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42話 過去編・ヘンリーの屋敷にて

焼け落ちた自邸を後にしてからの日々、メアリーはヘンリーの屋敷に身を寄せていた。

立派な館は格式高く、彼の両親は事業運営で不在がちのため、召使いたちは彼を若き当主として敬っていた。


最初こそ戸惑ったものの、メアリーは次第に落ち着きを取り戻していった。

ヘンリーは優しく、よく庭を散歩に誘ってくれたり、メアリーの好きな本を貸してくれたりした。

一緒に笑い合う時間は、両親を失った心の痛みを少しだけ和らげてくれた。


――だが。


時折、ヘンリーはふっと冷たい目を見せることがあった。

まるで、彼女をさぐるように、少し距離を置くように。

その眼差しに触れるたび、メアリーは胸の奥がざわついた。


ある晩の夕食。

長いテーブルに二人きりで並び、召使いたちが静かに料理を運んでくる。

いつもと変わらぬ穏やかな空気――のはずだった。


だが、ふと葡萄酒を口に運んだヘンリーが、何気ない調子で切り出した。


「メアリー……君の母上は、いつも首元にひとつのペンダントを下げていたはずだね?」


「……え?」


メアリーはフォークを持つ手を止めた。

急にそんなことを聞かれて、心臓がドクンと大きく鳴る。


「銀細工で、中央に青い宝石がはめ込まれていた――違うか?」


彼の声は柔らかかったが、その瞳はいつになく鋭い。

背筋に冷たいものが走り、メアリーは答えをためらった。


母の形見――確かに、あの夜も首にかけていたはずだ。

だが火事の混乱の中で、失われてしまったのだ。


「……そんなもの、もう……ないわ」

小さな声で答えると、ヘンリーはしばらく黙り、グラスを揺らした。


「そうか。……もし見つけたら、必ず私に教えてほしい」


その言葉には、言いようのない重みがあった。

まるでペンダントが、ただの装飾品ではなく――何か秘密を握っているかのように。


メアリーは黙ったまま、冷めていく料理を見つめていた。

胸の奥で、また一つ、不安の影が広がっていく。


母のペンダント……なぜ、それが気になるの?




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