背後には気を付けよう7
「その指輪で変身したの?」
「そうだよ~。この指輪はマジカルストーンリングっていってね、このマジカルストーンに認められると指輪に変わって魔法少女になれるんだ。」
妹、レコの前に石を差し出す。
「えー?普通の石にしか見えないよ。」
普通の石だからね。
「魔法少女は悪い奴らから皆を守ったり、困ってる人を助けるのがお仕事なんだ。」
「レコも魔法少女になりたい!」
「それにはまずマジカルストーンに認められないとね。」
レコに石を渡す。
「さあストーンを両手で優しく包んで。」
「こう?」
言われた通りにレコの小さな手の中に石が収まる。
「上手に出来てるね。次は目を閉じてみて」
指示通りにぎゅっと目を閉じて待っているレコの手を両手で優しく包む。これで細工し放題だ。
「最後にみんなを助けたい気持ちを、魔法少女になりたいって強くマジカルストーンに祈ってみて」
「わかった!」
さ~て必至に願う妹の純粋な気持ちに応えるべく、よ~しおじさん頑張っちゃうぞぉ!
バレないようにギュンギュン石に魔力を送り込み形を変えていきつつ、手の中にはダミーとして元の石の形の感触を残す。
指輪へと変形が終わり、次は指輪に様々な魔法を組み込む。
身体の成長に合わせて指輪を変形させる機能、早着替え、身体能力強化などなど魔法少女ならではの必須の能力をガンガン追加していき、仕上げにレコの魔力を記憶させ本人しか起動できないようにすれば一先ずは完成。足りない機能があったら後でコッソリ追加すればいい。
最後にダミーの感触を消し、指輪から暖かな光を出す。
「レコちゃん目を開けて!」
わざとらしく驚き、レコは恐る恐る目を開ける。
「指輪、指輪だ!」
レコは目を輝かせ自分専用の指輪を見つめている。
うーむ、さっきから加速度的に良心が痛んでくるぞ。
「お姉ちゃんと同じところにはめてみて」
真似できるように分かりやすく左手人差し指にはめた指輪を見せる。
レコは言われた通りに指輪をはめると少しだけ大きかった指輪がピッタリのサイズに変わる。
その様子にレコは口が開きっぱなしで感動している。
「変身・・・。変身してもいいのかな?」
どうやら皆の為の力を私欲の為に使うことに気まずさを感じているようで恐る恐る聞いてくる。
私欲の為に作った俺の罪悪感はとどまることを知らない。
「だ、大丈夫だよ。」
罪悪感に押しつぶされそうになりながら辛うじて返事をすると、レコはとても嬉しそうに喜ぶ。
「どうやって変身するの?」
「変身したい!って強く思えば変身できるよ。」
念じれば身体が勝手に動くように指輪に細工済みである。
「よ、よーし!」
レコは勢いよく左手を前に突き出すと指輪が光り始める。
「マジカルストーンリング!」
言葉と共に指輪から放たれた閃光は次第に身体を包み、衣服が弾け、代わりに真っ白いワンピースに早着替えする。
説明しよう『マジカルストーンリング』とは、皆を守りたいと強く願う女の子が魔法少女に変身するためのアイテムなのである!
「変わる私」
レコの身体が少し大きくなり100cmくらいだった身長はユリィと同じ120cmくらいになっている。
更に決めポーズを取りながらロングブーツ、イヤリング、ロンググローブと順に装備されていく。
「変える未来」
肩くらいまでの長さだった髪が脹脛まで大きく伸び、ティアラを装備すると同時に髪型がツインテールへと変わる
「交わる世界」
最後に白を基調とした、動きやすさ重視の短めなスカートのドレスに着替える。
「夢を守る魔法の光、クロッシングドリーム!」
・・・決まった!決め台詞もポーズも完璧に決まっている!!!
追撃のエフェクトで更に可愛らしさ、神々しさ、神秘度が飛躍的に向上している。
「やったねクロッシングドリーム!変身出来てるよ!」
変身前の名前で呼ぶのはマナー違反ですから私も彼女の呼ばせてもらいましょう。
ドリームに駆け寄り、魔法で目の前に大きな三面鏡を呼び出す。
鏡に映った自分を見つめて飛び跳ねるようにドリームは大喜びしている。
「すごい!かわいい!すごい!」
語彙力を失うほど大興奮のドリームは鏡の前でクルクル回って細部まで確認している。
うーむ、かわいい。まるでかわいいの擬人化、これは製作者としても会心の出来ですよ。
「これならお姉ちゃんを守れる!」
そして妹のこの喜びようを見ていると口角が吊り上がり気持ち笑みが止まらなくなる。罪悪感はちょろっと感じるが
「んあ?何か言った?」
「な、何も言ってないよ」
「あぁ?そう・・・。」
まあいいか、それよりも
「これからはお母さんには内緒で2人で一緒に頑張ろうね!」
「うん!」
「お母さんには内緒だよ!」
どうにか魔法少女路線で妹を懐柔し、後日から妹を巻き込んだ魔法の特訓が始まるのだった。
そういえばゴブリンは数百人の魔法少女と化した我が分身によって裏で殲滅されていた。
そんなのいたね。