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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第二章 ツッコミはある日突然に2
27/44

第7話 マッハ1=1225 km/h なんだって

 ルーナの残していったラーメンを食べ終え、奏音ちゃんが口を開いた。

「ごちそうさまでした。さてと本題に入ろうか、第2回ルーナ先輩はどうしたら戻るのか会議を始めたいと思います」

「そうだね、さっきは途中で終わっちゃったから」

「えと、たしかどうしてチーズケーキ返すだけじゃ戻らないかってことだったよね、説明してくれる奏音?」

「うん、チーズケーキ返しただけじゃ何のショックも与えられないだろう? ワタシが与えてしまったショックくらい、もしくはそれ以上のものを与えないとダメだと思う」

「なるほどね、それでどんなショックを与えればいいの?」

「わかんない……、記憶無くしておかしくなっちゃうくらいなショックなんて、どんなのだろう? ていうかルーナ先輩どんだけチーズケーキ好きなんですか……」

「とりあえず、当分様子見ってことにしておく?」

 僕が言うと、悠は少しふくれて

「ルーナちゃんが空君にベタベタするのやだなぁ……」

 奏音ちゃんは「そういわれてもなぁ」と言いながら困ったような表情を浮かべている。

「安心してよ、僕が悠以外を好きになったりなんてしないからさ、信じられない?」

「そ、空君のことは信じてるよっ! でもさほら、なんというか、女心って難しいんだよ……」

「じゃあ……、悠も泊まっていく? どうせ家も隣だし」

「いいの!?」

 悠の顔が一気に華やいだ

「もちろんいいよ、というか許可しなくても今日の朝とかうちにいたよね?」

「えへへ、じゃあ色々持って来るね♪」

「あ、あの先輩!」

 テーブルから身を乗り出し手を挙げる奏音ちゃん

「なになにっ!?」

 そしてもじもじしながら「ワタシもいいかな?」と上目遣いで尋ねてくる。

「ぼ、僕はかまわないけど……、美佳と一緒に寝てくれる? 僕はソファーで寝るから。ルーナと悠が僕のベッド使っていいからさ」

「それじゃあ意味ないじゃん!」

 悠の勢いに少し驚いた。

「いやいや僕にどうしろと?」

「ふふ、愚問だよ空君。一緒に寝ようよ!」

 何度目になるかわからないが、何度でも言おう。僕に女の子と一緒に寝るなんて度胸はこれっぽっちもない、皆無だ。もし僕の生活がラノベとか漫画とかになるとしたら、それを読んでくれる読者さんからは「お前、何回も寝てるじゃないか」とか「嫌なら俺と代われ」とか言われる気がするが、残念ながらこれは漫画でもラノベでもない、したがってそんな感想はこないわけだ。

 まぁ、長々と余計なことを言ってしまったが結局のところ何が言いたいかと言うと、僕はまだ女の子と一緒に寝るなんてことはできません、チキン野郎なんです! でも昔に比べると恥ずかしいこともずいぶんと言えるようになったし、これは進歩なんじゃないかな? 僕も成長したものだ。

「たしかに空君は成長したと思うけど、一緒に寝るくらいいいんじゃない?」

「えっ? 僕何も言ってないよね?」

「うーん、なんというか空君の心の声が聞こえてきた」

 えへへと笑う悠、可愛い……

「ありがとう!」

「だだ漏れじゃないか!」

「とりあえずだ先輩、ルーナ先輩はどこ行ったんだろう?」

 その時玄関の扉が開く音が聞こえた。

「ルーナ帰ってきたのかな?」

 僕が玄関に見に行くと

「あ、兄さんただいまー」

 実の妹の美佳が真新しい制服に身を包み僕に帰宅時に言う挨拶を時速1225キロメートルのストレートで投げてきた。僕はマッハで投げられた言葉を受け止めこちらもマッハで投げ返す

「おかえり美佳さん、ところでその後ろの奇麗な銀髪が特徴的な女の子は誰かな?」

「なんか外人さん拾っちゃった」

「犬拾っちゃった、みたいなノリで何言ってんだよ!?」

 美佳が苦笑していると後ろの銀髪外国人さんは

「お兄ちゃんただいまぁー!」と抱きついて来た。

「ちょっと、ルーナやめろって!」

 美佳の戸惑いの表情を尻目にルーナはツーサイドアップをぴょこんぴょこんと跳ねさせている。どうなってんだこいつの髪……。

「兄ちゃん、ドユコト!?」

「カタコト!?」

 リビングへと移動する

「あ、美佳ちゃんおかえりー、お邪魔してまーす」

 僕がルーナと格闘しながらドアを開けると悠の声

「あ、悠さん。ところでこの人誰ですか? 私が拾って来たんですけど、なんかにーさんと知り合いっぽくて」

「この子は高校の友達のルーナちゃんだよ、同じクラスなんだ」

「え、兄ちゃんまさか同級生に自分のこと『お兄ちゃん』なんて呼ばせてるの?」

 そういって驚愕の表情を浮かべる美佳

「そんなわけないだろ! 僕はどんな変態さんだよ!」

「どんなって、言葉では表現できないくらいな変態さんだよ!」

「それはすごい変態さんだな! っておい! 僕は変態じゃないからな!」

「ほう、じゃあなんで同級生が兄ちゃんのこと『お兄ちゃん』なんて呼んでるの?」

「なんでって、ルーナに訊いてくれよ……」

「えーと、ルーナさん? なんで兄さんのこと『お兄ちゃん』なんて呼んでるの?」

「なんでって、そりゃお兄ちゃんはお兄ちゃんだからです」

「いやいや、ルーナさんの兄ではなく、私の兄ですよこれは」

 そう言って僕を指さす美佳。

「おい、僕を物扱いするな」

「変態と物と、どっちがいいかしらね?」

「物でお願いしまーす!」

「美佳ちゃん、私を拾ってくれた事にはとても感謝していますが、私のお兄ちゃんには手は出させませんよ? それとこれとは話が違いますので」

「いやいや、私は別に。兄ちゃんに手を出すとかあり得ないし」

 きっぱりと言う美佳。うん、正しい反応だ。

「そうなの? ならいいですけど」

 言いながらルーナはおもむろに僕の右手に抱きついてくる。

「ちょっと! ルーナちゃん、だめだよぉ!」

 すかさず悠も僕の左手に抱きつく。両手に華とはこのことか……。

「なになに、兄ちゃんモテモテじゃん、良かったね」

 美佳がにやりと笑う

「「よくない!」」

 僕と悠の声がはもった。

「ちょっと悠ちゃん、お兄ちゃんの手を離してください、お兄ちゃんは私のです!」

「ななな何言っちゃってるのかなルーナちゃん? 空君はボクの彼氏さんだよ! ルーナちゃんこそ手を離してよ!」

 僕の腹のあたりで火花が散る、熱い熱い。

「あ、あの、激戦を繰り広げてるところ悪いんだけど、ちょっといいかなルーナ?」

「はい? お兄ちゃんならちょっとと言わず、いつまででもいいよ!」

「えーと、一言で言うとだね、君は記憶をなくしている!」

「えー、びっくりー!」

 恐ろしく平坦な、つまり棒読みで言うルーナ、ちなみに顔は笑顔だ。

「これぽっちも信じてないでしょ!?」

「うんうん、お兄ちゃんのことは信じてるよ!」

「じゃあ、何その反応?」

「いや、だってまぁ。いきなり記憶失くしてるって言われてもねぇ、ほら」

 そういいながら苦笑するルーナ

「じゃあ、質問。ルーナの故郷は何がきれい?」

「雪、だね」

「僕と君が初めて出会ったのは?」

「私が寮の部屋で着替えてたら、お兄ちゃんがいきなり襲ってきたのが初めての出会いでした」

「うん、そうだけど、襲ってないからね!」

「あのときは驚きました、そのあと……」

「そのあと!? 兄さんナニしたの!?」

「何もしてないから! そういう言い方やめてくれる!?」

 美佳の疑いの視線が僕に浴びせられる、今日の天気は美佳の視線だ……、わけわかんないな。

「あ、はいはい。ルーナちゃんが通ってる学校の名前は?」

「サンストニフォン国立学院です。もういいです、今更ですが自己紹介始めますね。私はルーナ・ソネモーント、17歳です、誕生日は11月5日でいい子の日です。好きなものはチーズケーキとお兄ちゃん。嫌いなものはそれ以外です。趣味はお兄ちゃんで、特技はお兄ちゃんです。出身はフィンデマークで、今は留学でサンストニフォンに来ていましたが、なんでかティエラにいます、あれ? なんででしょう?」

「しっかり記憶喪失しちゃってんじゃないかよ! ていうか、何その趣味と特技、わけわかんないよ!?」

「なんで私はティエラにいるんだろう?」

「ボクが、ティエラの高校に行くってなった時、ルーナちゃん3年生になったら私もそうするって言ってこうなったんだよ?」

「そんな記憶はありあませんね……」

「よし、記憶喪失が確認されたところで、治しにかかろうか!」

 ずっと黙っていた奏音ちゃんがようやく口を開くが「いえ、間に合ってますので」と、却下されてしまった。

「間に合ってないじゃないですか先輩! 記憶取り戻しましょうよ! ワタシが原因なんです、戻させて下さいよ!」

「いや、いいです。このままで十分楽しいですから」

「ていうか、奏音。ルーナちゃん元に戻す方法わかったの?」

「え……、いやだってほら。本人の意思をですね、ねーさん?」

「ああ、なるほど、たしかに本人の意思は大切だよね」

「このままじゃ埒が明かないので、様子見ってことでいかがでしょう? 自分で言うのもなんですけどね、キリッ」

 ルーナの言うことは確かなので、とりあえず様子見と言うことでみんな納得した、先が思いやられる……。


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