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ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第二章 ツッコミはある日突然に2
22/44

第2話 事故はある日突然に

 最寄駅に着き、改札を出ると春の爽やかな風が頬をなでる

 学校へと続く桜並木、風が吹くたびに花びらが舞い、太陽の光りを受けて輝いている。

 道を歩く生徒の中には真新しい制服に身を包み、どこか緊張したような面持ちをした生徒もいる、おそらく新入生だろう、僕も2年前はそうだった、友達ができるか、かなり不安だったが、同じ中学校の真野もいたおかげでなんとかなった。

「うわぁ~、桜が綺麗だね!」

 悠が顔を輝かせて言う

「なに言ってるの悠?」

 僕の否定の言葉に悠は「え、綺麗じゃない?」と首を傾げる

 僕は一呼吸置きキリッとした表情で言う

「こんな桜より、君の笑顔の方が比べ物にならないほど綺麗だよ、キリッ」

 バカみたいな口説き文句に悠の顔が薔薇のように赤くなる

「あああ朝っぱらから何いっちゃってるのかな空君! あれ? 今ルーナちゃんのマネした?」

 最初はわたわたしていたが、途中で気付かれた、以前ルーナが語尾にキリッとかドヤッって付けていたのを使わせてもらった、というかつい言っちゃった

「えっ東雲君と悠ちゃんってその、付き合ってたりするの……?」

 いきなり後ろからかけられた声に胸を突かれる。バッっと振り向くと、そこには黒髪をツインテールに結んだ可愛いらしい女の子、藤永理沙さんがいた。いてしまった……

「あ、理沙ちゃん、おはよー」

「うん、おはよー。じゃなくてさ、付き合ってるの?」

 まずい、今僕たちが付き合っている事がばれるとそのうち真野にも伝わるだろう、そうなると……考えたくない。

「うん、付き合ってるよ」

 ……言ってしまった。悠は普通に答えてしまった

 僕は考える。コンピューターの処理能力でさえ追い付かないようなスピードでこの場をどう切り抜けるかを考える。

 まずは『うん、付き合ってるよ』に焦点を当てる

「違うんだ藤永さん、今のは、『運尽き合ってるよ』って意味なんだ!」

「東雲君無理矢理すぎ、ていうか、何それ、二人とも運ないの?」

 くっダメか! なら次の手だ!

「考えてみてよ藤永さん、僕みたいなのがこんな可愛いゆっ、天野原さんと付き合えるわけ――」

「空君はすっごいかっこいいよ♪」

 悠は僕の右腕に抱き着きながら言った。

 ……詰んだ、もうダメだ。ここからではどんな言い回しをしたところで隠すのは不可能だ、万事休すとはこのことか……。

 僕が諦め、肩を落とした瞬間、それは起こった。

――背中に衝撃が走り僕の身体が宙を舞った。重力に逆らいながら空を目指すが、志し半ば、地面に引き戻される。無様に地面に落下するが……、着地時の衝撃がほとんどない。

「空君大丈夫!?」

 悠の手首が光っている、クラフトを使ったようだ。目には涙を浮かべ、かなり焦っている様子だ。

「うん、ありがと大丈――うッ」

 100メートルを全力で走った時のような疲労感が僕の体を襲う。これが力の代償というわけか……。

 後ろを向くと自転車と女の子が転がっていた。女の子は起き上がり、僕の方を向くと

「ごめんなさい! 大丈夫ですか!? 桜があまりにもきれいで、上をみてたら……」

 腰のあたりまで伸びた黒いストレートの髪、鈴を張ったような目をしていて整った顔立ちだ、かわいらしいという言葉がぴったりな小さな女の子。制服は新品だろう、つまり新入生だ。

「うん、僕は大丈夫、君は?」

「私は月凪真奈と言います、女子高生歴約7時間です!」

「うん、まぁ。うちの高校の新入生ってことね、僕が言いたかったのは君は大丈夫? ってことなんだけど」

「あっ、すみません、私は大丈夫です! ついでに言うと、自転車も元気です!」

「ねぇ! 自転車乗ってるのによそ見してちゃだめでしょ! ボクがいなかったら大事故だったんだよ!」

 珍しく悠が本気で怒っている、初めて見るかもしれない、悠の怒っている顔。

「ごめんなさい……」

「ま、まぁ僕は大丈夫だしこの子も反省してるみたいだしさ、許してあげようよ」

 悠は腑に落ちないといった様子だが「まぁ、空君がそういうなら」と引き下がってくれた。

「ところでお兄さん、このお姉さんが言った『ボクがいなかったら』とはどういう意味ですか? お姉さん何もしてなかったですよ?」

「僕の名前は東雲空輝、彼女は天野原悠、こっちは藤永理沙さん。みんな3年生だよ」

「ふわっ! なるほど、分かりましたところで天野原先輩が言ったことの意味は?」

「え、えーと……」

 僕が言い淀んでいると

「そんなことどうでもいいでしょ! 言ったって分からないんだから、言わなくても同じじゃない!」

 悠が勢いに任せて言い放った。

「すみません……」

「あのー、そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」

 藤永さんが時計をみながら言う。

「とりあえず、学校行こうか」

 気まずい空気のまま、僕達は学校へと歩いた。


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