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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第一章 ツッコミはある日突然に
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第8話 過去そして現在

それは遠い昔の記憶――

 遠いとは言ってもだいたい八年くらい前の記憶。

 空君は「それは遠くない! むしろ近いわ!」とか突っ込んでくれるのかな。

 ボクが小学生だった頃、言い直しそう。ボクがまだロリっ娘だった頃の話し。

 ボクは小学校の実習でこっちに来ていた。こっちというのはつまりこっちの世界ということ。僕たちはティエラと呼んでいる

 河原を歩いているとふと白い何かが流されていた事に気付く。すぐにそれが猫だと分かった。

 ボクは後先考えず川に飛び込んだ。計算も何もない、体が勝手に動いたといってもいいかも。

 水を吸った服は重くなり、流れも比較的速い、すごい勢いでボクの体力を奪って行く。

 猫を掴んだときまでには帰るだけの体力は残っていなかった。

 半ば絶望しかけたその時、声が聞こえた。

「諦めちゃ駄目だ! 今助けに行くから!」

 ボクと同じくらいの歳の男の子。

 近くに落ちていた木の板を持ってこっちに泳いできた。

 ボクに板を掴ませ「大丈夫?」と聞いてくる。

 それに頷き一緒に陸へ上がる。

「無茶するよね君、でも僕は好きだなそういうの、ヒーローみたいでかっこいいじゃん」

 その笑顔はとてもかっこよく、まるでヒーローかのようでボクは初めて恋をした。

「あ、あの。助けてくれてありがとう。よかったら名前を教えて欲しいんだけど……」

「僕かい? 僕は通りすがりのヒーローさ!」

 自分でヒーローとか言う人に恋をしたようだ。

「いや、名前を」

「ごめんなさい、調子に乗りました。僕は東雲空輝っていいます」

 空輝と名乗るヒーローは案外気が小さかった。

「ありがとう空君♪」

「みゃぁ……」

 猫が弱々しく鳴いた。空君はそれを見ると、

「その猫どうするの? 飼える?」

 ティエラからの小動物の持ち込みは禁じられているので持っては帰れない。ボクは首を横にふる。

「そうかぁ、仕方ないよね。僕が母さんに聞いてみるよ」

 このままこの猫を放したらそのうち死んでしまうだろう。空君が飼えるならこれ以上にない展開だ。ぜひお願いしたい。

「じゃあ、よろしくお願いします」

「ヒーローに任せとけ!」

 ボクは髪を結んでいたリボンを猫の首に巻く。

 そのあとのことはよく覚えていない




 僕のベッドに悠さんが寝ている……、夢のようなナイスなシチュエーションだが。それがもし熱を出して倒れた女の子でなければの話だ。

 こういう時にどうすればいいか分からない、どうしよう? どうしよう!

一応言っておくが真面目な展開だぞ僕! ふざけてる暇があったら考えろ!

 そうだ、熱を出したと言えば額に冷たいタオル、というわけで用意したものがこちらです。三分クッキングか! 動揺しすぎてわけがわからなくなっている状態な僕だ。

 悠さんのおでこにタオルをおこうとしたその時、部屋の窓が開いた、ドアではなく窓だ。

一呼吸おいて僕は振り向く。

「ちょぉりゃあーー!」

 奇声とともに何かが僕の部屋に飛んできて、見事な着地。ポーズまで決め込んでいる。とりあえず拍手してみる。

「お、おう。ありがとう、ありがとう。じゃない! アホか! ねーさんに何をした!? ナニをしようとした!」

 外人さんだろうか、黄金色の髪を右で結んでいる、サイドポニーってやつか、きりっとした顔立ち、どこか悠さんの面影があり、僕が見てきた中で悠さんの次に可愛い、あくまで悠さんはトップだ。おそらく 僕が死ぬまで、いや死んでもこの座は変わらないだろう。

 服は白いTシャツに黒いひらひらしたスカート、少し男の浪漫……もとい下着が見えてしまった。

 冷静に考えていると、その女の子は蹴りを繰り出してきた。

「ごふぇ!」

 見事に僕の腹にヒットする、クリティカルヒット!

「なんだよジロジロ見ちゃって、恥ずかしいだろうが!」

「え、えーと。君は誰?」

「おっと、紹介が遅れたな、貴様みたいな下衆野郎に名乗る名前でいいなら名乗ってやる。ワタシの名前は天野原奏音、悠ねーさんの妹だ」

 奏音と名乗る女の子は名前は思いっきり和名なのに髪は金髪だ。

「今、『髪の毛金色のくせに名前超和名とかばっかじゃねーの』とか思ってたろ!」

 いや、確かに似たようなことは思ったが、罵倒はしていない。正直に答える。

「ああ、一言一句間違ってない」

「こっの野郎! このワタシをバカにするとはいい度胸じゃないか! ほめてやろう」

 そう言って背伸びをして僕の頭をなでる。なんでほめられた?

「ところでさ、なんでねーさんここで寝てんの? 行為に及ぼうとしたところを邪魔しちゃった? それにしては服着てるし、ねーさん寝てるし……」

 とんでもないことを言う奏音ちゃん。

「待て待て待て、僕はそんなことをしようとしていない! 断じてしていない!」

 ここに至るまでの経緯を話す、奏音ちゃんは神妙そうな顔つきで聞き入っていた。

「なるほど、つまり貴様はねーさんにあんなことやこんなことをしようとしていたわけだな」

「どう解釈するとそうなるんだよ! 明らかおかしいだろその解釈!!」

「何言ってんだ? あんなことやこんなことと言ったら、介抱とか手当とかだろ? アンタこそどんな解釈したんだ?」

 きょとんとした顔でそういう奏音ちゃん。さすが姉妹、あんなことやこんなことの解釈まで一緒だった。

「ううん、まあ。そうだな」

「よし話してやろう、どうしてこうなったかをな。その前に一ついいか?」

「なんだよ?」

「アンタ名前なんだ? 話しにくい」

 そうだった、僕の自己紹介はまだだったな。

「僕の名前は東雲空輝、高校二年生、十七歳だ」

「~~~~~~~ッ」

 驚いたような奏音ちゃん

「どうし――」

「黙っていろ水素!」

 一言、水素とか言いやがった! 空気の中で最も軽い気体。空気と言われたことはあるが水素と言われたのは初めてだ。かなりショック!

 そしてしばらく考え込んだ奏音ちゃんが口を開く。

「実はワタシ、あなたよりも年下だ、ピッチピチの十五歳だ、意味はわかるか?」

「え、特に何も」

「つまりはな、貴方よりも年下だ」

「うん、それはわかる。二回目だしね、それ言うの」

「うう~~~~」

「話し方とか気にしているのなら別にいいよ? 気にしないで」

 すると奏音ちゃんの顔が輝いた。そのままの意味ではなく例えの表現で。

「おおう、そうかそうか、寛大なんだな二酸化炭素は」

 少し重くなったが、気体の名前からは卒業したい……。

「では、よろしくなっ! 空輝先輩!」

「ぐはっ!!」

 まさかの不意打ち、ウィンクしながら奏音ちゃんが言う。この破壊力は抜群だ、姉妹そろって可愛い。

「こ、こちらこそよろしく……」


 僕がジュースを用意し部屋に戻ってくると、奏音ちゃんは正座をして待っていた。

「はいこれ、ジュース。炭酸大丈夫?」

 そういって炭酸飲料の入ったコップを渡す。

「もちろん大丈夫だが、ぷぷぷ……」

 何がおかしいのか、口を押さえて笑う奏音ちゃん。

「どうしたの?」

「いや、だってぷっ、二酸化炭素が二酸化炭素の入った飲み物持って来ぷっ」

「二酸化炭素って言うなあぁぁぁ!」

「まぁ、それは置いておこう、ねーさんが蚊帳の外だぞ先輩」

 簡単に置いておかれてしまったが、確かにそんなことはどうでもよかった、今最も重要なことは悠さんのことだった。

「どうしてこうなったのか分かるのか奏音ちゃん?」

「まぁ、わかる。一言で言うとわかるのだが、説明にはまず宇宙の成り立ちから説明する必要があるのだけど、聞くか?」

「よし、聞こう」

それから一時間後――

「これで地球ができたわけだけど、ここまでは大丈夫か?」

この一時間黙って聞いてはいたものの、さっぱりわからなかった。

「全然わからないよ……」

「よし、じゃあ、おふざけはこのくらいにして真面目に話そうか」

「!? おふざけに一時間も使うなやぁ!!!」

「いや、無駄な一時間ではなかったぞ、ワタシはふざけてからじゃないと真面目に話せないんだ」

「どんな性格だよそれ……」

「よし、では真面目モード奏音。話します」

「まずはだ、今いるこっちの世界は『ティエラ』ってワタシ達は呼んでいるんだ」

「えっ、つまり、もうひとつ世界があるって言うこと?」

「まぁ、簡単に言うとそういうことだな、そのもう一つの世界って言うのがワタシ達の住んでいる『エルデ』だ」

「君たちは別の世界から来てるってこと!?」

「信じられないだろうが、これは真実だ」

「ああ、まぁ信じるよ」

「私たちの世界にはクラフトっていう、力というか、魔法というか、むむ、表現が難しいな」

「じゃあ見せてみてよ」

「ん、そうだな。サイコロある?」

 僕は机の引き出しに入っていたサイコロを取りだし、それを渡す。

「はい」

「おお、ありがと。これがもし十回投げて十回全部同じ目だったらびっくりしない?」

「うん、それはすごいね」

 では、といって奏音ちゃんはサイコロを振る……。

 結果は十回すべて六だった。

「な、これはすごい……」

「これがクラフトだ」

「サイコロで同じ数を十回出すので悠さんがこうなったの?」

「いや、これは簡単なものだからたいして体力を使わないんだよ」

「そうなんだ」

 頷く僕。

「クラフトはこのデバイスを介して使用する」

 そういって手首を見せる、そこには天使のリングのような黄色い輪が付いていた。

「事故のとき、ねーさんの腕光ってなかった?」

「ああ、そういえば光っていたな……」

「エルデの人たちは、天使の末裔みたいな感じなのさ、だからこのデバイスは天使のリングを使いやすくしたようなものだ」

「天使だったの!? なんで頭の上じゃないの?」

「考えてもみてよ、頭の上にこんなの浮かんでたらダサいだろ? いまどき頭の上に浮かべてるのなんて、ほとんどいないよ、お年寄りくらいなものさ」

「なるほどな」

「この力でねーさんは、ジェットコースター事故をできるだけ被害を少なくしたんだろうね」

「それで、体力を使い果たしてこうなったと?」

「うん、そう。相当な力を使っているからね」

「それで、悠さんは寝てればそのうち起きるの?」

 奏音ちゃんは深刻そうな顔をして黙ってしまった。

「……どうしたの? まさか、起きないとかじゃないよね!?」

 僕が言うと

「よし、ちょっと待っててくれ先輩っ!」

 そう言って窓から跳び移り、悠さんの家へと帰って行った……。部屋に残された僕と悠さん。

「起きてよ悠さん……、僕はどうすればいいんだよ……」

 ベッドに向かい合うようにして座っていると、扉が開いた。今度は窓ではなく、部屋の扉だ。

「兄貴ぃー、今暇~? ちょっとこ――っ!?」

 言い終わる前に悠さんの存在に気付いたようだ。

「おい美佳、ノックをしろといつも言ってるだろう」

「ななな、何で悠さんが兄さんのベッドで寝てるの? ま、まさかまさかまさか事後……?」

 こいつのせいでシリアスな空気が一気に飛んでいった。空気ブレイカーと名付けよう。

「んなわけあるがバカ野郎! タオルを額に乗せた人を見てそれはないだろうがっ!」

 僕が憤る

「ふふ~ん、私バカだけど、野郎じゃないもん、女だもん、じゃがいもん」

 ……じゃがいもん?

 僕は一通り事情を説明した。

「そんなことがあったんだ、そうとは知らずに……」

 珍しく美佳が素直に謝った。

「いや、いいんだ、知らなかったんだし」

「本当にごめんね、あのプリン兄ちゃんのだったんだ……」

 ……おや?

「お前、まさか、食ったのかあのプリン」

「知らなかったんだ……」

「明らか途中の話しが噛み合ってないところからみて、知ってたよな?」

「えっ、そんな、パンツはダメだよ……」

 そう言って顔を赤らめる美佳、会話が全く噛み合わない。

「お前のパンツなんかいるかぁっ!!」

「ネットとかで売ればけっこう高いんじゃない? ほら、私可愛いし」

「そうなの?」

「捕まるけどね☆」

「じゃあいいや」

 見事に僕の怒りを鎮めた美佳。こいつ、できるっ。

「ところで兄よ、悠さんけっこう汗かいてるみたいだから」

 以外と気がきくな、拭いてくれるのだろう、こういうときには頼りになるな。

「ああわかった、今出ていく」

「ペロペロしないの?」

「悠さんぺろぺろ……ってできるくァッ!」

「兄さんもけっこうバカだよね?」

 くっ、否定できない……

「じゃあホントに拭くからさ、タオルと水持って来てくれる?」

「ああ了解」

 用意して部屋に持って行くと

「覗くんじゃないよ、兄さん?」

 と釘を刺された。

「当たり前だっ」

 というわけで僕は今、自分の部屋の扉の前で正座をしている……。すると中から

「うわっ、悠さん肌綺麗……」

「あ、あの野郎、なんてことを……」

 僕は持ち前の妄想力を発揮する。

「胸は……、そうでもないなぁ、えっなんでこんなに柔らかいの!」

「ぶはっ!」

 美佳のやつ、絶対わざとやってるだろう……

 すると部屋の部屋の中からドスタッ! と音がし

「きゃっ! 何なのあんた!?」と美佳の声が。僕は急いで扉を開くと……。

「どうした美佳!? ッ――」まず初めに目に飛び込んで来たのは悠さんの一糸纏わぬ上半身の姿だった。

そして――

「「何見てんだ変態っ!」」

見事に息の合った美佳と奏音ちゃんのドロップキックが僕の顔面に直撃した。


設定裏話 エルデ:Erde…ドイツ語で地球 ティエラ:tierra…スペイン語で地球

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