表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツッコミはある日突然に  作者: ついしょ
第一章 ツッコミはある日突然に
2/44

第1話 He was attacked by her

『ピピピピピピ!』アラームがけたたましく鳴り響く。

そんなアラームにチョップを入れると静かになった、そもそも僕はそんなに寝起きがいい方ではない、むしろ悪い方だ。だがまぁ僕の寝起きが悪いことをこれ以上話したって面白くはないだろう。あれ? 僕は、誰に話しているのだろう。

 次はケータイが僕を起こしにかかってくる、どんだけ起きてほしいんだよ、とか思ったが時間は自分で設定してるんだよな。従順すぎる機械も考えものだ。

仕方ないから起きてやることにする。

 なんだろう、今日はいつもと少し違う気が……したい。毎日同じような生活はいい加減嫌になってくる、変革がほしいんだよ! 

 窓を開けると雲ひとつない青空が広がっていた。と言っても隣の家と家の距離が近いため、そこまで大空を見られたというわけではない。

 空が晴れていると心も晴れ晴れしてくる、地球儀を解き明かしたくなる。

 さて、冗談はさておきさっさと着替えを済ませ一階に降り、身支度を済ませ朝食のパンをラップに巻き鞄につめて家を出る。

 早起きはしたものの朝食を家で食べていると、乗りたい時間の電車に乗れなくなってしまう。

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

 母がそう返す。

 僕の登校は結構時間がかかる、一時間ぐらい。

 そんな暇な時間にはまぁ音楽聴いたりゲームしたり、『なんで二次元のボクっ娘は可愛いのに三次元のボクっ娘は可愛くないんだろう』なんて事を考えていたり、彼女を連れた高校生なんていた日には『リア充爆発しろ! でもここでされると困るから誰も迷惑のかからないところでお願いします!』とか思っている。

 朝の満員電車は何度乗っても慣れない。

 スペース的に無理があると思われるがこれに乗らないと遅刻してしまうのだろう、駅に着くたびにぎゅうぎゅう押される。

 みんな必死だ、圧死するんじゃないかとさえ思う。

 そうこうするうちに乗換だ。電車に足をかけ、振り向きながら乗る。

するとその時駆け込み乗車をしてきた女の子が僕の腹に明らかわざとだろう、タックルをかましてきやがった、アメフト部にでも入っているのかな?

「ぐはっ!」

 どこの少年漫画のバトルシーンだよ、とか思ったが今はそれどころではない。

「ちょっ! おまえ何すんだよ!」

 文句を言うと女の子は、

「おおっと失礼、申し訳ない、お詫びにボクが貴方の『彼女が欲しい』という願いを叶えてあげる♪」

 ちょっとまて、いくらなんでもいきなり過ぎないか?

「はっ? そもそも僕がいつ彼女が欲しいって思った? そうさいつも思っているよ!

リア充爆発しろ! ってのも所詮嫉妬心から出る言葉さ!」

「おおぅ、ずいぶんと自虐的なのだな貴方は」

 ふと気付く、この子めっちゃ可愛い! 肩にギリギリ届かないくらいのストレートのさらっとした黒い髪をこめかみのあたりでヘアピンで留めている。くりくりとした大きな目に長いまつげ、天使のような白い肌、とても整った顔立ちをしている。身長は僕より少し小さいから百六十センチくらいかな。

二次元にしか興味ありませんよ、的な僕にでも可愛いと思わせるくらい可愛い! このたとえで伝わるだろう(自己解決)

「どうやって叶えてくれるのその願い」

 手すりにぶつけた後頭部をさすりながら、僕は少しも信じるわけもなく尋ねると、彼女は答えた。

「そりゃあもちろんボクが彼女になるんだよ」

 あっけにとられた。一呼吸置き、周りの迷惑も考えず叫んでしまった。

「はっ!?」

 他のお客さんが一斉にこちらを向くがそんなことは気にしない。

 突っ込みどころはたくさんある。例えば、この子ボクっ娘なの? とか。

 だがそんなこと今はどうでもよくなってしまっている。彼女になるだと? 僕はこの子のこと何も知らないんだぞ? おそらくこの子も僕のことを何も知らないのだろう。

 少し考え僕は口を開く、

「なんで君が彼女に?」

「不服か? 自分で言うのもなんだけど、ボク結構可愛いと思うんだけどなぁ」

 自分で言うほど自信があるのか? いや、まぁめっちゃ可愛いんだけど。でも自分で言うのか。

「不服ではない、むしろ嬉しいくらいだ。だがしかしだな、君は僕のことを何も知らないだろう? なんで彼女に?」

 僕はそう尋ねた、すると

「はっはっは、そうか無理もない、やっぱりばれてなかったか、さすがだなボク!」

 何を自己解決しているんだ?

「理由を答えろよ!」

「そうだな、いいだろう答えましょう」

 一息置いて彼女は答えた。

「ごめんなさい! 軽くストーカー行為を行っていました!」

 どうやら僕は知られてしまっているようだ。本日二度目、あたりかまわず叫んだ

「なんだとーう!」

 周りの反応はお察しの通りだが、二度目ということもありちょっと厳しめ。そんな熱いまなざしで僕を見ないでください。

 そもそも僕は、自分で分かるくらいかっこいいというわけではない、ルックスは中の下だと思うのだが……

「なんで僕を?」

「だって」

 なんで照れてんだおい? 可愛いじゃねぇか。

「……かっこいいんだもん」

 ズギャーン! 心臓を打ち抜かれた。

「こちらからお願いします! 付き合って下さい!」

 若いってのはいいわねぇ、と聞こえたがノープロブレム

「え、困るよ……」

 こ、断られた!?

「そんな人目も憚らず……」

 照れながら彼女は言った。なるほど断られたわけじゃないみたいだ、ほっと一安心。

「もちろんおーけーだ! じゃあこれから宜しくね、二年一組 東雲空輝しののめくうき君♪」

 名前が割れていた

『空輝』と書いて『くうき』と読む、まぁ読めないことはないだろう、しかし存在が空気みたいで悲しい、友人は空輝の空をとって『そら』と呼ぶ、まぁあだ名みたいなものだ。

「ど、どこで僕の名前を?」

「え? だって同じ学校だもん、ボクは二年二組の天野原悠あまのはらゆう

 あんまり驚いていたもので気付かなかった、この子うちの学校の制服だった。あれ、でもこんなに可愛い子だったら話題になるはず? 天野原さんは心を読んだかのように言った

「今日転校してきたの、あ、でも違うよ? 東雲君を追いかけて来たとかじゃなくて家庭の事情でね」

 どうやらこれは本当らしい。隣にいる僕の彼女(?)をチラ見する、ほんと可愛いな。ふと思いつく。

「ところで今日転校してきたのになんで僕のクラスと名前を?」

 彼女はちょっと驚いたようだ。まるで予想外の質問が投げかけられた時のような。

「えっ、うん、えっと……そう! 学校に知り合いがいたの! そうそう、知り合いがいたの!」

 どうやら大切なことらしいので二回言ったみたいだ。

「まぁ、そういうことだからこれからは悠って呼んでね東雲君、東雲君ってのもおかしいか、空君でいい?」

「うん、それでいいよ……悠さん」

 さすがに恥ずかしいこれが今まで彼女いない歴=年齢のチキンっぷりだろう。これはもう仕方がない、下の名前を呼び捨てにできるのはせいぜい妹くらいだろう。

 お母さんだって『お母さん』って呼ぶのが恥ずかしいので『母』って呼んでいるくらいだ。

「悠さんかぁ、うーんなんか初々しくていい感じだね」

 弾むように言う悠さん。

「ほら、駅着いたよ!」

 照れ隠しで少し言葉が強くなってしまう、これも仕方ない、彼女いない歴=年齢な僕はチキンなのだ。空も飛べない鶏だ。

 とりあえず電車を降りる、時間は比較的早いがこの時間でも他の生徒はいる、みんなケータイをいじったり音楽を聴いたり人それぞれだ。



 駅からは歩いて十分くらいのところにある学校だ、よく考えたら女の子と一緒に登校なんて小学校以来だ、これは初めてじゃあない、どうだすごいだろ?

 だがしかしやっぱり隣に可愛い子がいるとドキドキする、あまりにも急に彼女(?)が出来たのであまり実感がわかない。すると悠さんはとんでもないことを言い出した

「手ぇ繋いで、手ぇ繋ごっか手ぇ繋ごうよ! いえ、手を繋いでくだしゃい」

 噛んだようだ、意外とシャイなんだな、くだしゃいだけに。あれでもこんなことを言い出すんだからシャイではないのか? そんなことはどうでもいい。

 三度目になるようだが彼女いない歴=年齢の僕は今まで女の子と手をつないだことなんてない、決してない、断じてない、からっきしない、もちろんない、ネバーだ。その僕に手を繋げだと? 可愛い事言ってくれるじゃないか。しかしそんな度胸はあるはずがなく

「え、だってほら他の生徒もいるし、さすがに今はちょっと」

 悠さんは残念そうだ。

「もぉ仕方ないなーじゃあ今度の日曜日デートしよっか、二人だけならいいでしょ?」

「ブフッ!」

 吹いてしまった

「日曜? 日曜か、うーん日曜ねー」

 あれこれ考えていると彼女はポケットから手帳のようなものを引っ張り出し何かを確認しているかと思うと

「空君の日曜日の予定は今のところボクとのデートだけだよ、あとは早起き出来るかどうかってだけだね、少しいやらしい話をするとお金もこの前、祖母様にもらっているよね、だから問題ないかと」

 知られていた、なんでそんなことまで知っているんだこの子、そして勝手にデートが予定に組み込まれていた。

「今ボクがいやらしい話って言って少し期待した? ふふふダメだよぉまだそれは早いかな」

 なんて事言いやがるこの女、っとっとっと失礼、なんてこと言い出すんだ悠さんは

「考えてないよ! ていうかさ! なんで金銭事情まで知ってんのさ!?」

 細かいことは気にしなーい、といった表情でさらっと流された

「どこ行こっか?」

 なるほど、僕も少し慣れてきたぞこの子に、とりあえずアニメで仕入れた情報を思い出す。

「初めてのデートは遊園地って決まってるって誰かが言ってたような。僕はどこでもいいよ、悠さん決めていいよ」

「じゃあまぁ初めてだし、そうだね遊園地でいっか」

こういうわけで初めてのデートは遊園地になった。

ちなみに今日は金曜日。だがただの金曜日ではない、僕に彼女ができたという奇跡が起きた金曜日だ。





 今は学年末テストが終わって授業はほとんどない、もうすぐ春休みというわけだ。授業はほとんどが自習で、なんでこの時期に転校してくるんだろうと思ったが、彼女曰く『家庭の事情』らしい、そこに踏み入るほどまだ僕は親しくない、これからなるのだ(自分で言って照れた)理由はおいおい聞いていくことにする。

 学校に着くと彼女を職員室まで連れて行き、僕は自分のクラスへと行った。席に着くと同時にチャイムが鳴った、相当ギリギリだったようだ。まぁあんな話をしていたら仕方ないか、駅に着いたときに人が多かったのは遅かったからなのだろう、時計見てなかったなぁ。担任がやってきて朝のホームルームを始める。伝達事項を伝えると担任はさっさと出て行った。担任によると今日は午前授業で一時間目以外は自習らしい。

 担任が出ていくのを見計らって後ろの席の友人、真野が話しかけてきた。真野とは中学も一緒でとても親しくしている。

「おい空、昨日のアニメみたか? あれは衝撃的だったな!」

 そうだった。僕は昨日そのせいで夜更かしをしたから起きるのが辛かったんだった。

「ああ、見たよ、まさか主人公に彼女が出来るなんてな、急展開だ」

「俺も可愛い彼女が欲しいなー! どっかに落ちてないかな~」

 何言ってんだこいつ落ちてるって捨て猫かよ。

「でもまぁいきなり彼女ができるなんてアニメやラノベの中だけだけどな!」

「そうだなー」

 一応同意してみたが、そういえば僕には今朝彼女が出来たのだ! 天使みたいに可愛いのだ! 夢みたいだな! そうこうしている間に先生が来た、一時間目は世界史だ。

 授業は何一つ頭に入らない、僕は天井を見つめ悠さんのことばかり考えていた。

 二、三時間目の自習は友人と話して終わった、自習なんてそんなもんだろう。帰りの準備をしていると真野に声を掛けられた

「お前日曜日暇だろ? カラオケとかボーリングとかいかね?」

 ふふふ残念だが僕は暇じゃないのだ人生初のデートが、だがこれは言わない、言ったらおそらく歩けない体にされる。俗に言うフルボッコってやつだ。

「悪りぃ、日曜日は用があって」

「なんだー? 彼女でもできたのか?」

 なんだと、ばれてる!? むせてしまった。

「ぼふっ!」

「まぁお前に彼女が出来たら俺のは嫁ができるわな」

 少し驚いたがどうやら冗談らしい、冗談じゃなかったらビックリだ

「なんだお前、俺に彼女が出来ないだと? なめんなよ、俺にだってめっちゃ可愛い彼女がそのうち!」

 真野は笑って「へっ、じゃあまた誘うわ」どうやら諦めてくれたようだ。

 担任が来ると真野はそそくさと席に着いた。

 帰りのホームルームが終わる。すると真野が、

「じゃあまた明日」

「おうまた」

 真野は帰宅部のエースなのだ、誇りを持っているらしい。

 かく言う僕も帰宅部なので結構早く帰る。

 教室を出ると隣のクラスが何やら騒がしい。なんだなんだ? 聞こえてきたのは、どこから来たの? や好きな男性のタイプは? とか、彼氏いるの? とかだ、そういえば隣は二組だったな、おそらく悠さんが質問攻めにされているのだろう。こういうとき彼氏である僕はどうすればいいんだろう(何恥ずかしいこと言ってんだ僕は)クラスに馴染むのも大切だろう、僕がどうこうする事じゃないなと思い、お腹が空いたので食堂へ向かう

「腹減ったなー、今日は何にしようかな」

 なんて独り言を言っていると

「よう東雲ぇ」

 その声に振り向くと、友人の吉野が弁当を三つ抱えていた。

「なんだ、吉野お前そんなに食べるのか? 元気だなぁ」

 吉野はにやりと笑い

「はっはっはこんな弁当三つよりも女の子の方が食べたい! くそう、おいしそうな女の子はたくさんいるのに、俺に食べることを許可してくれる女の子は何故いない!? なんでだ空!」

――――下ネタである。

「下ネタかよ、そんなこと聞かれたって僕にはどうしようもないだろうに……」

 僕は苦笑する。

 ちなみにこいつ、いくら食べても太らない体質らしい、まぁ僕もだけど太らない代わりに上にも伸びないんだよなぁ僕の場合。

「ああ、昼飯に悩んでいるなら今日はラーメンがお勧めだぞ、どうやらわかめが変わったらしい」

 わかめ一つで変わるのか?

「なるほどじゃあ今日はラーメンにするよ、ありがと」

 確かめてみる事にする。吉野は何やら急いでいるようで「じゃあまたな」と走って行った

「ああ、じゃあな」

 吉野と別れるとラーメンを頼んだ。『ラーメン四百円』なるほどまぁ量にしてはちょうどいい値段か、出てきたラーメンをテーブルに運ぶ。いいにおいだな。

「さてと、頂きます」

 食べようとすると何者かの手が僕の視界を遮ると同時に甘い、いいにおいがラーメンのにおいを吹き飛ばしていった。なんだこの柔らかい手、すげぇ綺麗とか思っていると「だーれだ?」とかわいい声がする。なるほどそういうわけか、まったく可愛いなぁ。

「天野原さんでしょ?」

 視界が広がる。

「せーかーいっ♪ でも『天野原さん』ってのはやだなぁ」

 ああ、つい名字で言っちゃったか。

「学校なんだし名字の方が……」

 そうは言ったが既に周りの視線が痛い、視線だけで死ねる。

「ラーメン食べてるんだ、じゃあボクもラーメン食べようかな!」

 そういうと彼女はとてててて、とカウンターへ走って行った。帰りを待っているとふと思った、何この展開? 一日前の自分が見ていたらリア充爆発しろとか言い出すだろうな、ああ、周りの目が痛い、困った。彼女が出来たのはめっちゃうれしいのに、なんだろうこの気持ち、どこかうしろめたいと思う。悲しいなぁ。

 悠さんが戻ってきて、席に着くと彼女が口を開いた。

「いやぁ、転校生は大変でねっ質問攻めにあっちゃって」

 なんだろうな、女の子がラーメンとか食べる時に髪をあげるけどなんというかこう、すごい魅力的だよね……。

「ねぇ、聞いてる?」

 おっと見惚れていたようだ。

「うん聞いてた、そういえば隣のクラスだったね、騒がしかった、さっき通ったよ」

「空君は受けなのかな、攻めなのかなって話をしてたんだよ?」

「そんな話はしていないっ!」

「あはは、何でもない何でもない」

 語尾に音符でも付くかのような言い方だ。

 ラーメンを食べ終わる。

「さて、このあと何か用ある? どっか行きたい所あれば案内するけど」

「うん、じゃあまずは学校を案内してもらおうかな」

「了解」

 僕たちは食堂を後にした。

 まずは一階から案内するかな。

「ここが保健室」

「ほー、ここであんなことやこんなことをするんだね、ほー」

 何やら間違った分かり方をしたようだ。

「いや、しないから、したいから、でも出来ないから」

 彼女はにやっと笑った

「へぇ、できないんだ? でも保健室だよ? 傷口消毒したり、頭痛い時に寝たりできないんだ」

 なん、だと……?

「ごめんなさい、できます……」

「あはは、勝ったぁ」

 彼女は楽しげだ。

 さて、次は

「理科室ね」

「ふむふむ、ここであんな実験やこんな実験を……」

「どんな実験を!?」

「いやぁ、水素と酸素合わせたり、酸化銅を還元させたり」

「そんな実験は理系でもしないんじゃないかな?」

「そうなんだへぇ、でここは?」

 案内なんてどうでもいいんじゃないかなって思えてくる。そんなこんなで三階にきた。

「ああ、ここからプールに行けるんだ」

 さて、どんなのが来るんだ?

「プール、ね、ああプールか、分かった次いこ次」

 おや? テンション下がった? その後、一通り学校の案内をした。

「さて、帰ろうか」

「そうだね、帰ろっか♪」

 僕たちは靴を履き替え学校を後にする。



 まだ昼の十二時ちょい、太陽は高い。昼食を済ませているし、帰ってから特にすることはない。

下校中、僕はふと思い出した

「悠さん、メアドとか電話番号とか交換しようよ」

「おっとそうだね、忘れていたぞ、えと、はい赤外線」

 ケータイを向かい合わせる。登録完了

「ボクはいつも思うのさ、赤外線って便利だなー、色々透けるしって」

 また突拍子もないことを言い出したぞ。

「おいおいおい、女の子がそういうこと言っていいの? いや、僕としては全然気にしないというかまぁ好きだけど」

「ん? 透けるってもちろんこれだけ簡単だと個人情報も透け透けで便利だなーって」

 ちょっと無理がないかそれ? とは思うものの

「嘘だ! そんなのウソだぁ!」

 僕は泣き喚いた

「はっはっはー何を考えていたのかな? まだまだだなぁ東雲君」

 どこの探偵だこの野郎そのうちワトソン君とか呼ばれそう。

 そんなやり取りをしているうちに駅に着く。

 電車に乗ると席が空いていた、そこに腰を下ろと欠伸をしながら悠さんが言った

「ふわぁ、ちょっと眠いなぁ」

「降りるのどうせ終点だし寝てれば? 起こしてあげるよ」

 終点と言ってもまだそこから乗り換えが残っているんだけどね。

「うん、じゃあよろしくぅ……」

 寝たようだ、はや! ネコ型ロボットに面倒をみられている小学五年生並みだ。

 そういう僕も実は結構眠い、もちろん昨日の夜更かしのせいだ。

 起こすと言って自分が寝るわけにもいかないので起きている。

 ふと隣を見るとすぅすぅと可愛い寝息を立てている悠さん、寝ている顔も可愛い。

 いまだに実感がわかない、僕なんかにも彼女ができるんだなぁと、しかもこんなに可愛い彼女が。

夢オチでしたなんてことはないだろうな、ここまでやってきて夢オチなんてことはないだろうな! フラグを立てているわけじゃないぞ!





 夢オチであるわけもなくふと眼を覚ますと、もうすぐ終点の駅だ。

どうやら僕も寝てしまっていたらしい。悠さんを起こす。

「着いたよー、起きて」

「んんん、ふぁあ……着いたの? 早いなぁもう七時間は寝ていたい気分……」

「どんだけ寝る気だよ、がっつり寝てんじゃん」

 眠たそうに目をこする悠さん、七時間とか家で寝ろよ。

 電車を乗り換える、電車に乗ると悠さんが言った

「この後何か用ある?」

 暇人の僕に予定なんてあるわけがない、そもそもこんなに可愛い子にどこかに誘われたら予定があっても行きますね。

「もちろんないけど?」

「じゃあさ、どっか行かない? 家帰ってからでいいんだけど」

「うん、いいけどどこに行くのさ」

 えーと、といった表情で考えているようだ

「んー、ボクの家の近くにゲームセンターがあるんだ、そこに行かない?」

「いいけど家どこ?」

 そういえば知らなかった、ほとんど同じ帰り道っぽいし、そんなに遠くないとは思うけど。

「秘密さー、そのうちわかるから」

「うむぅ、わかったよ」

「あれ? ところで、駅どこまで同じなの?」

「ぜんぶ」

 おっと意外なことに全部と来ましたか

「へぇ、意外と家近かったりしてね」

「うん? やっぱり知らないんだ」

 にやっと笑う、意味ありげだ。そうか悠さんは既に僕の家を知っているわけだ。

 電車に揺られ自宅の最寄り駅に着いた。

「じゃあ僕ここだけど、同じなんだよね……」

「へっへへ、そうだよー、どこまでも君と行くよ!」

 なんかかっこいいな悠さん。

「じゃあ行こうか」

「うん」

 駅から家までは大体十分くらいだ、走れば五分、僕は結構足が速かったりする。

「家、近いの?」

 僕はいい加減、気になったので尋ねると

「大丈夫、大丈夫」

 何が大丈夫なんでしょうねぇ天野原さん?

 とりあえず家に着いたので

「知ってるんだよね? 僕の家ここだから」

「うん知ってる、じゃあまたあとでね」と隣の家に入っていこうとする悠さん。

「お隣さん!?」

「えへへー、先週引っ越してきた天野原と申します。よろしくお願いしまぁす♪」

 なるほど、この前誰か引っ越してきたなぁとは思ったがまさか悠さんだったとは。

「家の近くのゲーセンってあそこだよね?」

 そう言いながら僕は少し遠くの大きなボーリングピンが乗っかっているようなビルを指差した。

「うんそうだよ、じゃあ二時にここでいい?」

「了解わかった、じゃあまたあとで」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ