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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第二章 ツッコミはある日突然に2
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第20話 パンツが欲しいなんて言ってない!

「こうしてると初めてのデートの時を思い出すね」

 適当に奏音ちゃん達へのプレゼントが売ってそうな店を探しながら歩いていると悠が微笑みながら言ってきた

 恥ずかしいのか照れているのか、もしくはその両方なのかは分からないが、悠の顔はまだ赤い。赤いと言っても先ほどのようなばら色ではなく、ほんのり桜色程度に落ち着いている、まんじゅうみたいで美味しそうだ。

――ぷにっ

なんだこの柔らかくも張りのある肌は、男の僕では考えられない

「えっ!? 何空君、なんでボクのほっぺをつっつくの!?」

 僕はつい悠の頬をつついてしまっていた、本当につい、衝動的にと言ってもいいかもしれない。突かれた悠はわけがわからないといった表情を浮かべ驚いている

「いや、美味しそうだったから?」

「何で疑問形!? ボクが訊いているんだよ!? しかも美味しそうって、どこのあんぱん男さっ! ボクは愛と勇気以外にもお友達はいるよぉ!」

「あれってさ、自分の顔をちぎって渡す方も渡す方だけど、食べる方も食べる方だよね、どんだけお腹減ってんだって話しだよ」

「そ、そうだね。でも見てると美味しそうだけど」

「それはわかる。でもさ、脳とか声帯とかないのかな? ていうか、骨ってあるんだろうかあの男……」

「それは……、高校生がする話しじゃないね……」

あ、悠が逃げた。たしかにこんな話しをしていてもつまらない、切り上げよう

「そうだね……」

こうして色んな意味で大人の事情満載な話しは僕たちのテンションを下げ幕を閉じた。

「あ、このお店見てみようよっ!」

 そう言って悠が指差したのはアクセサリー屋さんだ。

「うん、いいよ」

 店内はそこまで混んでいない。客層は僕達のような高校生から、お年寄りまでと幅広いようだ。

「みてみて空君! これ空君のデバイスに似てるっ!」

 悠が見せてきたのはネックレス、確かに僕のデバイスに形は似ている、が、もちろんこれはただのアクセサリー、デバイスではない。

「外見似てるから買おうかなぁー、おそろいみたいな感じでねっ」

「いいん、じゃない?」

 その笑顔に目を逸らしつつ僕が言うと悠はくすりと笑い

「あー、空君照れてる! さっきのお返しだよっ♪」

 悠は実に楽しそうだ。悠に楽しんでもらえれば僕はそれでいいのだけど。

「あー! やっと見つけましたお兄ちゃんっ!」

 どこかで聴いたことのある鈴の音のような声に振り向くと、ルーナが立っていた。手には袋をぶら下げている。おそらくケーキでも買ったのだろう。

「お、おかえりルーナ」

「探したんですよっ!」

 ルーナは少し怒り気味?

「普通あそこは怒った私を追いかけるべきでしょうお兄ちゃん! でもいいです、私にも謝らなくてはならないことができました」

「そ、そうなの?」

「えーと、ごめんなさいお兄ちゃん。ケーキ屋さんでチーズケーキだけでなく、お兄ちゃんが好きと言うことで、その、あくまでお兄ちゃんが好きと言うことでです、チョコレートケーキも食べてみたんです」

 もしかしてこいつ、あれだけ言っておきながらチョコケーキ食べたことなかったのか?

「そしたらですね、チーズケーキほどではないまでも、その、うーん」

 やたらと勿体ぶるルーナ、認めたくないのだろう

「チョコレートケーキも、食べられないことはありませんでした!」

「素直に美味しかったって言っちゃえよ!」

「むぅ、お、お、思ったよりも食べられました!」

「『お』まで言ってなんで美味しかったって言わないんだよ、変化球はいらないよ!」

「お、おい、おいおい語っていくとしましょう!」

「どんだけ言いたくないんだお前! ていうか、今まで食べたことなかったの?」

「ええもちろん」

 さも当然のように言うルーナ

「食わず嫌いかよっ!!」

 ホントにもう、よく食べたことのない物をあそこまで否定できたものだな……。

 結局ルーナは美味しかったとは言わなかった。

 ルーナが合流したところでプレゼント選びを再開する。

「僕が思うに、奏音ちゃんが欲しい物は分からないから、奏音ちゃんに似合うものを探したらどうだろう?」

「ほほぅ空君、頭いいね! ナイスアイディアだよっ!」

「だからさっき電車の中で欲しい物を訊こうとしたのに、お兄ちゃんが止めるから……」

「意味ないじゃん! 誕生日プレゼント何欲しい? ってお前なぁ、ドッキリも含めてプレゼントなんだよ! もらえるものが分かっちゃってたら嬉さ半減しちゃうだろ!?」

「でも例えばですよ? お兄ちゃんが普段欲しい欲しい言ってる私のパンツ。その時点で祝う側の私達はお兄ちゃんの欲しい物が分かりますね」

 言ってない、パンツが欲しいなんて言ってないです。

「え、空君ルーナちゃんのパンツが欲しいの……? ナニに使うの……」

「やめて! カタカナで言うのやめて! あと僕ルーナのパンツが欲しいなんて一度たりとも言ったことないからね!」

「普段から言ってるお兄ちゃんとしては、多分誕生日プレゼントはパンツだなって予想できるわけですよ」

「予想外すぎて声も出ないわ!」

「でもツッコミはできそうだね空君♪」

 もういい加減分かって頂けるとは思うが最後にもう一度確認として言わせて頂く。パンツが欲しいなんて言ってない

「つまり何が言いたいかと言うと、結局は欲しい物を聞いたところで結果は同じ、と言うことです」

「なるほどたしかに、そう言う考えも方もできるけどさ、例え欲しい物でなかったとしても、ドッキリでプレゼントがもらえるってことが最大のプレゼントじゃないかな?」

「分かりました、じゃあお兄ちゃんへのプレゼントは私の下着上下セットにします……」

「お前、微塵も分かってないだろう!?」

 どこでそんな話しになった……

「へ、変態だ! ボクの彼氏が変態だよぉ!?」

 悠が驚愕の表情を浮かべる

「どうしてそうなる悠!? 話し最初から聞いてたよね!?」

「もちろん聞いてたよ! だからこそ言ってるんじゃないか! 空君変態だぁ!」

「あ、お兄ちゃんが倒れた……」

「…………」

 もうダメ、立ち直れない……

「あはは、冗談だよ空君! それに例え空君が変態さんだったとしても、ボクはそんなの気にしないよ! 空君は空君だからね!」

「あ、お兄ちゃんが復活した……」

「立ち直り早ッ!?」

「自分で自分に突っ込んだね空君……」

「おうっ!」

 まずい、このままでは一向にプレゼント選びが進まない……、なんとかせねば!

 僕はとりあえず手近な髪留めを手に取る、可愛らしい黒猫が付いたヘアピンだ。

「これ、とかどうかな?」

「む、か、可愛い、ね……」

 悠が一瞬目を輝かせるも、なんでかテンションが下がった様子。可愛くないのだろうか?

「いいんじゃないですかお兄ちゃん、でも奏音ちゃんにならその大きさのヘアピンでは小さいかもですよ?」

「あぁ、たしかに。奏音ちゃん髪長いからなぁー、ゴムとかのほうがいいのかな?」

「そ、そうだよっ。ゴムの方がいいかも! いや、ゴムの方がいいね! 断言するよ! あーボクもそろそろ新しいヘアピン買おうかなぁ……」

 悠は言いながら自分のこめかみあたりについている赤いヘアピンに触れる。

「まぁ、今日買わなくても、下見程度で構わないんだけどね」

 僕達は店内を一通り見て回り、他の店もみてみようということになった。

「ちょっとルーナ」

 僕はルーナを呼び、小声で悠に聞こえないように言う

「ちょっと悠を連れてトイレにでも行ってきてくれないかな? 五分くらいでいいんだけど」

 ルーナは疑問符を浮かべながらも「お兄ちゃんの頼みなら」ということで引き受けてくれた。

「空君、ルーナちゃんと少し……、うんちょっと離れるねー」

 悠はルーナと歩いて行った。僕はそれを見送り、もう一度先程のアクセサリー屋に入る

 僕が悠に少しの間退席して頂いた理由。間違っているかもしれないが、おそらく悠はあのヘアピンが気に入った。もしあれを奏音ちゃんにあげるとなると、自分が付けることができない、だから少し落ち込んだのではないか? という僕の推測だ。だから買う為に戻ったのだ。

 さすがにこういう女の子専用みたいな店で、男一人というのはなかなか恥ずかしいものではあるが、まぁいいだろう。僕はさっきの黒猫のヘアピンなどを購入し、店を出た。そして数分後。

「空くーん、お待たせー」「お待たせしましたお兄ちゃん。お礼はアイスでいいですよ、もちろん味はチーズケーキで」

 悠とルーナと合流、悠は「お礼ってなぁに?」とルーナに訊いていたが、ルーナはうまくごまかしていた。グッジョブルーナ!

 このあと僕は、アクセサリー屋さん程度の女の子専門店がいかに僕にとって居やすかったかを知ることになる。


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