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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第一章 ツッコミはある日突然に
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第4話 リミットブレイクスパゲッティー

 家に帰ったのは午後一時頃、意外と時間は経っていなかったようだ。

 部屋に戻ったところでケータイが鳴った。

『もしもし空君? 今家にいる? ちょっと部屋の窓開けてくれない?』

「うん、なんで? 別にかまわないけどさ」

 電話は切れてしまったようだ。

 窓を開けると、隣の家の窓から悠さんが顔を出していた。

「お帰り空君、待ってたよー♪ どこ行ってたの?」

「いや、ちょっとね出かけてた」

 明日着る服を買いに行っていたとは言えない。言えないよ。

「ふ~ん、あ! ところでさ空君お昼食べた? うちに食べにこない? ついでに明日の話もしたいんだけどなぁ♪」

 なるほど、そういうことか。

「え、でもなん迷惑じゃ……」

 特に悠さんのお母さんに。さすがに僕は彼女のお母さんの前でデートの予定を話し合えるような勇者ではない。ヘタレな僕には無理です。

「うーんとね、今お母さん家にいないから二人で食べることになるけどどうかな? それに迷惑なんかじゃないよ♪」

 これまたウィンクが飛んできた。ちょうど家には人がいなくて昼食に困っていたところだ。二人と言うことなら断る理由もないので、いやとてもありがたいので悠さんの家に行くことにする。

「えーと、そうだなじゃあお言葉に甘えることにするよ」

「わーい、空君とお昼ごっはん~、じゃあ飛んで」

 手を挙げくるくる回りながら喜んでいたところまではいい、いいといっても可愛いのいいだ。最後の一言がよく聞き取れなかった。飛んで? いや気のせいだろう。

「悠さん、最後の言葉が聞き取れなかったんだけどもう一回言ってくれる?」

 きょとんとした表情で言ってくれた。

「え、飛んでって言ったんだけど。ああ、その場でジャンプじゃないよ、窓から窓にさ。ほらほらほら、こっちおいでよ」

 悠さんが場所を空けにこにこしながら手招きする。

 どうやら聞き間違えではなかったようだ。互いの窓の距離は約二メートル、確かに近い。もちろん飛べないこともない、昨日悠さん飛んで入ってきたもんね。思い出して僕は赤面した。だが、彼女の家に窓から侵入とはいささか問題があるのではないか? いささか、というか重大だ。ビッグプロブレムだ!

「飛べるかー!」

 結果、叫ぶことになった。僕の声が窓を飛び越え悠さんに届いた。

「んん、そう? じゃあ玄関で待ってるから下りて来てよ♪」

 うなずき窓を閉めカーテンを閉める。さっき五條さんに『その服はダサい』と言われたので、一応着替えた。さっきのよりはおそらくましになったはずだ。

 昼食をいただくにあたり手ぶらでは申し訳ないので冷蔵庫に買い溜めしてあった炭酸飲料を持っていくことにする。

 家を出ると悠さん(私服ver)が待っていた、腕を後ろで組んでいる。朝は制服だったが今は……、このズボンはなんて言う名前なんでしょう? 服に関してはからきしだ。

 たしかロングジーンズってやつだ、さっき五條さんがそんなことを言ってた気がする。

 上は白いワイシャツに少し下げたネクタイ、ボーイッシュな感じでよく似合ってる。ワイシャツの白がきれいなさらさらとした黒い髪を目立たせている。まぁどんな服を着ても着こなせるんだろうな悠さんは。

「おじゃましまーす」

「いらっしゃい空君」

 先に家に入っていた悠さんが動物のぬいぐるみのようなスリッパを出してくれている。

「犬と猫どっちがいい?」

「猫でお願いします」

 僕は猫派だ。猫が好きだよ! アニメとかの影響でね、猫耳が好きってわけではないのだけれど、とりあえず僕は猫派なの。

「へー、空君も猫派なんだ、ボクもだよ♪」

 リビングへと通される。

 僕の家とは違いよく整理されている。引っ越してっきたばかりということだけが理由ではないだろう、きっと悠さんのお母さんはきれい好きなのだ。

 あれ? そういえば僕女の子の家入るの初めてじゃない? 初めてが悠さん(の家)かー嬉しいな、卑猥な表現なんてしてないぞ! 絶対してない、そう聞こえたなら勘違いだろう。

「空君、何考えてるの? 顔がにやけてるよ?」

 しまった! 顔に出てしまっていたか!

「え、いやさ、あの、僕女の子の家に入るの初めてだからさ、嬉しかったり緊張しちゃったりでね? そ、そうだ! これ、飲み物持ってきた! 飲んでよ」

「ふ~ん、まぁいいけどさ。空君女の子の家初めてなんだ、じゃあボクの家が初めてなんだね♪ ああぁありがと♪ このジュース好きなの」

 心なしか悠さんも照れてるような気がしたが、多分気のせいだろう。

「今から作るからそこに座ってて♪」

 悠さんは長方形のテーブルを指差した、イスは四つ用意されているが悠さんは何人家族なんだろうな?

 あれ? 今なんて言った?

「今から作るだって!?」

「うん? そうだよ、空君何か苦手なものとか食べられないものとかある?」

「マヨネーズ以外はほとんど大丈夫だよ」

 わー、女の子の手作り料理だってー! 楽しみだなー、今日は初めてばっかりだ!

「男の子なのに珍しいね、マヨネーズって男の子好きなイメージがあるけど」

「いや、あのおいしいのも混ぜたら逆に不味くなっちゃったみたいな感じがね」

 例えるならドリンクバーだ。単品同士ではおいしいが、混ぜると恐ろしい飲み物が出来上がる。でもたまにおいしいのもできるよね、それがマヨネーズとは違うところだ。

 カウンター越しに悠さんを見ると、どうやら冷蔵庫に入ってるものを確認しているようだ。

「じゃあ今日はスパゲッティーにしよう♪ いいかな空君?」

「もちろんいいよ! 僕麺類好きだからむしろ嬉しいよ!」

 まぁ悠さんが作ってくれるって方が何倍もうれしいけどね! 悠さんが作ったマヨネーズなら食べられる気がするよ! 何でも食べられるね!

「おっけー、では!」といって小麦粉を出す悠さん。

 ミートソース作るのに使うのかな? なんて思っていると、ボウルに大量に入れ始めた!

「え! 悠さん、まさかとは思うけど麺から作るつもり!?」

「そうだよ?」

 きょとんとする悠さん、かわいい。

「麺って買ってきたのを茹でるものじゃないの!?」

 悠さんは驚いたような表情になる。

「スパゲッティーって売ってるの!?」

 嘘ですよねー、悠さん?

「売ってます、普通に売ってるよ!」

「ボクはじめて知ったよぉ、なんでお母さん教えてくれなかったのかな?」

 悠さんの説明によると、どうやら麺類はいつも悠さんが作ることになっているらしく、常に手作りだそうだ。だからキッチンにはパスタメーカーなんてものも完備されている。

「すぐできるから待っててよ」

 僕は手作りのパスタってのも食べてみたいのでうなずいた、悠さんが作るものに食べれないものはないだろう!

 悠さんの手際はいいもので、十分もしないうちに麺をゆで始めた。やはり慣れているのだろう。

さらに十分後。

「できた♪」

 悠さんができたミートソーススパゲッティーを僕の前に置く。いいにおいだ。見た目も完璧。

「はい、どうぞ。上手に作れたとは思うけど、空君の口に合うといいな♪」

 では、いただくとしよう。両手を合わせる。

「いただきます」

「どうぞ、召し上がれ♪」

 フォークで麺を巻き口に運ぶ。――――なんだこれは? スパゲッティーなのか? そんな感想だ。

 僕が今まで食べてきたのがスパゲッティーだったのならこれはスパゲッティーではない。本来であればこの表現は不味かった時に使っただろう。

 美味しいのだ、スパゲッティーと言う名の料理では再現できない美味しさだ。

 十点満点が一番おいしいスパゲッティーがあるとして十一点のスパゲッティーができてしまった。じゃあこれはもうスパゲッティーじゃないじゃないか。新たな料理だ。

 僕の表現力を以てするとこれほどの表現でしか表せないのが惜しい。

「空君、説明長すぎ」

「え?」

「で、どう? おいしい?」

「もうスパゲッティーじゃないくらいおいしいよ、こんなにおいしい料理を食べたのは初めてだ」

「ホント!? 良かった♪」

 にこりとほほ笑む悠さん。これまた可愛い!

 ふと気が付くと皿の中には何も残っていなかった。あまりのおいしさに記憶が飛んでしまっているようだ。もう少し味わって食べたかったなぁ。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした♪」

 お粗末さまだなんて謙遜でも、これは謙遜する必要がないほどに美味しかったのだが。

「じゃあボクの部屋で話そうか」

 え! 悠さんの部屋に入れるの!? 確かに僕の部屋と距離が近いのでカーテンが開いているときには見えてしまうことはあるのだが。まさか、入る日が来ようとは……。

「部屋に入ってイインデスカ!?」

 首をかしげる悠さん。

「だって……空君ボクの彼氏だもんダメなわけないじゃないか♪」

 僕の反対側に座っている悠さんは目をそらし、顔を少し赤らめながら言った。

『だって、空君ボクの彼氏だもん』僕の頭はその部分だけを録音した。よし、再生できる!

 ちゃんと保存できているようだ。僕の頭の着ボイスにでも設定しておこう!

 さりげなく食器を下げてくれる悠さん、しっかりしてるなぁ。

「さぁ、いこっか♪」

「うん!」

 初めての女の子の部屋(美佳の部屋はカウントしない)つい緊張してしまう!

 悠さんに連れられ、二階へ。

 悠さんの部屋に入る、何だろう、僕の部屋とは違う女の子の雰囲気、入っただけでドキドキしてしまう。部屋の中にはUFOキャッチャーで取ったであろうぬいぐるみたちが所せまし並べられていた。ぬいぐるみがこれだけあっても汚い部屋とは全く感じさせないところがすごい! と感心していると。

 ふと気付く、押入れのわずかな隙間から光が漏れている。

「悠さん、押入れに何が入ってるの?」と手をかけようとしたその時。

 スパッと閉められた。

「ダメだよ空君? 女の子の押入れには夢と希望とぬいぐるみと下着くらいしか詰まってないの。見たりしたらダメダメ♪」

 顔は笑っていたし、言葉も柔らかい。しかしなんだろう、どことなく責められてる気がした。まぁ当り前か、僕も見てほしくないものは部屋に置いてある(あくまで健全な、女の子が載った本とか健全な)。

 僕は反省する。

「ごめん悠さん、ホントごめん……」

「いやいや、そんな! 謝らないでよ、大したことじゃないの、責めるつもりはなかったの? いや全く責めてないし!」

 悠さんは笑って許してくれる、ありがたいなぁ、テンションが下がっていては明日のデートにも影響が出てしまいそうだ。切り替えなくては!

「さて、じゃあ本題にはいろっか♪」

 そう言って部屋の中央に設置された小さめのテーブルを囲むように座る。

「おーけー! どこまでもはいってやるぜー!」

 テンションを上げすぎた。

「お、おう! じゃあ、どこの遊園地に行くかなんだけどさ! こことかどうかなぁ!」

 ノリがいいな悠さん、ホントいい人だ。

 そう言ってパンフレットを差し出す悠さん。そこはここから電車で二十分くらいのところにある比較的大きなテーマパークだった。

「おお! いいんじゃない!? 僕もここがいいと思ってたんだよ!」

「おおぅ! そうかい! やっぱり気が合うな空君、さすがボクの彼氏さんだ!」

 その一言で、照れた! 僕は照れた! それにより僕のテンションは比較的落ち着く。

 悠さんも照れたようだ、言ってから気づいたようだ。勢いに任せてつい言っちゃったって感じかな?

 おかげで二人とも落ち着いた。

「ちょっとジュース持ってくるね、さっき空君持ってきてくれたやつ」

「ああ、うん、手伝おうか?」

「いや、いいよそのくらい一人でできるし♪ それより押入れの中見ないでね♪ 見たら空君の机の最下層に隠されているエッチな本、バラしちゃうからね♪」

 !? 知られているだと? まさかそんな!? ありえない、僕の机の厳重なセキュリティを突破したのか!?

「悠さん、何故それを……?」

「ん? 冗談だったんだけどホントにそうなの? 空君エッチだなー♪」

「冗談だったのかよ! 自白、というか自爆しちまったじゃないか!」

 悠さんはにこにこと笑い、部屋を出て行く。出て行くときにウィンクを忘れない悠さん。そのウィンクに僕はもう……。

 部屋に一人になった僕、女の子の部屋に一人だ。もしここが友人(男)の部屋だったらもちろんエロ本探しが始まるわけだが、ここは女の子の部屋だ。まさかそんな本もあるわけないので探さない、ないものは探せないだろ?

 さぁ、気まずい。さっき押入れは開けるなと言われたので開けない、絶対に開けないぞ、僕は反省したのだ。さっきの申し訳なさが込み上げてきたのでドアに向かい土下座をして待つことにする。

 すぐに悠さんは帰ってきた。

「そ、空君何してるの? 土下座ってやつですか?」

「いや、気分が土下座だったもんでね、ついやってしまいました!」

「あはは、空君面白いなぁ♪」

 またテーブルに向かい合って座る。

 思っていたよりも喉が渇いていたらしく、ジュースは一気に飲み干してしまった。

 そこでふと気付く、これ、悠さんがいつも使ってるコップなんだよな、いくら洗ってあるとはいえ、間接、かん、せつ、キス?

「いや、違うからねそれ、空君それ違うから」

「え、なに? 悠さん、洗ってあるであろう悠さんちのコップを使って『あれ? これ間接キスなんじゃない?』 とか僕が思ってたとでも言うつもり?」

「ふ~ん、そんなこと思ってたんだ♪ ただボクは空君が『このジュース、惚れ薬でも入ってるんじゃないだろうな?』とか思ってるような顔だったから言ってみただけなんだけど」

 ジト目な悠さん、僕の脳内『悠さん』フォルダにまた一枚CGが追加される。フルコンプリートまでの道のりは遠い。

「惚れ薬が入ってるだなんてことは断じて思ってなーい! そんな薬がなくても僕はもう悠さんにメロメロさ!」

 あれだけおいしい料理を作れる人は食べ物にいたずらはしない。食べ物に失礼だからな。

 あれ? 僕今すごいこと言わなかったか?

「な! 空君、嬉しいこと言ってくれるじゃないですか♪」

 そうは言いつつも照れてる悠さん。僕だって照れてるよもちろん。

 おもむろにテレビをつける悠さん。ちょうど天気予報がやっていた。

 天気予報士のお姉さんが言うには明日僕たちの行く遊園地周辺の天気は四十パーセントの確率で雨らしい。

 四十パーセントは無視できる確率ではない、初デートに雨が降るってのはいやだなぁ。

「雨降るかな? 降ったらやだね」

 僕がそういうと悠さんは

「大丈夫、大丈夫♪ 雨なんて絶対降らせないよ! 実はボク晴れ女なんだ、だから僕が出かける日は雲ひとつない青空が広がっているのさ、絶対にね♪」

 どこからその自信が湧いてくるかは知らないが晴れ女ということらしい。自称雨女って言うよりは自称晴れ女の方が心強い。

「言われてみれば悠さんが引っ越してきてから雨降ってないね」

「ふっふっふ、それもボクの晴れ女パワーなのさ♪」

 まぁとりあえず晴れ女パワーはすごいらしい。


 その後、集合時間などを話し合い一段落したところで家に帰ることにする。

「じゃあまた明日悠さん、今日はお昼ご飯ありがとう、また明日」

「うん、じゃあまた明日ね♪」

 明日は楽しい一日になりそうだ! 期待で胸を膨らまし家に帰る。

 家に帰ると言っても、家が隣なので一分とかからない。家に帰るとリビングのソファーに寝っ転がり美佳が本を読んでいた。

 『本を読む』という行為には何の問題もない。問題があるのは読んでいる本と、その読み方だ。

 おそらく帰って来てからあまり時間が経っていないのだろう。美佳は中学の制服を着ている。女子中学生の制服、つまり下はスカートだ。あんまり無防備なのでその下に穿いているパンツという名の純白の布が丸見えなのだ。

 兄として、一人の男として、これは注意せざるを得ないので注意しようと近づいたその時に気づいた。気づいてしまった。そう、読んでいる本だ。

「おい美佳、何故、なんで僕の机の最下層に安置してあった超健全な本を読んでいる?」

 美佳が読んでいた本はさっき悠さんにばれてしまったあのエロ本(悠さん曰く)だ。

「あ、おかえり兄ちゃん」

「ただいま、じゃない、そんなことはどうでもいい、質問に答えろ」

「ああこれ? 兄さん帰ってるっぽいから部屋にコンパス借りに行ったんだけど、いなくてね、仕方ないから自分で探そうと思って引き出し探していったら見つけちゃってね~」

「まあ、超健全らしいから別に問題よね~兄ちゃ~ん」

 くっ、これを墓穴と言うんじゃないだろうか? 墓穴でもいい、穴があったら入りたい!

「勝手に僕の部屋に入るなァーーーー!」

「それと美佳、パンツ見えてるぞ、もう少し恥じらいというものをだな」

「見たいの?」

 何だこいつ? ナニ言ってやがる、僕が妹のパンツなんて見たいわけないだろ?

「ふざけるな、見たいわけないだろ、お前のパンツなんて朝ご飯のパンと同じだ」

 ああ、僕失言。僕はパンとパンツをかけて何とも思わないことを表そうとしただけなんだ。分かってくれるよな。

「きゃー! 私のパンツは朝ご飯なんですか! 食べちゃうんですか!? いやだよそんなの、実の兄が妹である私のパンツを食べたいだなんて! もぐもぐだなんて! 最低! 変態!」

 ほらねー、思った通りだ、言ってから気づいた。どうしよう……。

「違う、僕は最低でも変態でもない、最高だ」

「わけがわからないよ兄上」

「とりあえずだ美佳、もう少し人目を気にしてくれ」

「まぁ、兄さんよりはしてるよ、私だって女の子だもん、人目は気になる。こんな格好してるのは家だけだよ、知らないの兄さん、私結構萌えるの」

「お前には萌えない!」

「間違えた、モテるのって言おうとしたの、中学じゃあ一週間にいっぺんは下駄箱に手紙入ってるもん」

「どうせ果たし状とかだろ? そんなこと自慢すんな」

「そうそう果たし状」

「ってそんなわけあるか!」

 何故か僕が突っ込んだ。

「なんだわかってんじゃん兄ちゃん、ラヴレターだよ、ラブレターじゃないよ、ラヴレター」

「兄ちゃん貰ったことある? あ、ごめん!」

 どうせわざとだろ? 口なんか押えちゃってさ。ああわざとらしい、嫌味なやつめ。

「そうだ。ない、ラブレターなんて靴箱に入ってたことなんて、小学校から高校まで一度もない。幼稚園までさかのぼってもない!」

「だよね~、兄さんがもらえるわけないもんね~。告白されたこともないんじゃないの~?」

 ああ、もちろん告白されたことなんて、告白されたことなんて? あったなそう言えば。

「聞いて驚け美佳よ、聞いて喚けよ。僕は告白されたことがある!」

「いや、強がりとかいいから兄さん、悪かったよ。嘘が苦手な兄さんに嘘つかせるような真似をして。謝るからさ、そんな嘘言わなくていいよ」

 完璧嘘だと思われているようだ、なら喚かせてやろう!

「なんとだな美佳、僕が悠さんに告白したんじゃないんだ、悠さんが僕に告白したんだ!」

 寝っ転がっていた美佳が飛び起きた。

「ええ! マジで!? 兄ちゃんが告ったんじゃないの!?」

「ああ、僕もびっくりだったよ」

 待てよ? 彼女になるって言われてそのあと僕も告白した記憶が……。ま、いっか。

「あんなに可愛い悠さんだったらもっとましな男を選べただろうに、なんで兄さんなんかを……」

 さらに美佳は続ける。

「確かにおかしいとは思ってたんだよ、チキンでヘタレな兄さんがあんなにかわいい子に告白できるのかってね」

「ああ、そうだ。チキンでヘタレな僕はあんな可愛い子に話しかけられもしないだろう、ましてや告白なんてもっての外だ」

「そうだよね。でも、悠さんが兄ちゃんに告白とか、世界の七不思議に選ばれても私は驚かない、いやむしろ選ばない方が驚くね!」

「まぁ確かに七不思議に選ばれても不思議ではないが規模が小さいかなぁ」

「私にとっては一生使っても解けないミステリーだよ!」

「そうだね! 兄としては他のことに一生を使ってもっと有意義に生きてほしいな!」

「でさ、兄さん」

「なんだ妹さん?」

「明日デートに行くって悠さんが昨日言ってたけど、ホントに行くの?」

 僕は自慢げに言った。もう隠す必要もないだろう。

「ああ、行くとも! さっきなんて悠さんの家で悠さん手作りのスパゲッティーをごちそうになったんだ! そのあと部屋でその話をしていた」

「へ、へぇすごいね兄ちゃん。おめでとう」

「ああ、ありがとう、じゃあ僕は部屋に戻って明日の準備をするから」

「あ、兄さん!」

「なんだ美佳?」

「兄さん明日何着て行くの? 自覚ないようだから言うけど、兄さんの服のセンスは壊滅的だよ?」

妹にまで言われてしまった。さっき五條さんに言われたばかりなのに。またしても言われてしまった。

「うっさい! そんなの分かってる! さっき服買ってきたよ!」

「ああ、あのベッドの上にほっぽってあったビニール袋?」

「そうだよ! 洋服屋行ったら、中学んときの女友達いたからその子に選んでもらった」

「だから問題ないだろ? 問題あったらその子のせいだ!」

「見てあげよっか?」

 なんだこいつ、ファッションリーダーでも気取ってんのか? だが女の子の意見と言うのは大切だ。インポータントだ。なので悔しいが見てもらうことにする。

「ああ、頼むよ」

 部屋に着くと美佳が言った。

「じゃあ着替えてよ」

はっはー、別にいいんですよ、妹の前でパンツ一丁になるのは。でもさ、そういうのって妹が気にするものなんじゃないんでしょうかね? 気にならないならいいさ、脱いでやる。

 僕が上着を脱ぎ服で視界が見えなくなったところだ。腹に衝撃が走った!

「げほぅ!」

「ちょっと兄さん! 何レディの前で脱ぎ始めてんの!?」

そんな理不尽な……。

「だってお前が着替えてよっていったんじゃねぇか!」

「ちーがーうー! 私は兄ちゃんの裸見たところで何も思わないでしょうが! ばっかじゃないの? カーテンくらい閉めなさいよ! 悠さんこっち見てるじゃない!」

 僕が振り返り窓の方を見ると、悠さんが顔を手で覆っていた。

「兄さんの方が人目を気にした方がいいんじゃないの?」

 ごもっともです、美佳さん、おっしゃる通りです。

「わ、悪い、今度から気をつけ……ます」

 もう一度外を見ると悠さんはカーテンを閉めてしまっていた。申し訳ないことしたなぁ、明日謝ろう。

 今度はこちらもカーテンを閉め、気を取り直して着替える。着替え終わり美佳の感想を待つ。

「まぁ、悪くないんじゃない? いいセンスしてるわ、その女友達」

 どうやら文句はないらしい、心なしか残念そうな反応だ。僕としては嬉しい限りなんですけどねー。

「そうか、なら明日はこれで行くよ、ありがとな美佳」

「礼なんていいよ、きもちわるい。あと兄さん、パンツ! 色は紺がお勧めよ」

「!? なんで自分の妹にパンツを色を勧められなきゃいけないんだよ!」

「あはは、じゃっ頑張ってねおに~ちゃん」

 美佳は笑いながら部屋を出て行った。

くそっ! あり得ない、この僕があんなのを一瞬だけ可愛いと思ってしまった! とくに最後のところの『おに~ちゃん』だ、何と言う破壊力、妹属性が皆無な僕にまで……。

 とりあえず着ていた服のタグを今のうちに外しておこう、着いたまま着て行ったら悠さんにデートのために服を買ったとばれてしまう。

 そう、明日はデート、東雲空輝十七歳。オタクな僕ですが、生まれて初めてデートに行きます!


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