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46話 なくなった大切なもの

ある朝のことだった。

メアリーは、胸元にいつも下げている母の形見のペンダントがないことに気づいた。

慌てて屋根裏の部屋や洗濯場、廊下まで探したが、どこにも見つからない。


(そんなはず……。昨夜までは、ちゃんと首にかけていたのに)


青ざめた顔で探し回るメアリーの様子を見て、同僚のメイドたちがひそひそとささやきはじめる。


「また何かなくしたの?」「どうせ、自分でどこかに落としたんじゃないの?」

「形見のペンダントですって。そんな大事なものがほんとにあったのかしら」


笑い交じりの声が耳に刺さる。

メアリーは唇をかみしめ、反論できなかった。

必死に信じてほしいと言いたかったが、誰も取り合ってくれない。


「人のせいにする前に、自分の部屋をよく探したら?」

メイド頭のモード夫人の冷たい声が響く。

「そんな言い訳をする子は、この屋敷では信用されませんよ」


その言葉に、メアリーの胸はぐしゃりとつぶれたように痛んだ。

涙をこらえて、頭を下げるしかなかった。


***


その日の夕方。

中庭の隅で、メアリーはひとり、膝を抱えていた。

目を赤くして、泥のついたスカートを見つめている。


「……お母様、ごめんなさい」

小さくつぶやくと、喉がつまって声にならなかった。


そのとき。

「メアリー!」と元気な声がして、アルバートが走ってきた。

手には、何かを握っている。


「これ、きみのじゃない?」


差し出されたのは――あの銀色のペンダントだった。

焼け焦げの跡が少し残るが、まぎれもなく母の形見。


「えっ……! どこで見つけたの?」


「裏庭の噴水のところ。鳥の巣の中に落ちてたんだ。きっと風で飛ばされたんだよ」

アルバートはにかっと笑い、メアリーの手にペンダントをそっとのせた。


「みんなは嘘つきって言ってたけど、ぼくは違うと思ってた。きみはそんな人じゃない」


メアリーの目に涙がにじんだ。

小さな手でペンダントを握りしめながら、震える声で言う。


「ありがとうございます、アルバート様……」


「アルバートでいいよ。ぼく、きみのこと――好きだから」


突然の言葉に、メアリーは息をのむ。

けれど、その真っ直ぐな瞳を見て、胸があたたかくなるのを感じた。


この瞬間、ふたりの間に芽生えた小さな絆は、

やがて誰にも引き裂けないものへと育っていくのだった。


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