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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第二章 ツッコミはある日突然に2
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第3話 入学式と始業式それとクラス替え

 忘れていた、すっかり忘れていた。今日は3年生になって初の登校日、これが何を意味するか。そうクラス替えだ。学生にとってこれほど大切なものはないだろう、割り当てられたクラスによって、その1年がどのようなものになるかが決まってしまうと言っても過言ではない。3年生にもなって知り合いのいないクラスに割り当てられてでもみろ? 周りでは今までの2年間でグループが形成されている、僕みたいな人間にはその輪の中に入る度胸もなければ力もない、そんなことは不可能だ。つまり、お願いだから悠と同じクラスにしてください! 僕は神様に願う、神がいないのなら悪魔に、悪魔がいないのなら……天使に? もうどうでもいい誰でもいいから叶えてくれ!

 下駄箱に張り出されている新しいクラスの書かれた紙、この紙が死刑宣告書になるか天国行きのチケットになるかは運次第、いざ!

 おそるおそるのぞくと早速1組の一番最初に天野原悠の文字、悠は1組だ。当の本人は余裕の面持ち、まぁ彼女はどのクラスに入っても人気者になれるだろうな、だが僕は違う、便所飯なんて死んでもいやだ! 目線を下げていくと……『東雲空輝』という文字を見つけた。

 ここまで自分の名前を見て嬉しかったことはない、何と表現すればいい? 歓天喜地、欣喜雀躍、狂喜乱舞、どんな言葉を用いても今の僕の気持は表せない、だから一言でいっちゃおう、ありがとう!

「やったよ悠! 同じクラスだ! やったよぉ! ヒャッハー!」

「あ、ヒャッハーって言ったね、奏音もなかなか空君を分かっているようだ」

「悠ちゃん、東雲君、私も1組だ! 今年1年よろしくね!」

「うん、よろしく!」

「ところで悠、……嬉しくない?」

「ううん、すっごい嬉しいんだけど、例えば必ず成功するゲームをした結果成功したら嬉しい?」

「うん? ……あ、なるほど」

 つまり悠がクラフトを使ってクラスを同じにしたらしい、天使が叶えてくれた!

 名簿をよく見ると、真野や吉野までいた。ふと気付く、名前順で書かれている名簿の最後に『転校生』と書かれていた、どんな子が転校してくるのかな、楽しみだ。

「月凪さんは何組だった?」

「はい、私も1組でした! もちろん1組といっても1年生なので先輩方と同じではありません」

「そりゃそーだ」

 月凪さんは何故かもじもじしながら僕を見上げる。

「あの、東雲先輩? よろしければ私のことは真奈って呼んで下さい!」

「うん、わかった。よろしくね真奈ちゃん」

「はい!」

 階段を上がり3階へ行く、真奈ちゃんは1年生なので2階で別れた。教室に入り席に着く、偶然席は悠の隣だ。

 すると悠が僕の机の前に来て「ごめん」と謝りだした。

「なんで謝るの? 悠のおかげで自転車に轢かれても無傷だし、むしろありがとうだよ?」

「ううん、違うの。クラスを同じにするのはたいして難しくないからそこまで疲れてないと思うの」

「うん、確かに疲れてない、いつやったの?」

「昨日の夜にちょちょっとね」

「じゃあなんで謝るの?」

「さっき空君が轢かれて、ボクもう何が何だか分からなくなっちゃて、ちゃんとクラフトは使えたと思うんだけど、すっごい疲れたでしょ?」

「う、うん。結構疲れた、でもこうなることは僕が選んだわけだし……」

「ボクがそうさせちゃったんだよ、無理しすぎちゃって、記憶失くして……、そのせいで力の対価を空君に払わせちゃって……。自分が悪いのに、そのことを真奈ちゃんに八つ当たりしちゃった……」

 悠の目からは涙がこぼれおちる、周りからは東雲の奴、女の子泣かしてるぞ的な目で見られているかもしれないが、そんなことはどうでもいいや。

「ボク、最低だ……」

 その言葉に僕は憤りを覚えた。

「違うでしょ!」

 机を叩き、いきなり叫び出した僕にクラス中の目が集まるが気にしない、それどころじゃない。

「悠は悪くないじゃないか! 君がそんなに思い詰めていたのに、それに気付けなかった僕が悪い、本当にごめん」

 嗚咽が漏れる、本格的に泣き始めてしまった。

「うっ、空君……ボク……」

 僕は席を立ち、悠を抱き寄せ頭を撫でる

「ごめんね、これからは何でも言ってよ、『悠』って呼んで欲しいっていうのもデバイスが教えてくれたんだ、言ってくれないと分からないこともあるしさ、ね?」

「うん……」

 悠が泣きやむまで数分を要した、その後の僕への視線はお察しの通りだ……。

 ま、まぁ仕方ないだろ、うん。なんとでも言うがいい!

 新しい担任の教師が入ってきた。すらっとした体形で身長は高い、20代後半といったところだろう、外見は若く見える男の先生だ。

「はい、席について。今日からこのクラスの担任になった卜部うらべです、下の名前は生徒手帳で調べてくれ、1年間よろしく!」

 パチパチと拍手が起こる。

「みんなも気になっていたとは思うが、新学期初日から転校生が来た。じゃあ入ってきて」

 教室のドアがスライドし、女の子が入ってきた。

 雪を欺くように白い肌、少しつりあがった眼に瞳はサファイアのように青く透き通っている、艶やかでさらっとした白銀の髪はツーサイドアップにしていて、ただでさえ視線を集める外見に加えて彼女は胸もそれなりにあった。

 教室から漏れる感嘆の声、その中僕は一人、固まっていた。何故だ、何故お前がここにいる。

「じゃあ自己紹介してくれるかな?」

「ハイ、ワターシハ、ルーナ・ソネモーント言イマース。ミナサン、仲ヨクシテクダサーイ、キリッ」

クラスからは「すげぇ美人」だの「外人さんだ」だの聞こえてくる。

「おいルーナ! お前なんで片言なんだよ! 普通に話せるでしょ!?」

「空輝さん、やめてください、私はこの1年外人さんキャラで通すんですから」

「今そのキャラ自分で崩したよね!?」

「ナニ言ッテル、アナタ、ワタシ日本語ワカリマセーン!」

 しれっと言うルーナ、もう駄目だこいつ。

「もう遅いからねっ!」

「みなさん聞いてください、この方、東雲空輝さんは私の着替えを――」

「やめろーーーーーーーーーーーーー!!」

 ホントにそれはまずい、新学期早々クラス全体を、下手すれば学校を敵にまわすことになる。

「なんだ東雲、ソネモーントとは知り合いなのか?」

 先生は名簿で僕の名前を確認しながら聞いてくる。これでクラスのみんなに名前を覚えてもらえたことだろう、悪い意味で

「……いえ初対面です」

「何言ってるんですか、私と空輝さんの仲じゃないですか、男のツンデレは需要ないですよ?」

 なぜか顔を赤らめながら言うルーナ

「なんで照れてんだよっ!」

「空輝ぃーー!!」

 今まで黙っていた真野が爆発した

「サプライっ!」

「供給がどうしたんですか?」

「空、お前あとで体育館裏来いよ、楽しいことしようぜ」

 真野がいろんな意味で恐ろしい事をいい始めた

「まぁ、とりあえずソネモーントは名前順1番最後だから、あそこに座ってくれ」

 先生は窓側の列の1番後ろの席を指差した

「分かりました」

 ルーナは「それではみなさん、全く日本語が分からない私ですが、よろしくお願いします」と、流暢な日本語で言い、クラスの盛大な拍手を受けて席に着いた。

「よし、体育館に移動するから廊下に列べ」

 今日は2、3年生は始業式なので授業はない。校長の長話を耐えれば帰れるのだ。

 移動中、真野とその他から飛んでくる質問を「放課後に答えるから」と受け流し、ルーナの嘘をことごとく否定し、悠の本当の事だけど今言うと色々まずい事を口止めし、へとへとになりながら体育館に着いた。だが闘いはまだ終わらない。その後たくさんの生徒が集まり、かなり暑い体育館で、貧血を起こし倒れてしまう人が出るくらい長い校長の話しを聞き終え、クラスに戻ってきた。

「みんなお疲れ様、明日からは普通に授業あるからな、教科書忘れるなよ。じゃあ解散」

 手短に終えられた卜部先生の話しに「さようならー」とクラス全員が挨拶したところで僕は走り出す。

 ミッションスタートだ!

 運よく僕は廊下側2列目、ここからなら1番早く教室から出られる

「ちょっと空君!?」

 悠の驚いた表情に「後でメールする」と吐き捨て廊下に出る

「ちょっ、空! 待て!」

 後ろからは真野が鬼の形相で追いかけてくる、捕まったときの事を想像すると背筋が凍る。

 全力で走る、向かうは下駄箱、とりあえず学校を出よう

 階段手前の角に差し掛かると、人が歩いて来ていた、まずい、止まれない!

「きゃっ!」

 僕はどうすることも出来ず、衝突してしまった。

 だがおかしい、走っていた僕が突き飛ばされ、相手は尻もち程度。

「いててて、ごめんなさいっ! 大丈夫ですか!?」

「あれ、東雲先輩」

 相手は真奈ちゃんだった。

「今度は私が轢かれちゃいましたね」

 真奈ちゃんは笑いながら言う

「そんなことより大丈夫!?」

「当たり前だろ、ワタシを甘くみるな先輩」

 角から姿を現した少女。黄金色に輝く髪をサラっと流し腰に手をあて、威張っている。普段のサイドポニーでは分からない神々しさを放っていて、少しいつもと違う雰囲気だ。

「か、奏音ちゃん!?」

「あれ、東雲先輩、奏音ちゃんのこと知ってるんですか?」

 不思議そうに首を傾げる真奈ちゃん

「ああ、真奈ちゃん、先輩の家はワタシの家の隣なんだ、お隣りさんだな! よく遊びに行く」

「待て待て待て! なんで君がここにいる? しかもうちの高校の制服なんて着ちゃって」

 奏音ちゃんは、ダサいとはいかないまでもそこまで可愛くはない紺色のブレザー、つまりうちの高校の制服を着ていた。悠のときも思ったけど、素材がいいと、どんな服を着ても似合う。

「ご挨拶だな先輩、ワタシは新入生だぞ? ホントに先輩を先輩と呼ぶ事になるとはな、びっくりだ」

うんうんと頷く奏音ちゃん

「はっ!? サンス――」

 途中で口を塞がれる。奏音ちゃんは僕の耳元で「この高校では内緒なんだ、言わないでくれ」と囁いた。

「入学式は終わったの?」

「うん、帰ろうと思って、ねーさん達を探しに来たんだ」

「なるほどね」

「ところで先輩、後ろに立ってる赤鬼さんはどなたかな?」

 奏音ちゃんに言われ、振り向くと、そこには赤鬼さん、もとい真野が腕を組んで立っていた。

「よ、よぉ真野。偶然だね」

「ああ、空。ホントに偶然だな」

 そこで僕の脳は記憶するのをやめてしまった……。


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