21話 エドワードの提案
庭に緊張が満ちていた。
アルバートとエドワードの視線は、火花を散らすようにぶつかり合う。
「エドワード……」
アルバートの声は冷え切っていた。
「いい加減にしろ。メアリーは私の屋敷のメイド頭だ。お前が踏み込む場所ではない」
だが、エドワードは退かなかった。
「だからこそ、確かめたいんだ。……彼女がどちらに心を向けているのかを」
「何を言っている」
アルバートの眉が険しくなる。
エドワードは一歩踏み出し、真剣な眼差しで告げた。
「次の休日、半日ずつ。君と私、それぞれがメアリーと過ごす。そして、どちらが彼女をより喜ばせられたか……それで決着をつけよう」
「なっ……!」
メアリーは思わず声を上げそうになった。
(ちょっと待って! 私は賞品じゃないんですけど!?)
しかしアルバートは、苛立ちを隠さぬまま口を開いた。
「……くだらん。だが、お前がそこまで言うなら受けて立とう」
「いい返事だ」
エドワードが薄く笑みを浮かべる。
「公平を期すために、午前と午後で交代だ。君が先でも、私が先でもかまわない」
「……望むところだ」
アルバートの声は低く唸るようだった。
壁際で固まっていたメアリーは、頭を抱えるしかなかった。
(どうしてこうなるの……!? お坊っちゃま、エドワード様、お願いだから私を巻き込まないで!)
こうして、奇妙な「休日対決」が正式に決まってしまったのだった。