28話 看病
翌朝。
メアリーは徹夜でエドワードの看病をしていた。
濡れタオルを替え、薬を塗り直し、水を口元へ運ぶ。
「……君は休まなくていいのか?」
かすれた声でエドワードが問いかける。
「大丈夫です。私がしっかりしなければ」
そう答えながらも、彼女の頬は青白く、瞳には疲労の影が濃かった。
その時、扉が開く。
「メアリー様にお客様がおみえです」
エドワードの家の執事が顔をみせる。
「わたくしにですか?」
「はい」
メアリーは困ったようにエドワードを見た。
「行ってきてください。私は大丈夫ですから」
エドワードは、痛ましい状態の顔でメアリーを促してくれた。
客間で待っていたのはアルバートだった。
「君は……一晩中看病しているのか?」
「はい。放っておけませんから」
「それは俺が頼んだことではない」
声が鋭くなる。
メアリーは眉を寄せた。
「でも、お坊っちゃま、彼は私のために――」
「その言葉をもう聞きたくない!」
アルバートは思わず声を荒げ、壁に手を突く。
彼の瞳は揺れていた。
「……俺は、君が傷つくのが嫌なんだ。
あいつといると、君が遠くへ行ってしまう気がして……」
「お坊っちゃま……」
メアリーの胸が大きく波打つ。
アルバートの言葉は、いつもの命令や叱責ではなかった。
それは、心の奥底からあふれ出た本音だった。
だが彼女は目を伏せる。
「……お気持ちは、ありがたく思います。ですが今は……」
言葉を濁し、足を戻す。
エドワードが待つ部屋へ。
「くそっ!」
部屋にひとり残されたアルバートは、拳を強く握りしめた。
(どうして、メアリーに上手く伝えられないんだ!)
彼の心に渦巻くのは、どうしようもない焦燥と、彼女を奪われる恐怖だった。




