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WagaKuni

作者: 藤堂壽太
掲載日:2026/06/08

ちょっとしたショートショートです。

「ふふふふふ、やっぱり僕は特別な存在だったんだ。まさかこんな能力が発現するなんて。」


誰にでも経験があると思うけど、1時間だけゲームをしていたつもりが実際は6時間経過していたというような、集中していたら時間があっという間に過ぎるという体験。


僕の能力は、この体験の逆だ。

僕自身は間違いなく6時間ゲームをしていたのに、実際に経過しているのは1時間だけという能力。


最初は違和感を覚えただけだった。

ゲームを終えてログアウトした時に、「あれ?数時間ゲームをしてたはずなのに、飲み物の氷が溶けきってないないぞ?」ぐらいに。


しかし、何度も同じような体験をして、確信することが出来た。

僕の主観でも間違いなく数時間は経過していて、当然にゲーム内でのプレイ時間は6時間増えているのに、現実の時間では1時間しか経過していないんだ。


ただ、僕が集中している時しか発動出来ないのか、今のところ、ゲームをしている時以外に発動できていないから、発動条件についてはまだ未解明な部分が多いんだけど、それでも十二分にすごい能力だと思う。

だって、僕は誰よりも早くこのゲームを進めることが出来るということじゃないか。


3か月前にβ版がリリースされたばっかりの、全身フルダイブ型MMORPG「WagaKuni」

たまたま抽選で、テストプレイヤーの権利と、最新のフルダイブ機器までセットで当たったんだけど、このゲームはすごい。


何しろβ版なのに、すでに数万人が参加しているし、最終的には500万人程度の参加を見込んでるということで、ゲームの作りこみは目を見張るものがある。

しかも、このゲーム、脳に直接作用する仕組みとのことで、見える物・触れる物だけじゃなく、なんと味や匂いまでも、まるで本物であるかのようにリアルに感じることが出来るんだ。


僕はこのゲームの中で、誰よりも早く物語を進めることが出来る唯一のプレイヤーだ。

やっぱり僕はただの人間じゃなく、選ばれた特別な人間だったんだ。

僕は、この能力を使って、ランキング1位を取ってみせる。


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「これで、本当に良かったんでしょうか」

「ご主人、奥様、大きなご決断をされました。これはあなた方に許された権利の行使ですから、何も気に病む必要はありませんよ」


老夫婦と、ある男の会話は続く。


「だって、あの子が不憫で」

「不憫なんかじゃありませんよ。息子さん、40歳過ぎて、仕事もせず、お二人の年金に頼りきりの状態ですからね。何より、お二人だって、お二人が居なくなってしまった後のことが心配でしょう」


「だからって、人より6倍も早く年を取るだなんて」

「幸せかどうかは人それぞれですし、人生の充実に長短は関係ありません。案外、ゲームの中で充実した時間を過ごして逝ける方が幸せかもしれませんよ」


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男が帰りながら独白。


「ふぅ、やれやれ、一度決断しても、やっぱり止めたいという夫婦も少なからず出てくるだろうなぁ。

やはり、身内からの依頼制じゃなく、40歳かつ10年以上の引きこもりは強制的に適用されるという法案を一刻も早く通すべきだな。

大体、わが国は引きこもりが多すぎて、間もなく500万人にも達しようとしてるリスクを分かってない人間が多すぎる。

両親世代が居なくなった場合、こいつらの面倒は誰が見るのか分かってるんだろうか。

働けるのに働かない、税金も納めてない500万人の人間を支えられるほど、わが国の財政には余裕がないんだよ」

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