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33話 すれ違い
アルバートは、何度もタイミングを見計らっていた。
彼の胸の中には、長い間言えずにいた言葉が渦巻いている。
――メアリー、君を愛している。
だが、いざ彼女の前に立つと、その言葉は唇の端で凍りつき、結局ただの他愛もない会話にすり替わってしまう。
一方、メアリーもまた、アルバートの視線に気づいていた。
彼が自分に伝えようとしている想いを、肌で感じ取っていた。
けれど、彼女はあえてその瞬間を避け続けていた。
廊下ですれ違えば足早に頭を下げ、談話室に姿を見せれば理由をつけてすぐに立ち去る。
「申し訳ありません、今は……」
笑顔すら取り繕い、逃げるように扉を閉める自分に、メアリー自身も胸を痛めていた。
――アルバート様の気持ちを受け止めれば、もう後戻りはできない。
――でも、エドワード様を看病した日々を、なかったことにしていいの……?
彼女の心は、罪悪感と後悔と、そして微かな希望に引き裂かれていた。
アルバートは、そんなメアリーの態度に苦しんでいた。
避けられているのは分かっている。
それでも諦めきれず、何度も言葉を探す。
「メアリー、私は――」
しかしその言葉が最後まで続く前に、彼女は振り返らず去ってしまう。
二人の距離は、近づこうとすればするほど遠ざかっていった。
すれ違う音だけが、静かな屋敷に響いていた。




