表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/33

22話 エドワードとデート

休日の朝。

まだ霧の残るロンドンの石畳を、エドワードは軽やかな足取りで歩いていた。

隣を歩くメアリーは、いつもの地味なメイド服姿のまま。だが、その手を取る彼の仕草は紳士そのものだった。


「今日は僕に任せてくれ」

そう言って案内されたのは、最新の流行を誇るブティック。

鏡張りの店内に足を踏み入れた瞬間、メアリーはたじろいだ。


「ちょ、ちょっと待ってください! こんな高級店、私は——」

「遠慮はいらない。今日は僕の勝負の日なんだ。君を一番輝かせたい」


気付けば次々とドレスが差し出され、靴や帽子までも。

試着室のカーテンを開けるたび、エドワードはまるで宝石を見つけたかのように目を細める。


「素晴らしい……メアリー、君は本当に似合っている」

「や、やめてください! わたしはただの——」

「いいや。君はただのメイドじゃない。僕が知っている中で一番魅力的な女性だ」


胸が熱くなるのを、メアリーは必死に押し殺した。

(ダメよ……こんな言葉、真に受けてはいけないわ)


午後近くになると、エドワードはさらに彼女を人気の洋菓子店へ連れて行った。

可愛らしい陶器の皿に並ぶ苺のタルト、繊細なマカロン、クリームたっぷりのエクレア。

店内は若い令嬢たちで賑わい、ひそひそと視線がメアリーに集まった。


「見てごらん、あのご婦人……誰かしら?」

「ずいぶんと素敵な服を着て……」


令嬢たちの憧れ混じりの囁きが耳に届くたび、メアリーは頬を赤らめた。

だが、向かいに座るエドワードは満足そうに微笑む。


「どう? 今日は少しは楽しんでくれた?」

「……ええ、美味しいですし……でも、これ以上は贅沢すぎます」

「贅沢じゃない。これは、君にふさわしい日常だ」


エドワードの真剣な言葉に、メアリーの心は大きく揺れた。

外の鐘が正午を告げる。

メアリーはカップを置き、深呼吸をした。


(次は……アルバート様。わたしはどうすればいいの?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ