの車体に金色で会社名が添えられているといういたってシンプルな車体。
周りの景色を見る。
さっきとは違う、また、いつもと同じ風景。
あとは最後に整列して先生の話を聞くだけだ。
長い引率の先生の話も終わりに差し掛かる。
上を見上げると赤く染まった夕焼けがはっきりと見えた。
ああ、終わるんだな――そう思った瞬間に、先生のしめくくりの一言。
「いいですか、みなさん。家に帰るまでが修学旅行です。それではお気をつけて」
先生が言い終わった瞬間、ふらりと眩暈がした。
視界が揺らぐ、と思いきやそのままぐるぐる回り始めた。
なんだこれ。
気がつくと、先生の姿はなかった。そう、一人も。
ただ、クラスメートとかは全員いたため、俺は一瞬、夢でも見たのだろうと思った。
しかし、たまたま隣にいた、クラスの女子、上条詩織が話しかけてくる。
「ねえ、今のなんだったの?地震……にしては建物が何も崩れていないし」
すると、斜め後ろにいた俺の小学校からの友人、戸上潤平が顔を出す。
「まあよく分かんねーけど、先生もいないし、帰らね?」
「まあ……そうだな」
そういって、俺と潤平は校門に向かう。
――と、その瞬間。
一台のトラックがこちらに突っ込んできた。
トラックは、スピードを緩めることなく、こちらに向かってくる。
おい、なんだこれ。
体がブルっちまって全く動かねえ。
すると、ざわめきをかき分けるようなよく通る声が耳に入ってきた。
「牧野君、左に思い切り走って」
上条さんの声だ。俺は何も考えずに左を向いて全力疾走をする。
と、次の瞬間、風にあおられるような感覚。
――トラックが、俺の真後ろを通過したのだ。
間一髪、というところで俺はトラックを避けたのであった。