一
「結局さ、お前ってどっちとつきあってんのよ」
「なんの話?」
「質問に質問で返しやがって。とぼけんじゃないよー、お前いつも隣に美人双子姉妹をはべらせてるだろうが」
「あの二人はただの幼馴染みだよ。そういう関係じゃない」
「ほぉー二股かこのタラシが。リア充は死ね」
「だから違うって。僕と彼女らとの間には友情しかないの。確かに二人は大事な人ではあるけどね」
「あの二人に対してそれって……お前マジで健全な男子高校生か? まさかホモ……?」
「そんなわけないだろ! あの二人は、ほら、あれだよ、物心つく前からずっと一緒にいるからさ、ほら、家族みたいなものなんだよ、うん」
「そんな小さい時からのつきあいなのかよ……うらやまけしからんリア充死ね」
「だからもう……僕にとって二人は姉と妹みたいなものなの。向こうも僕のことをそんな……恋愛対象としては見てないはずだよ」
「いや、あれは絶対お前のこと意識してるだろうよ」
「……? そんなわけないだろ」
「お前絶対いつか刺されるからな。心臓グサーッてやられる。間違いないね」
「意味が分からない。あっ噂をすれば前に……おーい!」
「げっ、呼ぶんじゃねえよ」
「あれ? 二人のこと苦手だっけ?」
「お前と女子がいちゃついてるの見るのは精神衛生上よろしくないんだよ。ちくしょう、こんなとこにいられるか! 俺は帰るぞ!」
「帰り道で死にそう」
「うるせえじゃあな。リア充死ね!」
「彼はどうしたんだ? 何やらあわてて帰って行ったみたいだが」
「気にしなくていいよ。あいつたまによくわかんないんだ」
「にぎやかでおもしろそうな人だよねー」
「ふーむ……そういえば、お前は最近彼とよくつるんでいるな。何か嫌なこととかされてないか?」
「母親みたいなことを聞くね……ああ見えていいやつだから、人の嫌がることはしないよ……たぶん。変なことはしょっちゅう言ってるけど」
「変なことかー……ふふーん、じゃあさー、さっきはどんな話してたのー?」
「君たち二人のうちどっちとつきあってるんだ、って聞いてきたよ」
「……っ!?」
「ほほう……なんと答えたんだ?」
「安心して。二人は僕にとって家族みたいなものだからそういうことは一切ない、って言っといたよ。妙な噂を立てて迷惑かけるわけにはいかないからね」
「…………」
「…………」
「な、なんで睨むんだよ」
「待ちに待った修学旅行まであと一週間か。楽しみだな妹よ」
「そうだねーお姉ちゃん」
「……なんか怒ってない? 二人とも」
「東京での自由行動どこに行くー?」
「ぜひ両国で相撲が見たい。土俵際での駆け引きは最高だぞ」
「む、無視しないでよ。おーい。よくわかんないけどごめんよー」
「ああ、許せんなあ、許せんなあ」
「ゆるせんなー」