第4話 仲直りはある日突然に
僕は夢の中で酷い目に遭っていた。
身体はスーパーボールよろしく上下左右に跳ね回り、終いには窓ガラスをぶち破り、校庭へとダイブ。外へと投げ出された僕は重力に引っ張られ、木の枝を折りまくり、地面に落下した。これはあくまで夢の中の話しなので、実際何が起きたかは分からない。あれだね、重力にはモテる僕だ、引っ張られるくらいに。
そして「空君! 空君!」と呼ばれ、目を覚ましたところが今ここ、保健室のベッドであることは間違いない。
「なになに? 僕は今重力にモテモテだったんだけど」
僕が冗談を言うと悠は頬を少し膨らませ
「真野君には困ったものだね、奏音がいなかったら空君大怪我だよ?」
「まぁ、いつものことだし慣れたよ」
「おいおい、先輩を助けるこっちの身にもなってくれ。かなり疲れるんだ」
悠の隣に立っていた奏音ちゃんが呆れるように言う
「あれ? 奏音ちゃん何にもしてなかったですよね、助けるってどういう事ですか?」
二人の後ろからひょこっと頭を出し、不思議そうに尋ねる真奈ちゃん、奏音ちゃんが困ったように悠の方を見る、すると悠は同じようにこっちを見た。僕にどうしろと……
「あー、まぁそれは置いといてさ、悠が真奈ちゃんに言いたい事があるんだって、聞いてあげて」
ビクッっとする悠
「置いとかれちゃいましたっ!? まぁいいです。と、ところでなんでしょう、天野原先輩……」
真奈ちゃんの中で悠は怖い人と位置付けられてしまったのか、少し不安そうな顔で尋ねる。悠はもじもじしながら口を開いた
「その……、さっきは怒ってごめんなさいっ! 最近ちょっと、よくない事があって、八つ当たりしちゃった……」
真奈ちゃんは鳩がバズーカ砲を喰らったような顔をして口を開けている
「先輩、それ鳩死んじゃうから、羽一枚残らず消し飛ぶから」
「なんのことだ奏音ちゃん?」
「もし許してくれるなら、名前で呼んで欲しいな……」
「は、はいっ! もちろんです! よそ見をしていたのは私ですし、怒られて当然なのに、ちょっと怖い人だとか思ってて、こちらこそごめんなさいですっ! これからはよろしくお願いします悠先輩!」
「うん!」
二人は固い握手をした。
「ところでルーナは?」
僕は彼女がいないことに気が付き尋ねる
「あれ? さっきまで一緒にいたんだけどなぁ? どこ行ったんだろ」
すると僕の寝ていたベッドの布団が盛り上がり――
「呼びましたか?」
僕と同じベッドで寝ていた……。
「なんでお前が寝てるんだよっ!?」
「眠いからです、憧れるじゃないですか、授業サボって保健室のベッドで寝る、青春の1ページですね。というわけで、ドッキリだいせーこーう!」
「ななななダメだよルーナちゃん! なんで空君と一緒に寝てるんだよ! それはボクの役回りだよ!」
「いいじゃんたまには。私も甘えたい年頃なの」
「バカなことを言うなぁ! それに今は授業中じゃないからサボってることにはならないからな!」
「うわー! 綺麗な人です! 美人さんです!」
真奈ちゃんが指をさしてきゃーきゃー騒ぎ始めた
「この人を指差して騒いでる子は誰ですか、空輝さん」
「1年生の月凪真奈ちゃんだよ」
「はい! 真奈です! よろしくお願いします! 東雲先輩、このおとぎの国のお姫様みたいに可愛くて、美しい方はどなたですか?」
「褒めすぎだからね、確かに綺麗だけど。彼女はルーナ・ソネモーントさん、留学ってことにしといて、あと僕を介して自己紹介するのやめていただきたいんだけど……」
「よろしくお願いします! ルーナ先輩! ところで留学にしといて、とはどういうことでしょう?」
「まぁまぁ真奈ちゃん、細かいことは気にしない、気にしたらそこであなたは死にます、キリッ」
ルーナはにっこりと笑いながら恐ろしいことを言いだした。
「わ、わかりました! これっぽっちも気にしないので、死にたくないです! 私はまだ女子高生歴10時間くらいです、まだ死ぬには早すぎます!」
「安心しなよ、死なないから」
「マジですか!? これほどまで綺麗な方が言うとなんだかホントに死ぬ気がします!」
「安心してください真奈ちゃん、空輝さんが死にます」
「「えっ!?」」
僕と真奈ちゃんの声が重なった。
「ルーナちゃん! 空君は死なないよ! ボクが護るんだから!」
「冗談だよ悠ちゃん、気にしない気にしない」
「あの、とりあえずさ。帰ろうよ……」
僕達は学校を後にする、あれ? 真野はどこに行ったんだろう……?